タ号作戦
タ号作戦。 1942年10月に日本陸海軍が発動した協同作戦の名前である。 その地点はソロモン諸島、ガダルカナル島だった。 ガダルカナル島攻防戦と言う戦役での最大戦闘が繰り広げられた一連の陸海空戦の統一名称はない。 これは短期間に多くの場所で様々な戦闘が発生したためだ。 よって、この後に述べる戦闘は、海軍もしくは陸軍内での通称名となる。 海軍名:第三次ソロモン海戦。 陸軍名:ガダルカナル島第二次総攻撃。 それでも作戦立案段階では、海軍も陸軍も"「タ号作戦」"の名を使っていた。 作戦会議scene 「―――お集まりいただきありがとうございます」 1942年10月1日午前9時、吉田キャンパス内連合艦隊司令部。 ここに海軍首脳部が集まっていた。 司会を務めるのは先任参謀・黒島亀人海軍大佐である。 上座には山本五十六連合艦隊司令長官や宇垣纏参謀長も座っていた。 「これから説明するのは連合艦隊の次の作戦についてです」 黒島の言葉に居並んだ者たちが息を呑み、互いの顔を見合わせる。 各々の隣にいる者は、大半が別の隊に所属する者たちだった。 このことから、今度の作戦はミッドウェー作戦に並ぶ大作戦だということが分かる。 だが、それ故に不安があった。 「少しよろしいか?」 比較的前の列に座っていた海軍少将が手を上げる。 「どうぞ」 彼は黒島に許可をもらって、立ち上がった。そして、後ろを振り返って首を捻る。 「やはり・・・・」 「どうかなされましたか?」 「いや・・・・・・・・・・・・作戦発表にしては、佐官が多いな」 その通り。 ここに集った者たちはそれぞれの部隊の参謀を務める、言わば中間管理職である。 彼らの上司に当たる将官級の人員は、作戦行動中だった。 「実戦部隊には先に動いてもらっている。その上で次の行動を指示するために参謀を派遣してもらったのだ」 少将の疑問に宇垣が答える。 「諸君らもすでに部隊が動いていることを鑑みて、しっかり聞いてほしい」 「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」 すでに部隊が動いている。 つまり、作戦発動日時は目前に迫っているということだった。 「今回の作戦目的は―――」 少将が頷きながら座ったのを見て、黒島が説明を始める。 「―――ガダルカナル島の奪還、です」 分かっていた、とばかりに数人の参謀が頷いた。 彼らの部隊が向かう先は、トラック、パナマ、ラバウルだったからである。 また、珊瑚海海戦やミッドウェー海戦が勃発した地域に対する攻勢作戦は無謀であり、アリューシャン列島への攻撃も戦略的意義はなかった。 常識的に考えて、日本軍の作戦発動地はガダルカナル方面しかなかったのである。 「今回の作戦は二段階に分かれています」 第一段階:ガダルカナル島周辺の制海権・制空権の確保。 第二段階:ガダルカナル島の敵陸上戦力を無力化。 「第一段階は海軍、第二段階は陸軍が担当します」 黒島はそう言い、視線を前の方に座る陸軍将校に向けた。 「陸軍大佐」の肩章をつけた軍人は黒島に対して黙礼する。 彼は"夜襲の仙台師団"こと第二師団の参謀長・玉置温和だった。 海軍の参謀たちは玉置が第二師団の参謀長であることは知らない。しかし、参謀級が集められているこの会議で、陸軍大佐がいる事実からこう予想した。 『陸軍は師団規模を投入する』 それは今のような小規模輸送ではなく、輸送船を用いた大規模輸送作戦が必要となるだろう。 