第一戦「泰妙寺の変」/ 一
「―――父上、長かったよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 肥後国隈本城。 西海道一の堅城であり、筑紫島の西回りにおける交通の要衝である。 「安心してくれるかな」 天気は雨。 秋の長雨に突入した九州地方は黒い雨を連日大地に注いでいた。 (この雨が全てを洗い流してくれればいいのに・・・・) 黒い雨の原因――火山灰が肥後の空を覆い始めて半年。 暗雲は静かに戦雲へと変わっている。 「珠希様、そろそろ・・・・」 障子の向こうから側近の声がした。 向こう側では武具がすれる音がしており、呼んでいた兵たちが集結していることを示している。 「分かったよ」 布団から体を起こして虚ろな瞳で刀を見ている父を、珠希は見遣った。そして、立ち上がって一礼すると勢いよく障子を開け放つ。 「さあ、秘密兵器の出番だよ」 珠希の言葉に集った兵たちは鯨波の声で答えた。 遭遇戦scene 「―――佐敷城、か・・・・」 藤川晴崇は今日から住むことになる城を見上げた。 龍鷹軍団と聖炎軍団が干戈交えた佐敷川を見下ろし、自分自身も戦火に塗れたこの城は、現時点では龍鷹軍団の守備隊が置かれている。 その城代は出水城将・村林信茂だった。 国境を守るに申し分ない人選だったが、村林勢は内乱の主力決戦で減退している。さらに副将格としてつけられた大久保康成、堀尾景照の軍勢も疲弊していた。 このような状態で数ヶ月もの間、聖炎国を臨んでいた三将は帰国するなり、加増が決まっている。 特に主将を務めた村林は出水城将から城主へと昇格が決定していた。 「殿、迎えの兵が出ておりますぞ」 脇を固めていた側近の言葉に晴崇は佐敷城の大手門を見遣る。 そこには確かに、≪紺地に黄の纏龍≫の軍旗を掲げた軍勢がじっと佇んでいた。 「村林信茂殿、大久保康成殿、堀尾景照殿、お疲れ様でした」 青年武将に位置する晴崇は十歳近く年上の三人を前に下馬する。 「うむ、任せたぞ」 三人を代表し、村林がそう言うと、彼はきっと前を睨むなり大音声で宣言した。 「これより、薩摩へ帰国する!」 「「「オオウ!!!」」」 村林勢七〇〇、大久保勢四〇〇、堀尾勢四〇〇が一斉に答え、歩き出す。 その両脇にはこれから佐敷地域を防衛する藤林勢七〇〇が槍を突き立てて整列していた。 疲れながらも充実した表情で最前線を後にする兵士と、覚悟を決めた精悍な表情を浮かべる兵士たちの視線が交差する。 それは想いを託す瞬間だった。 そして、佐敷川の戦いにおける戦後処理が動き始めた瞬間でもある。 「さてさて・・・・たった一三〇〇でこの地域を防衛しろ、なんて、無茶にもほどがありますよ、侯王」 そう言って肩を竦める晴崇の口元には、はっきりとした笑みが浮かんでいた。 藤川晴崇。 御年三〇歳となる青年は、内乱を機に出世した武将である。 薩摩衆の一人として三〇〇〇石を領していたが、内乱では藤丸方に付いた。 一族郎党を引き連れて宮崎に到達した晴崇は、足軽戦力として義勇兵を受け持ち、さらには傭兵衆を取り込んで奮戦。 人心掌握術と交渉力に才を示したために内乱後は民部省の役人として検地などの指揮を執った。 この時の石高が五〇〇〇石。 佐敷川の戦い勃発を機に、かつて率いた傭兵衆を再びまとめ三〇〇にて佐敷川の戦い本戦に参戦した。 大混乱に陥った軍勢にて素早く士分をとりまとめ、兵たちを殴り倒して大人しくすることで部隊の損害を最小限に抑えたこと。 従流の下知にいち早く呼応し、聖炎軍団を撃ち崩したことで一〇〇〇石を加増されて六〇〇〇石となる。 その後、津奈木城の戦力に数えられ、三ヶ月の間、戦力を維持すると共に領民を慰撫して一揆誘発を抑え続けた功績があった。 このように文武両道の名将である晴崇ではあるが、元々が下級武士であるために重臣には数えられないという悲しい事実がある。 そこで、忠流は彼を出世させるために、高い人心掌握能力を必要とする佐敷地域を任せることにしたのだ。 国家事業であるため、民部省の役人から昇格させ、民部少輔となった晴崇は、役職補正にて一万一〇〇〇石を領する大名へと躍り出た。 しかし、いきなり石高が倍になったことにて様々な問題が噴出することになる。 「佐敷衆は未だ領内に逼塞しているのか?」 晴崇は佐敷城に入城するなり、それまで聖炎国佐敷城主が領有していた地域の検地に向かわせた。 