第三章「狂気の宴」/ 10


 

 "東洋の慧眼"である熾条一哉の部隊は向かうところ敵なしだった。
 精鋭部隊と自認する部隊は戒律が厳しく、行軍中も私語は禁止。
 そのため、とある洞窟を歩いている時は自分たちの足音と銃器が擦れ合う音しか聞こえない。
 そんな中、事は起こった。
 発端は裏切り。
 今でこそ分かる部隊員の不安。
 決して笑うことも、作戦以外のことも話すことのない年下の指揮官に対する不安と羨望と嫉妬と危機感と嫌悪。
 自分たちは彼と話すことさえ許されないのかと勝手に行き詰まっていった100数名の内の10名。
 彼らから始まった。
 彼らが突然、ばらまいた弾丸は十数人を穴だらけにし、その反乱はものの数分で治まった。
 一哉が他の生き残りに隠れるように指示し、狂ったように弾丸を吐き出し続ける造反者を斬り捨てたのだ。
 一切の慈悲もなく、一切の説得もなく、一切の問答もなく――― 一切の動揺もなく、斬り捨てた。
 まるで信用していなかったかのような対応と裏切りに直面しての態度。
 どこにも人間性の欠片もないその姿に残りの部隊の中にあったわずかな反発の種が一気に発芽した。
 巻き起こる乱戦と粛正の嵐。
 わずかに一哉を守ろうとした者たちが"まるで斬られた"かのように両断された時、完全に部隊は壊滅した。
 日頃の静けさの鬱憤を晴らすように奇声を上げながら発砲する者たちが全員沈黙した時、その場には一哉しか立っていなかった。
 そんな時でも無言。
 ただ自分に殺気を叩きつけてくる闇の奥を凝視していた。

「―――よく踊ってくれる。さすがは卑賤な異教徒だな」

 その後、一哉は己を制限していたものを外してその者に襲いかかって―――






熾条一哉 side

「―――あー、参った参った」

 軽い口調で瓦礫に埋もれた体を起こす一哉は無表情だ。

「全くです。そんな技があるとは・・・・マスターの失態ですね。特注のメイド服が破れてしまいました。ここは責任を取ってマスターのポケットマネーを拝借せねば」

 機械じみた動作で起き上がるヘレネ。
 四肢の損傷は軽微だが、なるほど、確かにメイド服はズタズタだ。
 両者とも衣服に付いたホコリを叩く。
 一目見て、どちらも人形に見えず、敢えてどちらが人形に見えるかと聞かれても、判断が付かないほど人間離れしていた。
 何より、表情が死んだようにないのだから。

「まさか、"砲"を貫いてくるとはな、ゲボッ」

 "総条夢幻流"・砲。
 簡単に言えば"気"の弾丸である。しかし、一哉の場合、"気"が膨大すぎるために弾丸と言うよりも壁その物を飛ばしている感じだ。
 その壁をヘレネの投擲した槍は貫通し、一哉を傷付けるどころか数メートルの滑空をプレゼントした。
 命中はしていない。
 近くに突き立った衝撃だけで吹き飛ばされたのだ。
 もし、少しでも"砲"で軌道が逸れていなければ、串刺しの死体ではなく、木端微塵の肉片が周囲に飛び散っていたことだろう。

「まさか、重圧で槍が折れるとは思いませんでした。おかげで私めの背中のストックはゼロ。いちいち拾わねばなりませんよ」

 ズボッと半ばまで床に沈んでいた槍を引き抜く。

(不味いな。俺はまだ起き上がれ―――)

「―――そこまでだっ。大人しくしろ」

 ヘレネの足元に穴が穿たれた。

「SMOだ。首謀者は投降すれば危害を加えない」

 奇跡的に生き残っていた搬入エレベータの扉が開かれ、8人の人間がこちらに銃口を向けている。
 特殊部隊か何かだろうか、こういう場所を制圧するには充分すぎる装備と訓練が成されているようだ。

