「銀杏の落葉」/二



 豊後国。
 現在の大分県の大部分に相当するこの国は、山地の占める割合が大きい。
 北西部には日出生台、西部には西海道随一の標高を誇る中岳を含む九重連山、南部には九州山地北部(祖母山、傾山)がそびえる。
 それでも東部には複雑な海岸地形を有する複数の湾とそれに注ぐ河川、さらにその流域が築いた大分平野、佐伯平野、臼杵平野等が存在する。
 これらの平野は農業生産地として機能し、豊後水道の豊富な水資源と共に豊穣を民に与えていた。
 さらに山地部に火山が多く存在し、その恩恵である温泉による観光収入、鉱産物による貿易収入もある。
 表石も実石も高い、うまみの多い国である。

 そんな国における国防の要は先に述べた山地と複雑な海岸地形だ。
 山地は侵攻軍の動きを制限し、入り組んだ湾は敵水軍に対して陸上火点からの十字砲火を可能にする。
 豊後を領する銀杏国は、国境の砦群の他に方面担当拠点が堅城として君臨していた。

 北西部方面:
  日隈城・月隈城(日田郡):山地防衛線の外側だが、対筑後最前線。
  角牟礼城(玖珠郡):対豊前最前線。日田郡方面の後方策源地でもある。
 西部方面:
  岡城(直入郡):対肥後最前線。
 南部方面:
  佐伯城(海部郡):海側の対日向最前線。
  朝日嶽城(海部郡):山側の対日向最前線。
  栂牟礼城(海部郡):戦時のみに使用する堅城。
  臼杵城(海部郡):佐伯城の後方策源地、豊後水軍拠点のひとつ。

 銀杏国は龍鷹侯国と接する南部方面の諸城の防備を固め、臨戦態勢を整えていた。
 これを正面から攻略するには骨が折れる。
 故に戦略が必要になるため、忠流は主要の部将を集め、戦評定を開くことにした。






軍議scene

「―――集まったな、それでは始めよう」

 鵬雲五年十月五日、薩摩鹿児島城。
 ここに龍鷹侯国の主だった者が集まっていた。
 各官省の卿や大輔だけでなく、軍事の関係者たちだ。
 このため、司会は幸盛ではなく、龍鷹軍団の司令官とも言える鳴海陸軍卿直武が務めていた。

「御館様は近い内に銀杏国を征伐することを決められた」
『『『―――ッ!?』』』

 声にならない騒めきが広がる。
 誰もが次は龍鷹軍団が主導権を握る侵略戦だと軍人として分かっていたが、ここ数十年と龍鷹軍団は大きな侵略戦争を起こしていない。
 大隅や日向の豪族平定や聖炎国との国境策定戦争の結果、龍鷹侯国は薩摩・大隅・日向・肥後の四か国にまたがる領土を持つに至った。
 だが、朝廷の許しを得た、対中華戦力構築のためのものと対外的に言っている。
 他国から領土が脅かされない限り、その逆はないと言っていたのだ。

(在地領主が勝手に降伏してこちらに付くのは侵略ではないという論法で、元々苦しかったんだけどな)

 上座に座る忠流はそう思ったが、口にしなかった。
 表向き、決して侵略戦争をしない正義が特徴とも言えた龍鷹侯国の在り方が、直武の言葉で揺らいだのだ。
 諸将が動揺するのは無理もないと言える。

(そもそも聖炎国に侵攻したこともあるだろうに)

 ただそこは宿敵とも言えた聖炎国への懲罰的侵攻と思っている部将も少なくない。
 何せほとんど領土は増えなかったのだから。

「前線陣地構築のためにすでに一部の兵は鹿児島を出陣している」
「なんと・・・・」

 直武の言葉に何人かの部将は驚いた。
 戦の気配は感じていたが、すぐそこまで迫っているとは思っていなかったのだろう。
 激戦を戦い抜いた後に来る虚脱感――燃え尽き症候群――の影響が、特に薩摩衆に強く出ていた。
 彼らの思うことも分かる。
 『あれだけの戦いがあったのだ。次はもう少し先のことだろう』
 これは龍鷹侯国が常に受け身であったこと、侵攻される立場だったことから根付いた思想と言える。

(これを変えてやらないとな)

 忠流は視線を直武に向け、発言を引き継いだ。

「先の虎熊-銀杏連合軍の侵攻で俺たちは窮地に立たされた」

 結果的に領土を喪わず、逆に日向を手に入れたが、もう一度同じことができるかと言えば無理だろう。
 今は両国とも国力回復に努めているが、回復した場合、再度侵攻してくることは確実だ。