どれほどの石高となるか分からないが、これは鷹郷家の蔵入地となり、その管理を晴崇がするということになる。 晴崇はあくまで佐敷城の城将であり、城主ではないのだ。 城将とは半永久的に、その城の守備を任された武将のことを言う。 城代と違うのは、その守り方に一定の自由を与えられている点にある。しかし、その城が確保している地域の収入を自分のものにする権利はなく、あくまで守備のために置かれた役職だ。 つまり、佐敷城に上がる収入の大半は鷹郷家に収められるものだ。 「はっ、先程、書状を持った者たちを各館へと向かわせました。如何に田舎武将と言えど、聖炎国の薫陶を受けた者たちです。使者を殺すことはありますまい」 晴崇の言葉に応えたのは、内乱でともに戦った傭兵だ。 晴崇は既知の武将を、今回の加増を機に登用した。 倍近い加増によって、藤川家は豊かになった。しかし、それを運用するためには人手が要り、また財力に応じた兵力を維持するためにも士分が必要だった。 よって、傭兵たちを登用することで、その穴を埋めたのである。 このような方法は譜代の家臣たちの神経を逆撫でするが、晴崇は仕方ない処置として断行した。 どちらにしろ、戦力がなければ滅びるだけである。 「殿、検地よりも早く城の修復を急ぐべきではありませんか?」 佐敷城の主郭部分の損傷は軽微だが、大手門付近の外郭はひどい有様である。 佐敷川の戦いで行われた攻防戦によって壊れたままなのだ。 「いや、城の修復は後回しだ。領民に対し、戦争は終わったことを示さねばならない」 「「―――っ!?」」 ふたりを筆頭にした譜代、傭兵の重臣たちが驚きを露わにした。 「戦争が・・・・」 「終わった・・・・?」 「ああ、終わったんだよ、佐敷川の戦いはな」 「―――まず、私を信じて集まってくれた諸将に礼を言う」 「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」 鵬雲三年二月四日、肥後国葦北郡に建つとある寺院に、佐敷衆とひとまとめにされる国人衆の代表たちが集まっていた。 当主自ら来た者、一門衆を送ってきた者、重臣を送ってきた者と集結した者は様々の役職なれど、共通していることは、未だ誰ひとり龍鷹侯国に臣従していない、ということだ。 対する龍鷹侯国の代表は藤川晴崇自身だった。 場所も佐敷川の北岸であり、佐敷城を臨んでいるとは言え、すぐに軍勢が来る場所ではない。また、彼が引き連れた兵力は十数名であり、佐敷衆全員が決起した場合、容易に討ち取ることができるだろう。 大胆不敵。 この一言に尽きた。 「さて、ここに出席していると言うことは、こちらからの書状を読んで頂けていると思うが、何か質問はおありか?」 「ならば・・・・」 偉丈夫が腕組みから手を上げ、自身の所属を名乗る。 「本領安堵とあるが、当家は龍鷹侯国に臣従するつもりはない」 それは徹底抗戦の宣言だった。 (だが、甘い。本当に徹底抗戦ならばそもそもこの会議に来ない) 会議に来た理由は龍鷹侯国側に譲歩を求めることと、他家の動向を確かめるためだろう。 ならば、その徹底抗戦は強固なものではなく、現状維持に近い判断と言うことだ。 「・・・・本領安堵とはいえ、検地はするのでしょう?」 先の一言を言って座った偉丈夫を尻目に老境の縁にある武将が言った。 先の偉丈夫よりはまだ友好的と言える。 「ええ、検地はこちらの基準に沿って行う。そうでなければ、軍役を課すことができないのでな」 この言葉に諸将はざわめいた。 彼らが思っていた本領安堵とは領土的絶対不可侵だったからだ。 それは言わば、佐敷衆を家臣化ではなく、あくまで龍鷹侯国の武威に従う豪族という意味だ。 しかし、それが、支配する地域は変わらないが、その石高調査を行うという上から目線であった事実に打ちのめされたのだ。 「そんなこと許可できるか! 例え小身と言えど我々には矜恃がある! 戦わずに従えるものか!」 ひとりが立ち上がってそう言うと、他の者も同調するように声を発した。だがしかし、その威勢も晴崇の言葉で沈黙する。 「戦わずに? あなた方は戦ったのではないのか?」 「「「「「―――っ!?」」」」」 痛烈な一言に、彼らは黙り込んだ。 佐敷衆はこれまで城代だった村林勢を出し抜き、佐敷城に入城した者が多い。そして、あの凄惨な戦いで一族郎党を多く失っていた。 言わば、完膚無きまでに敗北していたのだ。 