第一戦「泰妙寺の変」/ 二



 虎熊宗国。
 筑前国福岡城を本拠に、筑前・筑後(生葉郡・山本郡・上妻郡・三井郡・八女郡)・豊前・肥前(美根郡・養父郡・基肄郡・佐賀郡)・長門・周防(都濃郡・佐波郡・吉敷郡)・石見(鹿足郡・美濃郡)対馬・壱岐を治める。
 西国九ヵ国にまたがる大国だった。
 その石高は一二〇万石を数え、領土を広げた龍鷹侯国は元より、燬峰王国と合わせても届かない農業生産基盤を持っている。
 さらに博多港を抑えることで大陸との交易を一手に引き受けており、巨万の富を有していた。
 宗国と言われる理由は、宗主家である虎嶼氏はいくつかの小国を束ねているからだ。
 だがしかし、実体は、他の国に養子を送り込み、国を内側から味方に変えていくスタイルであり、厳密に言えば一国なのだ。
 対馬や壱岐、豊前、石見、周防はそうだ。
 元々、長門一国だった虎嶼家は養子戦略で石見国、周防国を攻略。
 豊前国の手引きを受けて穂乃花帝国を強襲、瞬く間に領土を広げた。
 圧倒的な軍事力を背景に対馬、壱岐に養子を送り込んで領有化。
 そして、現在、虎熊宗国は筑後柳川、肥後隈本、豊後大分に養子を送り込んでいる。

 正史の戦国時代において、この養子戦略が最も有名なのは西国の雄・毛利家だ。
 毛利元就は次男・元春を吉川氏に、三男・隆景氏を小早川家に入嗣させ、安芸国を統一したのは有名だ。だが、さらに元就の戦略は続く。
 四男・元清は穂井田氏、五男・元秋は椙杜氏(後、毛利に復帰)、六男・元俱は出羽氏、七男・元政は天野氏、八男・元康は末次氏、九男・秀包は小早川氏、十男・就辰は二宮氏と、長男・隆元以外全ての男が養子に出された。

 虎嶼家はこの毛利家と同じ戦略で、北九州から西中国地方に広がる広大な領土を得たのだ。
 だが、虎熊軍団は小豪族連合軍であった毛利軍とは違い、中央集権が進んだ強力な軍団だった。
 現在、南九州の覇者・龍鷹軍団を相手に、真正面から撃破できる戦力は九州において虎熊軍団以外あり得ない。
 いや、虎熊軍団の主力を相手にすれば、如何に龍鷹軍団とは言え破れ去る可能性の方が高かった。
 虎熊軍団が誇る軍事体制・二虎六熊の一柱・島寺胤茂の討死。
 それは国を根底から揺るがしかねない大惨事だった。
 故に、虎熊宗国はその重い腰を上げる。
 鷹郷忠流は、知らぬ内にまさに虎の尾を踏んだのだった。





鷹郷忠流side

「―――粘るな、水俣城は」

 鵬雲三年九月四日、肥後国水俣城郊外。
 水俣城包囲軍本陣に、鷹郷忠流の姿があった。

「まあ、一度こちらの兵糧庫に奇襲があったので、困っていることは確かですがね」

 傍に立つ長井衛勝が言う。
 水俣城包囲軍の総大将は武藤晴教だったが、彼は式部卿という式部省の最高権力者だ。
 いろいろと忙しいため、兵部省は兵部大輔である長井衛勝に総大将を変更させたのだ。
 現在、水俣城は南東に長井衛勝の手勢一五〇〇が、北西に旗本衆五〇〇、南に薩摩衆一〇〇〇がおり、合計三〇〇〇で緩やかに包囲している。
 この半年で数回ほど小競り合いが起きており、両軍に数十名の死傷者を出していた。しかし、状況に変化はない。
 もちろん、聖炎軍団本隊が救援に出る、ということもなかった。