「大丈夫ですか?」
「ケガは見た目ほどひどくない。命は助かるぞ」

 SMOは一哉が被害者だと思っているのか、一哉を庇うように立ちふさがった。そして、ヘルメットから顔を出し、嫌味のない笑みを向けてくる。
 自分たちの任務に誇りを持ち、充実している者のみが浮かべられる表情だ。
 一哉はそれをやはり能面のような無表情で見上げた。

「マスター、どうやら、正規ではない道から来た者の生き残り、もしくは先発隊のようですね」
「ああ。ヘレネは動くな、勿体ない。ここにいる≪クルキュプア≫で充分だ。―――行け」
【【【イエス、マスター】】】

 3体の赤自動フランス人形――Rossoが跳躍して距離を詰める。
 その向こう側では日傘を並べ、銃口を揃えた白・黒自動フランス人形5体が待機していた。

「大西は俺に続けっ、他は撃てっ」
「「「「「了解っ」」」」」

 瞬間、一哉の体は瓦礫の影に隠され、戦闘が始まった。

【【【ナ―――     】】】

 裏打ちされた戦闘技術は恐ろしい。
 おそらく、これまでの戦闘データで効果的な戦術を編み出してきたのだろう。
 飛びかかったRossoの2体は投げ付けられた手榴弾で爆砕した。
 残りの1体の着地地点に先回りしていた2人は見たこともない能力――おそらくあれが異能力というものだろう――で左右から攻撃され、大鎌は振るわれることなく倒れる。
 完璧なバリケードもロケットランチャーの前には無力。
 ボーリングのピンのように容易く蹴散らされた≪クルキュプア≫は狙い澄まされた銃撃に糸の切れた操り人形のように倒れた。

「はっ、素晴らしいよ、公務員っ」
「ぬかせっ」

 8人はただ1体生き残った白自動フランス人形――Biancoの後ろに隠れる男爵を目指す。

「マスタ――うっ!?」

 駆けつけようとしたヘレネの足元に手榴弾が転がり、誘爆して次々と爆発した。

【マスター、もう     】

 半円を描くように迫ったSMOの弾丸が遂にBiancoのこめかみを捉える。
 横に吹き飛ばされる最後の盾を見送った男爵は視線を正面に戻し、狙いを付けてくる8人に向き直った。

「「「覚―――」」」
「まさかこれを使うことになろうとはな」

 車椅子の手すりの内側にあるボタンを親指で押す。
 するとパカリと手すりの正面が開いた。

「貴様ら、光栄に思えっ」

 ポチ。

 座席の下から何かが吐き出され、距離を詰めていたSMOの目の前で再構築する。

『なっ!?』

―――タタタタタタタタタタッッッッッ!!!!!!!!

 現れた小型のフランス人形は指先から銃弾を吐き出した。さらに懐からダイナマイトを取り出して投げ付け―――

―――ドガァンッ!!!!!!

 大口を開け、バズーカ砲を撃ち出す。

―――ドゴォォォォンッ!!!!!

 最後に―――

【バンザ〜イ! カ〜ミカ〜ゼ、トッコォォォォ!!!!!!!!】

 万歳突貫し、自爆した。

―――チュドォォォォォォォォォンッッ!!!!!!!!!

 これにはいくら防弾チョッキよりも防御性の高い装甲を纏っていても一溜まりもない。
 爆煙が立ちこめる中、立ち上がる者はなかった。

「ふん、宴を邪魔した報いよ」

 男爵は飛び散った肉片を蔑みの目で見下ろし、それを煙の向こうにいるはずの一哉に向ける。

「次は貴様―――」

 煙幕のような煙が晴れる間を惜しむかのような炎弾が煙を燃やし尽くた。そして、それは守るべき盾を失った男爵に向かう。

「ぬ!?」

 新たな爆煙が生じ、その中を貫く勢いで走り抜ける影は―――

―――ギィィィィンッッッッ!!!!!!!