「将来の敵を減らすため、まずは銀杏国を討つ!」

 忠流がそう言うと、ざわめきは消えた。
 先に手を出したのは銀杏国なのだ。
 その脅威を取り除くのは当然だ。

「銀杏国への侵入経路は大きく分けて三つ」

 直武が一座の中心に置かれた地図を指し示す。

「ひとつ、肥後国阿蘇領を経由して竹田盆地に侵攻する」

 指示棒が障害となる岡城の周囲に丸印を描いた。

「ふたつ、日向国延岡領から佐伯平野への侵攻」

 地図の佐伯城を囲む。

「みっつ、豊後水道を北上して別府湾へ侵攻」

 地図の臼杵城や杵築城、そして、敵の本拠地――府内を囲んだ。

「どれも容易ではないの」

 治部卿・鹿屋利直が言う。
 最近は家督を譲った鹿屋利孝が軍を率いることが多いが、"翼将"の異名を取る隙間探しの名人としての戦略眼は鈍っていない。

「聖炎国の要塞ほどではないが、銀杏国の境目の城は難攻不落だ」

 聖炎国は規模の大きい平山城が交通の要衝や地域の支配地に君臨している。
 一方、銀杏国の城は規模こそ小さいが、峻嶮な地形を利用した山城を中心としている。
 平地にも城域はあるが、それはあくまで平時に使用する空間であり、戦時には山に登るのだ。

「銀杏軍団の本土防衛戦略は、境目の城に少数の兵が籠って敵をひきつけ、大軍の増援で後詰決戦に挑むというものだ」

 この場合、大軍同士の激突というよりも兵数と地の利に物を言わせたゲリラ戦と分進合撃の併用だ。
 侵攻軍は数多い攻め手に疲弊し、崩壊する。
 実際にかつて虎熊軍団が豊後に侵攻した折、この手法で撃退していた。

「敵主力軍の予想は?」

 障害となる城は動かせないので、問題になるのは敵軍の数となる。
 このため、直武が諜報を担当している刑部大輔・藤川晴崇に質問した。

「高城川の戦いの損耗は回復しておらず、国境の守備を含めても一万程度。北方の守備を無視しても一万二〇〇〇が限界でしょう」
「岡城に一五〇〇、佐伯・臼杵に二〇〇〇~三〇〇〇、府内に本隊として六〇〇〇というところだろう」

 忠流の計算に直武も頷く。

「戦力はこちらの方が有利というわけですな」

 その言葉に居並んだ諸将はすでに陣立てが忠流と直武の下に決定していることを悟った。

「では、陣立てを発表する!」

 忠流が立ち上がると、背後に控えていた長井忠勝、加納忠猛が丸めていた長方形の一枚紙を持って彼の傍に寄る。そして、両端を持って広げた。
 すると横に長い一枚紙がまるで帯のように諸将の前に表れる。
 その紙には別の紙が、まるでその下の文字を隠すように貼り付けられていた。

「おお、なかなか楽しませる演出だな」
「そうですね、自分の名前があるのか気になっちゃいますね」

 末席にいた皇女・昶と"霧島の巫女"・紗姫が笑みを含んだ声音で言う。

「いや、おふたりの名前は書かれていないかと・・・・」

 同じく末席に座っていた幸盛が思わずツッコミを入れた。

「何? 我を入れないだと!?」
「そうです! このクサレ皇女はともかく私を入れないなんてありえません」
「貴様は将ではなく武器じゃろ!」
「それならあなたは武器ですらないでしょう!」

 喧々囂々と言い争いを始める当主奥方二名。

『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』

 どうにかしろ、と諸将の視線が忠流に向き、彼は黙って顎をしゃくった。
 「連れていけ」と幸盛に。

「・・・・・・・・・・・・御意」

 幸盛は女官を呼び、彼女たちにふたりを羽交い絞めにさせて強制退場させる。そして、幸盛自身もふたりをなだめるために退出した。

「・・・・さて、気を取り直して―――」

 忠流は微妙な沈黙を気にせず、淡々と進める。
 ただ陣立てに記載された諸将の名を隠した紙を楽しそうに掴んでいる辺り、ふたりの奇行はあまり気にしていないようだ。

「陣立てを発表する!」


 日向口。
 一番隊:神前豊政(旧姓:川澄、延岡衆)、兵藤信昌(目付)
 二番隊:絢瀬晴政(日向衆)
     与力:楠瀬正成、笠原雅道、寺島春久、香月高知、山岡久英、山野辺時通
 三番隊:鹿屋利孝(大隅衆)
 本 隊:鷹郷忠流(総大将)、鳴海直武(副将)
     先備:長井衛勝・武藤統教
     中備:鳴海盛武、御武幸盛、瀧井信成
     本備:鷹郷忠流、鳴海直武、加納猛政(近衛衆)、
     後備:旗本衆(軍監・藤川晴祟、他)
 総予備:薩摩衆
     総荷駄係:武藤晴教