「攻めますか?」

 今日、忠流が視察に来たのは、水俣城の扱いを決めるためだ。
 稲刈りが始まっているが、やはり今回は不作のようで、戦略の修正が必要になったのだ。

「聖炎軍団はここまで待っても来ない。いや、来られない、か・・・・」

 聖炎国の穀倉地帯は雲仙岳の真東に位置する。
 今回の天災で最も打撃を受けた地域だ。

「衛勝、幾日で落とせる?」
「・・・・正直、未知数です」

 水俣城は聖炎国が対龍鷹侯国用に整備された城だ。
 過去、幾度も龍鷹軍団に囲まれているが、陥落はおろか城門すら突破されていない。
 主力を誘引する陽動だったとはいえ、隙あらば落とす気構えで臨んでいた龍鷹軍団にとって、水俣城は壁として立ちはだかっていた。
 佐敷城を落としてはいるが、あの城は所詮、聖炎軍団の水俣城後詰軍が駐屯するための城である。

「ただ、武藤の鉄砲隊が必要かと」
「武藤、か・・・・」

 内乱において、長井勢と共に先頭を駆けた武藤勢は内乱後の一年で人数は回復していた。しかし、龍鷹軍団最強鉄砲隊の再建はまだ途上である。

「訓練だけでは精鋭になれません。適度に実戦を経験させることで」
「・・・・同時にあれも試してみるか」

 忠流は現在整備中である部隊の使用を検討し始めた。
 もう、心は水俣城を攻略する方向に動いている。

「誰かある!」
「はっ」

 すぐに小姓の御武幸盛が飛んできた。

「鹿児島に使いを出せ。鹿児島にて訓練中の武藤鉄砲隊を呼び寄せよ」
「・・・・鹿児島にいる武藤鉄砲隊は一〇〇ですが?」
「・・・・足軽がいるな。旗本衆から護衛に二〇〇つけろ」
「分かりました」

 幸盛は忠流に一礼し、さらに衛勝にも一礼した後、早馬のもとへと駆けていく。

「ん?」

 衛勝が急に振り返った。
 その視線の先には水俣城北方に位置する秋葉神社に布陣する旗本衆三〇〇がいる。

「どうした?」

 同じく視線を向けた忠流は首を傾げた。

「敵襲だ!」
「えぇ!?」

 根拠が一切語られない衛勝の声から鐘が鳴る。
 全軍が一斉に動き出し、その答えを知るために長井勢先鋒・戸沢隊から物見が出た。

「え? え?」

 忠流を放置して事態はどんどん進む。
 旗本衆の旗が大きく揺れ動き、紺地とは違う白地の旗が混じり出した。

「申し上げます!」

 本陣からも戦いが見て取れるようになった時、伝令が駆け込んでくる。

「背後より聖炎軍団が急襲!」
「海を渡り、山越えしてきたか!?」

 聖炎国の勢力圏から水俣城に来るには、海を渡るしかない。
 佐敷城、津奈木城とふたつの警戒線があるとは言え、基本は陸路だ。
 制海権は恒久的に維持することが難しく、聖炎水軍を壊滅させてからはほとんど水俣城周辺には展開させていなかった。
 天草諸島が燬峰王国の領地となっていることも、警戒線の甘さに直結している。

「耐えられんな」

 前からの攻撃に対する陣を敷いていただけに、背後からの攻撃は効果的すぎた。
 事実、旗本衆は簡単に崩れ、白地の旗を翻した軍勢は水俣城向けて進軍してくる。

「入城する気か?」

 見えてはいるが、ここからでは距離が空きすぎており、戦闘に参加できない。

「本陣を動かしますぞ、殿。よろしいですな?」

 衛勝の有無を言わせない言葉に忠流は頷くしかなかった。

「近衛はどうします?」

 戻ってきていた幸盛の問いには、即答を避ける。
 近衛衆五〇〇は少し離れた場所に布陣していた。
 長井勢本陣には幸盛、郁など三〇名しかいない。

「すごいもんだな、歴戦の兵は」
「は?」

 自らの問いに対する答えではなく、感嘆の息が返ってきた幸盛は間抜けな声を上げた。

「空気の流れがわずかに変わったことに気づく、か・・・・」

 忠流は床几に座ったまま腕を組む。

「敵はどのくらいだと思う?」
「・・・・一〇〇〇を超えないのでは?」

 今度は自分の問いに間接的に影響するからか、少し遅いながらも反応した。
 ただ、内容がはっきりしないのは、幸盛の戦歴も忠流と同じだからだ。
 海を越えてきたならばそう多くはないだろう。だがしかし、三〇〇をあっという間に蹴散らしたのだから、それ以下はないだろう、という予想しかできない。
 郁も同じなのか、後ろで首をひねっていた。

