設問1
「消えた仲間を捜せ」



設問1
『消えた仲間を捜せ』



「いや、誰も消えてないし」

 藤丸は当たり前のツッコミを入れた。

「これでは解けませんね」

 幸希も首をひねっている。

「実はまだ、いるんじゃありません? こちらに来ている人が」
「だからと言ったって、誰か分からないのに探しようも―――」
「「「「あ」」」」

―――バクリ

 藤丸が頭上から降っていた闇に呑み込まれた。そして、その闇が晴れた時、藤丸の姿はそこにない。

「あんたが攫われるんかい!」

 郁の渾身のツッコミも藤丸には届かない。

「あわ、あわわ・・・・っ。ど、どどどどうしましょう!?」

 幸希もあまりの出来事に慌てふためいた。
 ムリもない。
 藤丸を失えば内乱という意味がなくなるのだ。

「も、盛武殿、如何なさいましょう!?」

 この中では最も年長である盛武に幸希は詰め寄った。
 因みに紗姫は暇そうにあくびをしている。

「落ち着け。大丈夫だ。若の居場所ならたいてい見当が付く」

 盛武はこの設問の仕組みを完璧に解いていた。

「若は脱走癖があってな。それを昔から探すのが俺の仕事だった」

 盛武と藤丸は五歳違いだ。
 藤丸が脱走癖を身につけたのは十年前ほどであり、盛武は元服前からその経験を持っていると言うことになる。

「最初は国分城内だったが、いつしか外に出るようになって・・・・」

 盛武は付けられた自分の家臣たちを総動員して探したものだ。
 慣れてくると、いくつかの部隊に分け、どの部隊が一番早く見つけるか、とかいう遊びになっていたのは愛嬌だと豪語したい。

「ご丁寧に地図まである。少し行ってくるから、お前たちは待っていてくれ」

 そう言い残すと盛武は軽い足取りで走り出した。そして、ものの数分で藤丸の襟首を掴んで帰ってくる。

「ひとつ思うんですが・・・・」

 これまで発言しなかった紗姫が口を開いた。

「これまで藤丸様が自分の意志で隠れていたものを見つけていたものを発見していたようですが・・・・」

 紗姫は襟首を捕まれて宙に浮いている藤丸を見て続ける。

「今回は明らかに他人の意志が働いています。それを難なく見つけるとは、藤丸様の思考を読むのではなく、藤丸様自身の存在を何となく把握している証拠なのではないかと・・・・」

 何も言わずに、どこにいるのか分かる仲。
 少女のような顔をした藤丸と、涼しげな容姿をした盛武。

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 紗姫は疑わしげな視線を、郁は気まずそうに頬を染めてそっぽ向く。

「まあ、別に珍しくはないですよね?」
「「何がだ!?」」
「いたぁっ!? 僕は一般論の話をしたのに!?」

 やりきれない想いをふたりは幸希の頭にぶつけた。


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