 肥後口。
 先備:佐久仲綱
 中備:村林信茂
 援軍:聖炎軍団


 豊後水道。
 海軍第三艦隊:南雲唯和(艦隊司令官)、鷹郷勝流(軍監)


 想定陸上兵力。
 日向口:一万七〇〇〇。
 肥後口:三〇〇〇(+聖炎軍団)。
 合 計:二万。


『『『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥』』』

 あまりにも大規模な動員に諸将は絶句した。
 残る主だった部将は鹿屋利直くらいだ。

「日向口と肥後口で兵力を分けるから、両者の情報共有が大事となる」
「お任せください」

 そう言って頭を下げたのは軍監に選ばれた藤川晴祟だ。
 彼は"刑部大輔"に任じられており、龍鷹侯国が誇る忍び集団・黒嵐衆の上役でもある。
 尤も実際の指揮を執るのは頭目である霜草忠久だが、情報を整理して忠流に伝える中間管理職的役割を担っていた。

「―――ひとつよろしいか?」

 挙手付きで発言したのは出水城将・村林信茂だ。
 先の虎熊軍団との戦いで重傷を負っていたが、最近職務に復帰している。

「聖炎軍団の増援はどの程度なのか?」

 彼は肥後口を割り振られており、その戦力は同輩の佐久勢を合わせても三〇〇〇。
 この程度の兵力では方面軍を担当できない。そして、彼らの前に立ちはだかるのは天然の要塞・岡城である。

「聖炎軍団は阿蘇地方の征伐を予定している。その兵力をそのまま増援としてくれるそうだ」

 聖炎国は龍鷹侯国に大きな借りがある。
 先の戦争の傷を癒しつつ、地震に反旗を翻した阿蘇、玉名、菊池の征伐を虎視眈々と狙っていた。
 今回はその阿蘇征伐。
 国の威信を賭けて臨むはずだ。

「名島景綱殿は留守として熊本に残るそうだが、珠希殿自ら出陣すると聞いている」
「して、兵力は?」
「五〇〇〇は下らない」

「それは・・・・」

 十分と言えるだろう。
 阿蘇征伐の損耗と征伐後の慰撫に一五〇〇を抜いたとしても三五〇〇。
 これで肥後口は六五〇〇となり、岡城の推定一五〇〇に対して十分な兵力差を確保できる。

(問題は指揮系統だろうが、問題ないだろう)

 忠流はそこで眉をひそめた。

(本当だったら佐久頼政を大将に据えるんだけどな・・・・)

 前人吉城主・佐久頼政の消息は不明のままだ。
 虎熊軍団に討ち取られたというのならばその報告と首返還があるはずだが、一向に連絡がない。
 他の可能性は落ち武者狩りにあったというものだが、聖炎国の調査でもそれらしき事例は確認されていない。
 人吉城はこれまで通り佐久家に任せ、家督も嫡男・仲綱への相続を認めていた。
 だが、彼はまだ若く、村林も他国の兵を指揮するほどの地位がない。

(肥後口は敵をあやしながら大分府内を牽制するのが役割だ)

 聖炎軍団は岡城を無理攻めすることはないだろう。

(あくまで主攻路は日向口だ)

 一万七〇〇〇はそれだけで弱体化した銀杏軍団を粉砕できる。

(だが、正面から撃破するのでは流す血が多すぎる)

 勝利は確実。
 後は如何に犠牲を抑えるかである。
 それをなすには戦略が必須。
 つまり、"戦略家"である忠流の手腕が問われるのであった。






「―――どうだ?」

 戦評定で豊後遠征を決めた日の夜、忠流は自室で複数の人間を迎えていた。
 そこに集うのは龍鷹侯国の重鎮である鳴海直武、鹿屋利直、武藤晴教、加納猛攻だ。
 それぞれ軍事担当、外交担当、法令担当、忠流護衛担当という職務についていた。
 また、年長者としての経験と常に鹿児島に詰める最重鎮と言える人材だ。
 ここで扱う情報は機密事項のため、側近である幸盛も奥方ふたりも同席を許していなかった。

「報告いたします」

 忠流を含めた五名を前にして報告態勢を採るのはふたり。
 藤川刑部大輔晴祟、霜草刑部少輔忠久。
 諜報の責任者と黒嵐衆の頭目だ。

「虎熊宗国の本拠地、福岡に潜り込ませた手の者は全滅した模様です」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 報告を受けた五名は沈黙を返した。

「久留米、佐賀、中津に潜り込ませた手の者からは情報が入り、現地の虎熊軍団の動向は得られています」

 虎熊軍団による肥後侵攻。
 それは突然の撤退で幕を閉じた。
 龍鷹軍団は銀杏軍団と虎熊水軍を撃滅し、虎熊軍団本隊との決戦で熊本城まで追い返す。
 虎熊軍団は熊本城の攻囲を解き、北西方面に展開して龍鷹・聖炎連合軍と睨み合う態勢を採った。しかし、ある日突然、陣払いして帰国したのだ。