「皆さんも納得の通り、常識的な作戦目的です」 黒島はうんうんと頷き、参謀たちの意見を代弁した。 「だからこそ、米軍も気付くでしょう」 この発言にも参謀たちが頷く。 米軍はミッドウェー作戦を見抜き、空母部隊を展開させていた。 あの当時、日本軍がミッドウェーを攻めるなど、常識的ではない。 戦略的奇襲だったにも関わらず、米軍は対応した。 今回も当然、迎撃戦力を派遣するだろう。 「その米軍を叩きます」 「目的はガ島奪還ではないのか?」 先程の少将が首を捻りながら言った。 「作戦目的がガ島奪還。作戦目標が当該地域の制空権・制海権の確保です」 作戦目標を達成するために、米海軍の撃破という戦術目標が設定されているのだ。 「これではミッドウェーと同じではないか! ガ島には敵航空部隊も進出しているんだぞ!」 きつい口調で異を唱えたのは、軍令部総長・永野修身海軍大将だった。 そもそも作戦を立案するのは軍令部であり、連合艦隊はそれを無視して作戦を進めようとしている。 その事実に不信感を抱いていた。 連合艦隊発案の真珠湾攻撃は成功したが、続くミッドウェー海戦は大敗北。 実戦部隊が十分な検討をせずに実施した結果と言える。 尤も軍令部が主張した作戦もうまくはいっていないのだが。 (まあ、永野さんの主張は尤もですね) 永野たちと共に軍令部の一員として座っていた嘉斗は心の中で呟いた。 ミッドウェー海戦の敗因に、ミッドウェー島航空部隊および空母部隊の制圧と言う二正面作戦を実施させたことにある。 南雲中将以下、司令部はどちらを優先すべきかを悩み、そして、結局どちらも制圧することができずに攻撃を受けたのだ。 今回の作戦目的および目標は、ミッドウェー作戦に酷似していた。 「ご安心ください、軍令部総長」 黒島は余裕を崩さずに永野に向き直る。 「ミッドウェーとは戦力が違います」 そう言って、黒島は背後の壁にかけられた布を引きはがした。 そこには一枚の大きな紙が貼られ、戦力配置がびっしりと記されている。 「これが今回の作戦部隊です」 「「「―――っ!?」」」 説明を受ける参謀たちの多さから作戦部隊の多さも予想していたが、それでも実際に示されると驚きの方が強かった。 「第一艦隊、第二艦隊、第三艦隊、第六艦隊、第八艦隊、第十一航空艦隊、第四航戦、第五航戦・・・・」 黒島が参加部隊を読み上げていく。 第一艦隊 第一戦隊:戦艦「大和」、「武蔵」。 第二戦隊:戦艦「長門」、「陸奥」。 第七戦隊(※1):重巡「国見」、「雲仙」、「石鎚」。 第一水雷戦隊:軽巡「阿武隈」。 第六駆逐隊:駆逐艦「雷」、「電」、「響」、「暁」。 第二一駆逐隊:駆逐艦「初春」、「初霜」、「若葉」。 第三水雷戦隊:軽巡「川内」。 第十一駆逐隊:駆逐艦「吹雪」、「白雪」、「初雪」、「叢雲」。 第十九駆逐隊:駆逐艦「磯波」、「浦波」、「敷波」、「綾波」。 第五航空戦隊:「隼鷹」、「飛鷹」。航空機約120機。(臨時編入) 第二艦隊 第三戦隊:戦艦「奥羽」、「相武」。 第四戦隊:重巡「愛宕」、「摩耶」、「高雄」 第五戦隊:重巡「妙高」、「羽黒」。 第二水雷戦隊:軽巡「神通」。 第一五駆逐隊:駆逐艦「黒潮」、「親潮」、「早潮」。 第一八駆逐隊:駆逐艦「霞」、「陽炎」、「不知火」。 第二四駆逐隊:駆逐艦「海風」、「山風」、「江風」、「涼風」。 第十一航空戦隊:水上機母艦「千歳」、特設水上機母艦「神川丸」。 第四航空戦隊:「雷鷹」、「鳴鷹」。航空機約120機。(臨時編入) 第三艦隊 第一航空戦隊:空母「翔鶴」、「瑞鶴」。航空機約180機。 