「―――見たところ、敵は約五〇〇。将は名島景綱殿のご嫡男・重綱殿っすよ」
「「ん?」」

 ふたりのそばに大柄な少年が立っていた。

「旗本衆を率いた福原実康様、お討ち死に。現在は副将の指揮で後退しているとのことです」

 少年の背には《茶褐色に黒の丸柊》の旗指物がある。

「父上がその兵力を吸収して後詰軍と対峙してるっすよ」

 彼以外にも同じ旗指物をつけた者が二〇名ほど残っていた。

「お前は? いや、長井の麾下とはわかるが・・・・」

 忠流は大柄で、自信に満ちた目の強さが特徴的な少年を見上げる。

「長井弥太郎っす」
「弥太郎って」

 忠流の視線が前方を駆けていく軍勢に向く。
 その軍勢の大将は長井弥太郎衛勝だ。

「あ・・・・」

 幸盛が小さく声を上げ、忠流の耳に顔を寄せる。

「長井兵部大輔殿のご嫡男です」
「あー、いたのか、こんなでっかい息子が」

 少し幼げだが、十七、八歳だろう。
 衛勝は三十半ばなので、早くにできたと言えるだろう。

「いえ、確か一二才です」
「マジか!?」

「年下かよ!?」と体格にショックを受けた。

「まだ、字(アザナ)がないんで・・・・。通称ですんません、ややこしいっすよね」

 大きな体を縮こませる。

「元服していないんですが、とりあえず、戦場だけでも見学に来い、と父上が」
「にしては迷わず兵数を予想したな」
「その辺りはもう叩き込まれてるっすよ」

 弥太郎は遠い目をした。
 文字通り、叩き込まれたのだろう。

「話しているとこ割り込むけど・・・・」

 郁が入ってきた。

「もう少しで近衛衆先鋒が到着するわ。さっさとどうするか決めれば?」
「ふむ」

 現状を整理すると、名島勢五〇〇によって緩包囲に穴が空いた。

(いや、違う・・・・)

 水俣城周辺にくくればそれだけだが、軍事作戦には必ず戦略目的が存在する。

(なぜ、水俣城なのか・・・・)

 もちろん、包囲されているからだ。
 だが、包囲網を崩しても、ただの延命措置にしかならない。

(うー、それが正解でもいいけど・・・・)

 何か納得がいかない。
 それだけのために、遠路はるばるやってきたというのか。
 何よりこんなにも難しい用兵が可能ならばもっと早く、そして簡単に佐敷城に押し寄せるなりできたはずだ。

(水俣城の後詰が必要な戦略目的は―――っ!? まさか!?)

「伝令!」

 忠流は立ち上がり、早馬を呼ぶ。

「出水城に兵を出すように命じろ」

 まずは水俣城の手当。

「佐敷城に籠城準備、津奈木城へは軍勢の受け入れ準備をするように」
「・・・・それは?」

 幸盛が首を傾げた。
 郁も同様だ。

「今回の聖炎軍団の作戦目的、それは―――」

 北東を睨みつけた。

「佐敷城の奪還だ!」






火雲珠希side

「―――藤川勢、佐敷城へ撤退を開始!」

 忠流が聖炎軍団の戦略目的を看破した時、すでに聖炎軍団佐敷城攻略軍本隊は佐敷城に迫っていた。
 八代勢を主力とする二五〇〇は佐敷城守備隊五〇〇を指揮する藤川が撤退していくのを見送る。