 炎弾を防いだヘレネと激突した。
 <颯武>と盾が鬩ぎ合い、凄まじい衝撃が煙を四散させ、一哉の炎で焼き肉となった8人の肉塊を消し飛ばす。

「・・・・読んでいたのか? ゴフッ」
「偶然です。まだ生きているかもしれない者がいる場所に平気で炎弾を撃ち込むとは思いませんでした」
「せっかくのいいチャンスだったんだがな。肉を切らせて骨を断つ、か?」

 男爵がヘレネの肩越しからニヤリと嗤った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 返事をしない一哉の衣服に赤い染みが広がっていく。
 その中には滴り落ちるものもあった。
 一哉はここまで距離を詰めるには先程の小型自動人形の攻撃をかいくぐる必要がある。
 サブマシンガンやダイナマイト、バズーカ砲を最低限の炎で防御し、自爆はSMOを盾にして飛び込んだ。
 それはまさに肉を切らせて骨を断つ、という捨て身の攻撃である。

「残念でしたね」

 ヘレネが槍を振りかぶった。
 血を流しすぎた一哉の動きでは退くことは難しい。

―――だが

「まだだ」
「「―――っ!?」」

 唇の端から血を流しながら一哉の右脚が盾を狙って横から走る。
 "気"を纏っているため、容易に盾を吹き飛ばせる威力を誇っていた。

「―――っ、させないっ」

 ヘレネは槍を放り出し、右手で一哉の脚を迎え撃つ。

「げっ」

 そして、ヘレネの手は一哉の脚を掴み取った。
 ギシリとヘレネの関節が鳴ったが、それだけだ。

「はい」
「うぐっ」

 一哉の脚を持ったままヘレネは盾を押し出し、打撃を叩き込んだ。
 その衝撃で脚が放された一哉はたたらを踏んで後退する。
 衝撃が全身に及び、膝を突きかけた。

「せぇい」

 それでも容赦することなく、ヘレネが前進を始める。
 盾が高速で回転し、縁に空いた穴から次々と穂先が飛び出してきた。

「ぐあっ」

―――カインカンキンガンギィンッッッ!!!!

 火花が散るような猛攻。
 その攻撃の前に一哉は反撃を挟めずにいる。
 いや、それどころか次々と肌を掠めていった。
 剣術の達人ではない一哉は全て弾くことができず、脚や腕、頬なんかに傷を負う。
 ただでさえ血塗れだったというのにさらに傷を増やすこととなった。
 それでも後退することは許されず、暴風のような攻撃圏で耐えるしかない。

「く・・・・そっ」

 傷の痛みに歯噛みする一哉の出血量は危険なレベルに達しつつあった。

「秘技・すくりゅーすとれーと」
「ガッ」

 高速で回転する盾がまるで掌底のように突き出される。
 直撃した一哉は弾丸のように一直線に後方へと吹き飛ばされた。そして、壁に激突し、血の混じった息を全て吐き出される。

「秘技・蜘蛛の巣」

 地面に崩れ落ちようとした一哉の動きを止めるように槍が突き立った。

「ヘレネよ、どこが蜘蛛の巣だ?」
「身動きが取れなくなるところ」
「・・・・・・・・少ない符合だな」

(くっ、本当に動けない・・・・)

 ヘレネの力であれば壁に柄の半ばまで埋め込むほどの威力を込められたはず。しかし、手加減されたのか、槍は簡単に抜けないまでもまだまだ充分に長さを残していた。

「"東洋の慧眼"よ。やはり視力が弱っているようだな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ふ、これは売り文句ではないのだぞ? 以前の貴様との違いだ」
「何?」

 これは聞き捨てならない。
 いったい何が違うと言うのか。

「貴様、一緒だった炎術師はどうした? まさか途中で置いてきたのか? 同行を許しながら?」

 男爵は車いすを進めながら抱いていた考えをぶつけた。

「お前にしては無駄な行為だな」
「―――っ!?」

 地下3階で渡辺瀞と時任蔡を連れ出すという命令を与え、手元から手放した守護獣・緋。
 確かに中東の一哉ならば瀞が戦場に迷い込んでいようが、師匠が戯れ言を吐かそうが関係なく放置していたはず。
 相手にし、あまつさえ戦力減になる命令を下すはずがない。