第二航空戦隊:空母「蒼龍」、「雲龍」。航空機約150機。 第三航空戦隊:空母「瑞鳳」、「龍鳳(※2)」。航空機約60機。 第十一戦隊:戦艦「比叡」、「霧島」。 第八戦隊:重巡「利根」、「筑摩」。 第九戦隊(※3):軽巡「北上」、「大井」。 第一〇戦隊:軽巡「長良」。 第四駆逐隊:駆逐艦「嵐」、「萩風」、「野分」、「舞風」。 第一〇駆逐隊:駆逐艦「秋雲」、「夕雲」、「巻雲」、「風雲」。 第一六駆逐隊:駆逐艦「初風」、「雪風」、「天津風」、「時津風」。 第一七駆逐隊:駆逐艦「浦風」、「磯風」、「谷風」、「浜風」。 第六一駆逐隊:駆逐艦「秋月」、「照月」。 第六艦隊:省略。 第八艦隊: 重巡「鳥海」。 第六戦隊:重巡「最上」、「鈴谷」、「熊野」。 第四水雷戦隊(臨時):軽巡「由良」。 第二駆逐隊:駆逐艦「村雨」、「夕立」、「春雨」、「五月雨」。 第九駆逐隊:駆逐艦「朝雲」、「夏雲」、「峯雲」。 第二七駆逐隊:駆逐艦「有明」、「夕暮」、「白露」、「時雨」。 第十一航空艦隊 ラバウル(ニューブリテン島)、ブカ(ブーゲンビル島)、ブイン(同島)の在地航空隊。 ※1 国見型重巡。改高雄型として設計された最新鋭重巡、4番艦「有珠」は完熟訓練中 ※2 ドーリットル空襲迎撃成功により「龍鳳」に爆弾命中しなかったため、 その修理なく8月に就役 ※3 重雷装艦ではなく、防空巡洋艦として改装 「―――戦艦8、空母10、重巡14、軽巡7、駆逐艦54、水上機母艦2、航空機750機以上」 「「「・・・・ッ」」」 改めて告げられた総戦力に、居並んだ参謀たちがどよめく。 「もちろん、これほどの戦力を統一運用できません」 観艦式ではないのだ。 複数の部隊に分ける必要があった。 「複数の部隊がそれぞれの目標を持ちます。このため、ひとつの部隊がふたつの目標を持つことはありません」 黒島が先の懸念点に対する答えを口にする。 「ミッドウェー作戦は海軍始まって以来の大作戦だった」 山本が参謀たちに向かって口を開いた。 「しかし、主に戦ったのは第一航空艦隊のみ。私が率いた第一艦隊は元より、多くの部隊が戦場から離れていた」 だから、南雲艦隊は奮闘したが、敗れた。 そう言外に伝えてから、山本は犠牲者へ黙祷するように閉じていた目を開く。 「今度は全部隊が第一線だ」 「「「・・・・ッ」」」 告げられた言葉に参謀たちが息を呑んだ。 「それではこれより作戦概要を説明します。適宜質問を受け付けますので、ご意見がある方は挙手にて―――」 黒島がミッドウェー作戦を超える壮大な作戦計画を披露する。そして、それから翌日の朝方まで、休憩を挟みながら白熱した作戦会議が続いたのだった。 「―――諸君、よく集まってくれた」 同日、仏領ニューカレドニア本島ヌーメアの南太平洋部隊司令部。 ここに同司令長官であるウィリアム・ハルゼー中将が最前線を担当する将官たちを集めていた。 8月の第二次ソロモン海戦以来、日本海軍の攻勢は止まっている。 もちろん、ガダルカナル島に展開した陸上戦力に対しての補給活動は続けられていた。 この阻止および自軍の補給のためにアメリカ軍も活動を継続中だ。 それでも艦隊を率いての戦いはひと段落しており、これらの部隊の指揮官たちの召喚は可能だった。 「ハワイの情報部より、ジャップによる作戦発動の兆候を察知したと報告があった」 「噂の太平洋艦隊情報部ですか・・・・」 発言したのはトーマス・キンケイド少将だ。 彼はミッドウェー海戦において、日本軍の目標がミッドウェー島だと察知した情報部の話を聞いていた。 