「ふう・・・・計画通り」

 八代勢本陣で、珠希は胸を撫で下ろした。

「まさかこんな方法で退けるとは・・・・」

 唖然とした呟きを漏らしたのは、この軍勢を指揮する名島景綱だ。

「相手の大将がやったことをやったまでだよ」

 珠希は立ち上がって命じる。

「佐敷川を渡り、包囲。すべて手はず通りにするように」
「本当に行かれるので?」
「うん、ボクは本気で佐敷を落とすよ。義兄とは違って、ね」

 陣羽織を翻し、自分が指揮する軍勢へと戻っていく珠希にため息をつき、景綱は前進を命じた。

 忠流が信頼し、佐敷城を任された藤川晴宗が容易に侵行を許したわけ。
 それはこれまで聖炎軍団が採ってきた戦略を採らなかったからにほかならない。
 名島景綱が如何に名将であろうとも、歴戦の猛者ゆえの価値観がある。
 そんな価値観は同じ文化圏において共通することが多く、物事を同じ視点で捉えがちだった。
 常識に囚われない忠流が佐敷川の戦いに見せた戦略はその隙を突いた。
 今度は逆に、聖炎軍団がそれを突いたのだ。
 その戦略を立てたのが、珠希である。

「もう、伝わったかな」

 津奈木城に佐敷城が攻められたことはすでに伝わっているだろう。だが、対応する軍勢に伝わっているかは五分五分。
 その前に、珠希は目的地に到達する必要があった。

「今度は策も何もない。ただの速度勝負だね」

 聖炎軍団が龍鷹軍団を奇襲した方法は、新行路の走破だ。
 水俣城に到達した名島重綱は沿岸部を船で移動し、山越えして攻め込んだ。
 八代勢本隊も同じことをしたのだ。
 八代城から佐敷城へ至るには、肥後田浦を経由する海沿いを進むのが一般的だ。
 実際に佐敷城の戦いでは聖炎軍団はその進路を取った。

「海がダメなら山なんだよね」

 八代を発した名島勢と珠希直卒部隊は人吉街道(現国道219号)を通り、吉見にて西に方向転換して山間の道(現県道60号)を進む。
 そうすれば、佐敷城東方に出る。
 この地域はちょうど藤川が直轄する領土と佐敷衆を分かつ境界に近い。
 珠希はここで佐敷衆を召集した。
 聖炎軍団が真北より攻めてくることを大前提に防衛計画を立てていた藤川は、戦力の大部分を肥後田浦方面に投入していた。
 その結果、藤川勢は佐敷衆の大半が聖炎軍団についたことから、野戦の不利を悟って撤退したのだ。
 山間部の小戦にて時間を稼ぐ戦略は崩壊し、藤川は補修も十分にしていない佐敷城に篭城することとなった。
 佐敷城を落とすために必要なことは、佐敷城に対する龍鷹軍団の応援を遅らせること。
 そのために、佐敷城に対して奇襲を仕掛けた。そして、もうひとつ、珠希は龍鷹軍団に対して戦略的奇襲を計画していた。

「前方に龍鷹軍団!」

 津奈木城周辺にて、龍鷹軍団発見の報告が入る。
 どうやらほぼ同数の兵力らしい。

「このまま突撃!」

 情け容赦なく、騎兵主体の珠希勢は、歩兵中心の龍鷹軍団へと襲いかかった。

「敵中軍に『昇龍』の馬印!」
「なっ!? 鷹郷侍従の馬印!?」

 物見の報告に珠希は動揺する。だが、それは敵も一緒だということは精強でなる近衛衆の先鋒が容易に崩れたことで分かった。

「ええい、行くよ!」

 珠希は背中から矢を取り、弓に番える。

「全軍突撃!」

 見過ごせない問題を前に、前に進んだことが勝敗を分けた。



「前方の軍勢は敵軍! 聖炎軍団です!」
「なんだと!?」

 本陣に報告が届くと同時に戦闘が始まった。
 行軍隊列のまま戦闘に巻き込まれた近衛衆の戦列はあっという間に崩れ、近衛ひとりひとりの武勇で支えられる展開となる。

「まずい・・・・」

 元々、旗本衆と名乗っていた頃から近衛衆は集団戦に向かない。
 忠流は軍事改革の中で、集団戦を行う新生旗本衆と従来の旗本衆を中心とした近衛衆を組織した。
 これは数百を一隊とした旗本衆数個と近衛衆を率いて戦場に出ることを目的としていた。
 旗本衆で支え、崩れた場所または攻めどころに近衛衆を突入させることで戦おうというのだ。

(だけど・・・・ここに旗本衆はいない!)