「"東洋の慧眼"。貴様はやはり東洋に帰るべきではなかったな。故郷の地に触れ、本来の判断力を失った」

 男爵はヘレネの助けを借り、一哉に近付いてきた。

「東洋に浸った慧眼はもはや慧眼ではない。今の貴様はただの炎術師だ。若干、他より血統が高貴なだけの、な」

 男爵はヘレネより槍を受け取る。
 それは間違いなく一哉にトドメを刺すための物だ。

「感謝するぞ。貴様のおかげで吾はまた一歩、叡智への階段を昇った」

 鋭い穂先が一度、一哉の胸の上に当たった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ククク」

 何がおかしいのか、一哉が小さく笑い出す。

「ふ、ふはははっ。吾も笑みが止まらんわ。実に愉しき時間であった。やはり宴は最高よのぉっ」

 両手を親指が穂先と逆になるように柄を握り、胸を反るようにして振りかぶる。

「ククク・・・・クハハハ・・・・マズイ、マズイぞ。本当に嗤いが止まらないな、男爵。ハハハハハッッッ」
「・・・・・・・・ならば、吾が止めてやろうっ」

 さすがに不気味なものを感じたのか、男爵は渾身の力を込めて槍を振り下ろした。






別働隊 scene

「―――いや、さすがにキツイわ、これ」
「ちょっと、弱気でどうするのよ」

 晴也は地下4階に通じるエスカレータと階段の両方を見遣って呟く。
 因みに覗き込んだ瞬間、人形の口からサブマシンガンの弾がばらまかれた。

「だってなあ。姉貴、何か手、あるか?」
「・・・・そうね〜。持ってきた<風>はさっきの2人を相手に使い切っちゃったし・・・・正直、手はないわね」

 この場で晴也と晴海が無理と断ずれば、一行はここで立ち往生するしかない。

「そんな、ここまで来てそれは・・・・」

 綾香が悔しそうに洩らした。

「そういうことは人に寄りかかってる奴がいうことじゃないなー」
「仕方ないでしょっ。雷術は精神力を半端じゃないほど食うのよ」

 退魔界で威名を轟かす"風神雷神"も満身創痍だ。
 晴海も単身で死地に突っ込むほど武闘派ではない。

「ここ、一哉は通ったんかなー」
「通ったんじゃないの? むしろ、通って邪魔されないように敵方が配置したんでしょ」
「なるほど。じゃあ、引き返してもいいんじゃね? 地下3階は制圧したようなもんだし」

 先程まで聞こえていた銃撃も止んでいた。
 別路で侵攻したSMOも一段落したのだろう。
 もし、負けていれば敵残存戦力がここに集まっているはずだから。

「誰か、来ます」

 角を見張っていた分家のひとりが言った。

「数は・・・・3。足音からして女性ですね」
「女3・・・・。SMOじゃないわね」
「そうだな・・・・」

 SMOは異能者中心の組織だが、銃器を主要武器に使うこともあり、力のある男の方が前線に出ることが多い。
 それにやって来る中に男性――藤原秀胤がいないのは有り得ないからと言う理由もあった。

「どうします? 一応、迎撃しますか?」
「う〜ん、そうね。一応、各自応戦態勢で」

 晴海の指示に風術師たちは一番迎撃に適した陣形を組む。

「ん? こいつら・・・・」
「あら? もしかして・・・・」

 晴也と晴海が揃って首を傾げた時、角から3人が姿を現した。

「―――イッエーイッ。せんせーこーげきっ」

 Vサインを2つ作りながら駆け出してきたのは緋。
 角を曲がるなり撃ち出された炎弾は風術の防壁をいとも簡単に燃やし尽くし、分家を蹴散らす。

「ちょっと、待ちなさいっ。味方よっ!?」

 いきなり攻撃してくるとは思っていなかった晴海もやや動転したような声を出し、急いで迎撃態勢を調えた。しかし、風術師が炎術師に正面から挑むのはハンデをプレゼントしているようなもの。
 ましてやここは地下。
 ハンデどころか首を差し出していると言っても過言ではない。