「しかし、目標はガダルカナル島だろう?」 腕を組んで唸るように呟いたのはジョージ・マレー少将だ。 彼はキンケイド少将と共に空母部隊を率いる司令官である。 日本軍が来た場合、迎え撃つのは彼らの部隊だった。 「おそらくガダルカナル方面だ。ただ問題はこれまでとは違い、大規模だと言うことだ」 「戦艦も出てくるというのでしょうか」 発言したウィリアム・リー少将は新鋭戦艦を含む水上戦闘部隊を率いている。 日本海軍が大規模で襲来する場合、戦艦を伴ってくることが予想された。 そうなればアメリカ艦隊との間に艦隊決戦が生起する可能性がある。 彼はそれを期待しているのだ。 「ハワイはそう見ている。どうやら日本の第一艦隊が呉を出港したようだ」 目的地はトラック、パラオもしくは日本海軍の内海となった蘭印周辺か。 どちらにせよ、出撃拠点への移動だろう。 「故にハワイから追加の戦艦や空母が合流する。リー、戦艦は貴様の下で統一運用してほしい」 「かしこまりました」 「これで我々は強大な艦艇を保有する、アメリカ海軍最強艦隊となるな」 戦艦6隻。 「サウスダコダ」、「ノースカロライナ」、「ワシントン」、「コロラド」、「ペンシルベニア」、「アイダホ」。 空母4隻+@。 「サラトガ」、「エンタープライズ」、「ヨークタウン」、「ワスプ」、護衛空母数隻。 重巡5隻。 「サンフランシスコ」、「ソルトレイクシティ」、「ポートランド」、「ノーザンプトン」、「ルイビル」。 軽巡6隻。 「サバンナ」、「ヘレナ」、「アトランタ」、「ジュノー」、「サン・ファン」、「サンディエゴ」。 駆逐艦多数。 「敵の目的がガダルカナル島奪還である以上、あの島に増援を送り込まなければならない」 すでに何回かの輸送部隊を送り込んでいる。しかし、日本軍の潜水艦や航空部隊に邪魔され、思うように補給できていない現状だった。 食糧事情は好転し、弾薬の備蓄もある。だが、それは敵の攻撃を撃退するに十分とは言えない。 先の攻撃(川口支隊による第一次総攻撃)よりも大規模だと思われる次回攻撃を撃退するには、これらの補給が必要だった。 「故にお前たちには以下のように分かれてもらいたい」 第64任務部隊(戦艦6隻基幹):ウィリアム・リー少将。 南太平洋司令部同乗:ウィリアム・ハルゼー中将(司令長官)。 第16任務部隊(空母2隻基幹):トーマス・キンケイド少将。 第17任務部隊(空母2隻基幹):ジョージ・マレー少将。 第64.2任務部隊(巡洋艦4隻基幹):ノーマン・スコット少将。 輸送部隊(陸軍・海兵隊輸送):リッチモンド・ターナー少将。 第64.1任務部隊(護衛空母4隻基幹):ダニエル・キャラハン少将。 「スコット少将はターナー部隊の護衛だ。忌々しいことにラバウルを中心とした基地航空部隊も手強い。十分に注意してくれ」 「はい」 ハルゼーはスコットに声をかけた後、リーに向き直った。 「我々は君の旗艦に間借りさせてもらう」 「ようこそ、司令。敵の新型戦艦が沈む光景を特等席でご覧ください」 右手を胸に当て、優雅に一礼してみせるリー。 合衆国海軍の中でも砲術の第一人者である彼は、己が率いる戦艦群に絶対の自信を持っている。 何せ新型16インチ砲搭載戦艦3隻、16インチ砲搭載戦艦1隻、14インチ砲搭載戦艦2だ。 対する日本海軍は金剛型が空母部隊の護衛に振り分けられているので、残りは新型戦艦2隻、奥羽型2隻(14インチ砲)、長門型2隻(16インチ砲)だ。 