 本来は戦場見学だったので、兵糧節約のために旗本衆を連れてきていない。
 一〇〇名ほどの足軽を連れてはいるが、主力は一騎当千の近衛だ。

(おまけに・・・・)

 ここに、戦場指揮官はいないのだ。
 前線の全面崩壊を支えている中に加納猛政がいるが、とてもではないが、戦闘離脱はできないだろう。
 忠流が自身で采配を振るうしかない。

「う・・・・」
「忠流様、ここは後退を・・・・ッ」

 幸盛が焦った表情で進言した。
 忠流の指揮が未知数である以上、ここは冒険せずに後退して態勢を立て直せ、というのだろう。

「薩摩侍従ぅ! 覚悟ぉっ!」

 数名の敵兵が近衛衆を突破してきて本陣に殺到した。
 返り血を浴びた凄惨な姿に忠流を守る足軽の腰が引ける。

「くっ」

 幸盛が立ち上がり、霊術を発動させた。
 それが武者を跳ね飛ばし、駆けつけた近衛たちが止めを刺す。

「忠流様!」
「・・・・くそっ」

(こんな屈辱、初めてだ!)

 本陣に攻め込まれたことは幾度もあった。だがしかし、それは覚悟の上であり、圧倒的に劣勢であったこともある。
 それが今回は違う。
 遭遇戦という、互角な状況。
 それなのに、忠流は急転する状況についていけなかった。

「俺は・・・・」

 大名として、戦略家としての自信はあった。
 だが、戦国大名とは常日頃から戦場に近い存在だ。
 如何に戦略が巧みであろうと、戦術がなければ勝てない。
 戦術が正しかろうと、敵に対応する術がなければ勝てない。
 最終的に必要になるのは、最前線で采配を振るう能力。

(俺にはそれがない・・・・っ)

 そう、軍を率いるものとしてもっとも必要な技術――戦闘指揮能力。
 それが欠如していることは、この期に及んで考え込んだことで露呈した。
 結果、忠流本陣に、先を上回る攻撃力が浴びせられる。

「―――覚悟してよね!」

 女の声に、ハッと顔を上げた忠流は駆け寄った近衛を軽々と超える火矢を見た。
 それは幸盛が張った咄嗟の防壁を紙くずのように焼き尽くし、本陣真っ只中に着弾する。

「あ、う・・・・」

 猛烈な熱気に瞬く間に意識が持って行かれた。






 鷹郷忠流と火雲珠希の戦いは、一方的展開となって珠希が勝利した。
 総大将である忠流が意識を失った龍鷹軍団は四散。
 津奈木城もその敗報を受け、城から脱出する。
 結果、津奈木城を聖炎軍団が奪還した。
 忠流や幸盛は寸前で駆けつけた長井弥太郎によって救出され、水俣城へと後退する。
 情勢の急変を悟った長井衛勝は忠流を迎え入れると水俣城包囲を南方に下げた。
 名島重綱率いる五〇〇はできた道を通って津奈木城へと移動する。
 戦闘自体は小規模だったが、両国の戦略に与えた影響は大きかった。

 龍鷹侯国は、侯王自身が負傷しただけでなく、津奈木城の喪失と水俣城包囲の解除という軍事的・政治的敗北を喫する。
 聖炎軍団は手をこまねいていた水俣城救援に望みを繋いだだけでなく、津奈木城を奪還して佐敷城攻略の足がかりを形成した。

 戦略家・鷹郷忠流に対して、戦略的に勝利したことは大きい。
 初陣というのに見事に兵を指揮してみせた火雲珠希の名声は否応がなく上がったのだった。










第一戦第一陣へ 龍鷹目次へ 第一戦第三陣へ
Homeへ