「藤川家はすでに太田家の所領を回収した。このまま兵を進め、あなた方の領土に攻め込んでもいいのだが?」 「「「「「―――っ!?」」」」」 再び衝撃が走った。そして、佐敷衆は再び勘違いに気が付いた。 この会議は龍鷹侯国にとって、佐敷衆を慰撫するためのものではなく、臣従するかしないかを選択する恫喝の場所だったのだ。 龍鷹軍団にとって、佐敷衆など真正面から踏み潰す価値もない戦力だと宣言されたのだ。 事実、佐敷川の戦いで消耗した戦力では佐敷城に展開する龍鷹軍団と真正面から戦うことができない。 また、盟主であった太田家を失ったことで、佐敷衆は連合することができず、各個撃破される。 それは確かに戦う前から負けている状態と言える。 「佐敷川の戦いで敗北したあなた方は、領土を焦土に化してまで戦い続ける価値がありますか?」 それは、そこまでして聖炎国に忠誠を示す価値があるのか、という問いだ。 「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」 あれから四ヶ月。 龍鷹軍団の進軍は止まっていた。 「この四ヶ月、佐敷城に籠もっていたのは二〇〇〇。津奈木城に一五〇〇が展開していたとはいえ、五〇〇〇ほどでも持ってこれば、廃城寸前である佐敷城を落とすことは容易だったはず」 「何故、聖炎軍団は千載一遇の機会を利用しないのか」と続けた晴崇は諸将を見回す。 彼らの中には蒼褪めた者たちもいた。 皆、分かっているのだ。 両軍併せて一万を超える兵を暴走させる存在。 小豪族の矜恃でどうにかできる存在ではなく、強大な軍事国家と言えども、難敵であることに間違いない。 だからこそ、晴崇は龍鷹侯国の立場を明確するために宣言した。 「聖炎軍団は佐敷川の惨状を生み出した『鈴の音』を恐れている。そして、我々龍鷹軍団は彼女を打破するために行動する」 この宣言にはふたつの意味がある。 それは聖炎国を弱腰と断じ、龍鷹侯国の勇気を示すもの。 そして、もうひとつは上のことを裏付けるため、『鈴の音』の性別が女と判明していることを知らせたのだ。 「破滅を選ぶかどうかはあなた方次第だ。だが、これだけは言わせて頂く」 晴崇は立ち上がり、彼らを睥睨する。 「我々の邪魔はするな」 それは、龍鷹侯国が佐敷衆を歯牙にも掛けていない宣言だった。 「―――ふぅ・・・・」 鵬雲三年八月二日、薩摩国鹿児島城。 暗い報せばかりに、鷹郷藤次郎忠流はそっとため息をついていた。 (どうしてこうなった・・・・) 自分の戦略は多少の誤差はあれど、予想通りの結果をもたらしたはずなのだ。 本日、各官省の報告が天守の大広間で行われていた。 内乱から一年が経ったが、佐敷川の戦いという大きな戦争を経験した龍鷹軍団の傷はまだ癒えていない。しかし、侯王・鷹郷侍従忠流が行った様々の施策が効果を発揮しており、龍鷹侯国は経済的に復活していた。 特に大隅国の石高が上昇し、龍鷹侯国は内乱終結以後に得た領土と合わせて約七四万石七〇〇〇石へと成長していた。 多少無理していた動員力も、元の平均動員力二万六〇〇〇へと戻っている。 これに交易で得ている財力から摘出される旗本衆の足軽を加えれば、通常動員力は三万ほどになる。 これは佐敷川の戦いにおける動員数を超えていた。そして、日向国の情勢が落ち着いている以上、龍鷹軍団の過半を肥後戦線に投入することが可能だった。 さらに肥前戦線が燬峰王国の勝利に終わったことで、虎熊軍団は大軍を派遣することができない。 龍鷹軍団が佐敷川を越え、隈本城に攻め寄せる絶好の機会だった。 「ほぼ間違いなく、今年は不作になる」 民部卿・御武昌盛の発言に、各武将たちは渋い顔をする。 「日照時間が足りぬため、稲の生長が鈍いほか、度重なる遠征にて備蓄も食い潰しておる」 元々、薩摩国、大隅国は農業に適した土地ではなかった。 このため、あらゆる手段で食糧確保をしている龍鷹侯国だが、さすがに度重なった軍役には耐えられなかったのだ。 「今年中、できれば来年の収穫までは軍を休めるべきだ」 民部省の判断は、忠流が進めた聖炎国短期攻略戦略の崩壊を意味していた。 「輸入でどうにかならないのか?」 忠流の気持ちを代弁するように、陸軍卿である鳴海直武が発言する。 「日々を生活する分の不足分は確保できる。だがしかし、糧秣となれば話は別だ」 龍鷹軍団は最初の三日分は自己負担だが、それ以上の遠征となると供給性となる。 