日本軍の新型戦艦が14インチ砲とは思えないので、搭載砲レベルでは同数と言える。 だからこそ、自身の指揮でこれを打ち破るのだ。 「日本軍の水上戦闘能力は、水雷戦こそ高いが、砲戦に関してはそう高くありません」 リーは赴任に当たって昨年の戦闘詳報を熟読していた。 フィリピン-蘭印付近での戦闘では、日本海軍は随分無駄玉を撃っている。 「またレーダーの技術はこちらが優れています」 敵の夜戦能力は驚異的だが、それをカバーする水上レーダーが取り付けられていた。 「敵より先に発見し、これを叩く」 島嶼が多いソロモン海域こそ、レーダーをうまく使えば敵より早く発見できるだろう。 日本軍の夜戦肉眼監視能力は驚異的である。だが、暗い中で小さな点が動いているのか、止まっているのかを判断するのは難しいことに変わりない。 その点、レーダーは静的か動的かを判断することができた。 「ミッドウェーで空母にやられた真珠湾の借りは返した」 ハルゼーが諸将を見回し、力強く言う。 「次は水上戦闘でこの海域での屈辱を晴らす!」 『『『Yes, Sir!!!!!』』』 将官たちは一斉に立ち上がり、ハルゼー向けて敬礼した。 「―――さっさと入れ! ほらそこ! ぐずぐずするな!」 1942年9月20日、広島県宇品港(現広島港)。 日米海軍が決戦を決意した少し前、ここで陸軍の佐官が声を荒上げていた。 「いや、少佐、そこまで声を上げなくても」 「いいえ、さっさと行かねばなりません」 「少佐」をたしなめたのは武隼時賢少将だ。 「急ぎすぎで事故があっても困る」 そう言って時賢は宇品港に留まる船を見遣った。 「我ら陸軍が持つ、替えの効かぬ艦船なんだからな」 神州丸。 兵員1,200名、車両18輌、船艇29隻を搭載できる、日本陸軍が世界に誇る揚陸艦だ。 同型の龍城丸と共にこの宇品に来ているのは、まさに少佐が指揮して積載している車両のためだった。 「ですが、いち早くこれを前線に投入しなければなりませんぞ」 「まあな。制式採用したのはいいが、前線展開が遅れに遅れたからな」 時賢が肩をすくめて首を振る。 「これで敵のM3に勝てる」 「一方的に負けることはないだろう」 彼らが話す中、1両の戦車が簡易の橋を使って船の中に直接入っていった。 彼らがよく知る主力戦車――九七式中戦車シリーズとは異なる、全く新しい車体の戦車である。 戦車砲こそ九七式改中戦車が持つ57mm長砲身戦車砲と同じだが、正面装甲が分厚かった。 貧弱な装甲故に機動力を駆使して側面に回り込まなければならない九七式改中戦車は、歩兵を随伴する戦闘は不得手だ。 だが、この新型戦車はそれができる。 (一式中戦車・・・・。俺の求める戦車とは違うが、なくてはならない戦車でもある) 特に島嶼戦となる太平洋戦線では、機動戦が不可能な場合も多々ある。 正面からの叩き合いになった場合、正面装甲の厚さは勝敗に直結していた。 「これを装備した第二捜索連隊がガ島で大活躍するでしょう」 第二捜索連隊に配備されるのは、一式中戦車18輌。 敵も戦車を持っているだろうから、マレー作戦以来の戦車戦となるはずだ。 「まあ、海軍がしっかり露払いして貰わないと困るんだけどな」 「全くその通り」 陸軍は海軍の戦闘が終わった後に出番が来るのだから。 こうして、両軍の準備が進む中、ガダルカナル島を巡る攻防戦は、陸海空に渡る壮絶な戦闘を繰り広げることとなる。 その一連の戦闘をこの物語では「第三次ソロモン海戦」と呼ぶことにする。 太平洋戦線の主導権を左右する戦役が始まった。 |