「唐津領を侵攻した肥前方面軍は佐賀に帰還しています」

 藤川の言った事実が肥後陣払いの間接的な理由であろうことは確実だった。
 唐津領は虎熊宗国の属国とも言え、味方を攻めた肥前方面軍の行動は虎嶼晴胤の理解を超えたものだったのだろう。
 唐津領単独で肥前方面軍を撃退できるわけなく、ものの数日で壊滅。
 領主は燬峰王国に逃亡し、肥前方面軍はそのまま燬峰王国との緩衝地帯に侵攻した。
 これを受けて燬峰軍団はその迎撃に臨み、両軍で小競り合いが続く中で肥前方面軍が撤退を開始したという。

「外交的に、致命的な失敗だな」

 忠流の言う通りだ。
 虎熊宗国は燬峰王国と手打ちすることで肥前方面の安全を確保し、肥後へ侵攻した。
 そうだというのに自ら肥前の安定を崩している。
 燬峰王国を筆頭とする肥前衆は対虎熊宗国の大義名分を得た。
 一時期に悪化した龍鷹侯国との関係も修復の兆しがある。

「問題は虎嶼持弘が何を持って唐津侵攻を命じたかだ」

 虎嶼晴胤はあくまで虎熊軍団の部将だ。
 国の方針は当主である持弘が決める。だが、晴胤の発言権は絶大であり、肥前方面軍の撤退は彼が関わっていることは確実だった。

「だからこそ、福岡の情勢は知りたかったんだけどな」
「・・・・申し訳ありません」

 久兵衛が恐縮して頭を下げる。

「いや、本拠地が硬いのは当然だからな」

 先の虎熊・銀杏連合軍に対する龍鷹軍団の勝利は、緒戦の情報統制が勝因のひとつだ。
 その勝因への黒嵐衆の貢献度は絶大だ。
 その手法は本国である薩摩への敵忍び衆の侵入阻止である。

「何にせよ、虎熊軍団は動きませんな」

 直武が言った。
 佐賀城に集結している肥前衆は肥前を睨むために動けない。
 久留米にいる軍団も聖炎軍団の北上や肥前方面軍の増援。
 中津に帰還した軍団は解散しており、損害を癒している最中だ。

「うむ、高城川の戦いのように少数の増援はあるかもしれんが、万単位で動かすことはないだろう」

 利直も同意する。
 軍事的才能を持つ部将たちが同じ見解を示したことで、銀杏国遠征での兵数優勢は確実となった。

「虎熊軍団の動向は不気味だが、銀杏国遠征を諦めるほどではないな」
「むしろ好都合とも言えますな」

 猛攻も闘志を燃やしている。
 今回の戦いで銀杏軍団に勝機があるとすれば、忠流の首を取ることだ。
 圧倒的に劣勢でも総大将を討てば侵攻軍は瓦解する。
 このため、龍鷹軍団はいつもより本隊を多くし、黒嵐衆の守りも厚い。
 そうすると正面戦力が減少するが、虎熊軍団が動かないのであれば、正面戦力の優位も確保される。

「後はいかに早く落とすか、か」

 勝利はほぼ確実。
 残る問題は勝ち方と速度。
 龍鷹侯国にとって最も良い方法を採るため、忠流は目を閉じて考え込んだ。


「――――――――――――――――――――」
「「「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」」」」
「――――――――――――――――――――」
「「「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ワイワイ」」」」」
「――――――――――――――――――――」
「「「「「‥‥‥‥‥‥ワイワイワイワイワイ」」」」」
「―――――――――――――――――――?」
「「「「「ワイワイワイワイワイワイワイワイ」」」」」


「―――おい」

 黙考していた忠流は無視できないざわめきに目を開け、視界に飛び込んできた光景に思わず半眼で低い声を出した。

「なんで酒盛りしてんだ?」

 忠流が見た光景は、くのいちにお酌させながら酒に舌鼓を打つ重臣たち。
 主君が考えているのにその凶行は如何なものか。

「いえ、いつまで考えるか分からないので」

 しれっと言い放つ利直は用意させたつまみを口に含む。

「腹が減っては戦はできぬ、ですぞ」

 直武はそう言いながら酒をガバガバ飲む。

「大丈夫、周囲はしっかり固めておりますので」

 猛攻は嬉々として新しい酒の封を開けていた。

「「「・・・・・・・・・・・・・・・ジィ~」」」

 その背中を見つめる近衛の視線は意図的に無視している。

「じゃ、じゃあ、俺も―――」
「「「「いえ、我々のことを気にせず、殿は考えてください」」」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 食い気味に返され、忠流は口をへの字にして沈黙した。










前哨戦第一陣へ 龍鷹目次へ 前哨戦第三陣へ
Homeへ