設問4
「料理対決!」



設問4
『料理対決! 審査員を唸らせろ!』



「こりゃまた端的な課題だな・・・・」

 あまりにも短く、そして分かりやすい問題に一哉は苦笑いした。

「これ、一哉行けばいいんじゃね? 唸らせればいいんだろ?」
「ちょっと、あたしたちまで死なない?」

 一哉は何故か料理をすると爆発する。
 最近は<火>が何らかの行動をしているのではないかと考えていた。だが、そのメカニズムを解明しようにも、瀞が泣きそうな顔で必死にキッチンを死守するために未だ仮説のままだ。

「爆発の衝撃やその驚きで唸らせるってのは・・・・どうなんだろう?」

 瀞が首を傾げる。
 因みに緋はよく分かっていないのか、瀞と手を繋ぎながらにこにこしている。

「瀞、今まで真面目にこれらの問題を解いてきた?」
「・・・・あ、あはは・・・・・・・・」

 今までを思い返したのか、瀞は苦笑いした。しかし、すぐに自分の考えを改めたのか、表情を引き締める。

「私が行っていい? もし、料理で唸らせろっていうのだったら危ないし・・・・」
「そうね。あたしよりも瀞の方が安心だわ。熾条は問題外として、晴也は料理なんてしたことないだろうし」
「ないな。前に腹が減って厨房に忍び込んだら、料理人の警戒網に引っかかってしょっ引かれた。別に下ごしらえをつまみ食いするつもりはなかったんだけどなぁ」
「・・・・さりげにお坊ちゃまだよね、結城くん」
「お前もお嬢様なこと忘れてないか?」


―――と、いうわけで、瀞が厨房へと行き、一哉たちは審査員の隣に腰を下ろして料理の様子を見守ることとなった。


「なあ、あの審査員・・・・さっきの監視要員じゃないのか?」

 ドラム缶のような体に手足があり、顔の位置には液晶がある。そして、液晶には表情を示す眉と目、口が映し出されていた。

「一昔前の『ロボットと言われたら』というイラスト要求で出てきそうなデザインね」
「いや、そこもそうだが・・・・食べられるのか、あいつ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 見た目ドラム缶。
 繊細な味覚があるように思えないというか、そもそも口がない。

「まさか・・・・うまみの成分でも化学分析から数値化して出す気か?」
「そんな果物の糖度じゃあるまいし・・・・」
「あ・・・・」
「あん?」
「・・・・げっ」

 瀞がキッチン道具の確認を終えた時、審査員の頭からスピーカーが飛び出した。

『これより料理課題を出す』
「え!?」

 てっきりその場にある食材から適当に料理を作るものだと思っていた瀞は驚きの声を上げる。そして、その驚きは一哉に緊張を強いた。

『課題は・・・・』

 スピーカーからドラムの音色が放たれる。

『ぼるしち』

 何故かカタカナの発音がひらがなになった。

「というか、何故にロシア料理? ここは故郷を懐かしむ遠征兵の宿舎か?」
「いやいや待て待て。どう考えても日本製のロボットがボルシチを頼む辺りのセンスが分からん」
「そうね、ここでお寿司とかならまだ・・・・うん」
「ゲイシャ! フジヤ〜マ!」

 四者四様の反応を返す中――いや、緋は綾香の発言に対する反応か――、瀞は首を傾げる。
 その様は「どうやって作るのかな? 初めてだから分からないよ、あはは」を物語っていた。

「・・・・マズイ。これはもしかすれば、本当にロボットを唸らすかもしれない」

 一哉の声が聞こえたのか、ロボットはこちらを見遣るなり、液晶を思案顔に変える。

『審査員の評価に不服を与えないために、他の参加者も食べるべし』
「・・・・・・・・・・・・・・・・口は災いの元とはよく言ったもんだ・・・・」

 天を仰ぐ一哉を晴也と綾香は不思議そうに眺め、緋は笑顔を貼りつかせたまま何処かへ旅立った。
 できあがった料理は審査員に唸り声を上げさせて爆発させた。しかし、味方も壊滅状態になり、勝者はひとり、ポツンと立ち尽くしていた。

「な、なぜ・・・・レシピ通り作ったのに・・・・・・・・・・・・初めてだけど」


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