「―――緋ちゃんっ、敵じゃないよっ。味方味方っ、結城宗家の人たちだって」

 炎の後ろから瀞と見知らぬ女性が慌てて緋を宥めた。

「あ、瀞っ」

 綾香が若干、上擦った声を上げる。

「え? あ、綾香っ。わあ、偶然っ」
「ホントホント、こっち来てたんだっ」

 2人の少女は思わず駆け寄り、両手を握り合って再会を喜んだ。

「ごめん、連絡しようと思ったんだけど、連絡先知らなかったの忘れてたんだよ」

 瀞が本当に申し訳なさそうに謝る。

「ううん、携帯持ってないからって教えなかったあたしが悪いから。でも、会えてホントよかったよ。さすがに渡辺宗家には気軽に連絡できないから」
「うん。今日、綾香のとこにも寄ろうと思ってたんだけど・・・・」

 言葉を濁した。

「・・・・巻き込まれた、と。・・・・・・・・で、熾条に会ったんだよね?」
「・・・・・・・・・・・・うん」

 沈んだ顔になった瀞を見て、綾香は嫌な予感を抱く。

「何かされた!?」
「え? あ・・・・大丈夫大丈夫。最後には緋を護衛にしてくれたし・・・・」

 何かされたと白状した。
 すっと綾香の目が細まる。

「まあ、これは熾条に訊くとして。―――ねえ、熾条の僕」
「なあに?」

 くるくる〜と無意味に回っていた緋は綾香の言葉に反応し、トコトコと側まで寄ってきた。

「熾条の戦況とか分かる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっと、今、いちやと絶縁中。無意識に意識下のチャンネル切られちゃった。見に行くしかないよ、その階段で」

 目を閉じ、何かを感じ取ろうとしていた緋がパチッと目を開ける。

「階段、ね。ってことは無理ね。これ以上私たちがここにいても無意味―――ってあら?」

 ひょこっと晴海が無造作に階段へと顔を出した。

「は、晴海さ・・・・ん?」

 来るはずの銃撃がない。

「晴也、いつ退いたのか分かった?」
「・・・・いや。でも、タイミング的に一哉の守護獣が突っ込んできた時じゃねえか?」
「―――こちらの意識が逸れた時、か。武術の心得というか、なかなか空気を察する奴が陣取っていたのだな」

 瀞の後ろで黙っていた女性が口を開く。
 晴也と綾香、晴海は揃って女性に向き直り、瀞に視線で説明を求めた。

「え、えーっと、一哉の武術の師匠さん。一哉が中東から日本に帰ってるって聞いて、中国からやってきたんだって」
「時任蔡だ、愚弟が世話になっていそうだな」

 鉄パイプ片手に挨拶する女性。
 女性にしては長身に入る晴海よりも背は高く、長い髪の毛はポニーテールにしている。
 基本的に女っぽさよりも男っぽさが溢れる雰囲気だった。

「それで? 行くのか、この下。一哉が暴れていることは間違いない。それに―――いいのか、お前は」

 蔡は緋を見遣る。

「さっきは止めたけどぉ、もう大丈夫っ。いざ戦いが始まれば邪魔にはならないから。だから、もう燃やそうとかは思わないよ♪」

 ニッコリと恐ろしいことを言った。
 やはり人と馴れ合おうとも、行動の中心は一哉なのだろう。

「じゃあ、あなたたちはここで待機。少数の方がいいでしょ」
「そうだな。じゃあ、綾香、先鋒な」
「分かった―――って行っちゃったわよ、あの娘」
「緋〜、そんなに急ぐとはぐれちゃうよ〜」
「やれやれ、賑やかな一団だ」

 ズラズラと主戦力6名が不可侵域となっていた地下4階へと進んだ。










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