次に待つ戦が隈本城攻略戦となるならば、それは数ヶ月単位となる。 それだけの期間、万単位の兵力を維持するのは大変だった。 「一地域への限定的出兵ならばなんとか耐えられる程度、が限界だな」 昌盛の言葉に諸将は唸りを上げて黙り込む。 「となると、水俣戦線か・・・・」 直武の呟きに、再び唸りが起こった。 水俣城は佐敷川の戦いにおいて包囲し、現在も緩やかな包囲網下に置かれた聖炎国領である。 式部卿・武藤晴教率いる水俣城包囲軍の重圧にも屈さず、望み薄となっていく本国の応援を待ち続けていた。 「水俣城は多く見積もっても一〇〇〇。三〇〇〇ほどを出し、包囲軍と共に力攻めにすれば落とせないこともないな」 直武は同意を求めるように治部卿・鹿屋利直を見遣る。 「うむ、戦力が回復した以上、遠慮する必要もない。次にけちるのは兵糧じゃ」 歴戦の強者が同意したことで、直武は忠流に向き直った。 「兵糧不足は聖炎国も同じこと。これ以上、水俣城は囮になりますまい」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 忠流の戦略は水俣城救援に出た聖炎軍団主力と決戦を行うことで、著しく聖炎国の国力を減退させ、水俣城を自落させようというものだ。 人吉城で行った作戦を水俣城にて行うつもりだったが、今度も失敗した。 「橘次」 「は、はい」 不機嫌を隠そうとしない兄の声に、鷹郷橘次郎従流はビクリと背筋を伸ばす。 忠流はそんな弟を見ても態度を改めず、脇息に体重を預けたまま低い声――と言っても、女のように高いのだが――で言った。 「どうしてこうなった?」 不作の原因は燬峰王国の霊峰・雲仙岳の噴火である。 それは自然災害であるが、そうではない可能性が報告されていたのだ。 「―――それは私が説明した方がいい?」 ビクビクする従流の隣に座っていた燬羅結羽が発言した。 それに忠流は視線だけ彼女に向けるだけで応える。 「では、説明しましょうか」 一国の姫に対する態度ではなかったが、結羽は気にせず話を進めることにした。 「まずは、何と言っても我が国が不覚を取ったことが始まりです」 沖田畷の戦いにおいて、燬峰王国は温泉神社に駐屯していた兵力、神官などを根こそぎ引き抜いて戦いに臨んだ。 これは温泉神社の防衛力を著しく減退させる。 結果、沖田畷の戦いに勝利した後、温泉神社は何者かに襲われて壊滅。 鎮めていた存在がなくなった瞬間、活火山である雲仙普賢岳が噴火したのだ。 日本列島上空には偏西風が流れており、上空ほど空気は西から東に流れる。 この風に乗った火山灰などが空を覆い、日の光を弱め、降り注いでは土壌を覆う。 結果、西海道全ての国々が不作になるという天災となった。 燬峰王国としては虎熊宗国の反攻作戦を延期させることができ、地盤固めに専念することができる。 「生き残りがいないので、『鈴の音』かどうかは分かりません」 「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」 淡々とした報告と、『鈴の音』の言葉に諸将は凍りついた。 「一国の神域を汚し、神を目覚めさせる所行ができるとするならば・・・・」 「まるで神ではないか」 おののく諸将に忠流は脇息に肘をついたまま告げる。 「おいこら、今さら神に驚くか?」 忠流の視線は自分の隣でややつまらなさそうに座っていた少女に向けられた。 『『『あ・・・・』』』 “霧島の巫女”・紗姫。 龍鷹侯国に伝わる神装・<龍鷹>の化身であり、半人半神である。 「あー、軍議はこれで終わりだ。兵を動かせなくても、やりようはある」 すくっと忠流は立ち上がった。 最近は体の調子もいいようだ。 「調略、ですか?」 「ああ」 日向方面軍総司令官である絢瀬晴政の発言に、忠流は力強く頷いた。 晴政は日向衆の切り崩しも行っており、兵を動かさずとも勢力を拡大する方法は知っている。 「しかし、聖炎国相手に・・・・」 「佐敷衆が揺らいだ。つまり、国人衆は所詮、国人衆と言うことだ」 領土への執着心。 これが国人衆の弱点である。 龍鷹侯国は忠流の代になって内乱の爪痕を癒すために国替えなどを行い、さらに兵の徴募方法を変えたために、この国人衆意識が薄らいでいた。 「終いだ、終い。解散!」 パンパンと手を叩き、忠流は大広間を後にする。 本当は詳しい経理報告があったのだが、それは従流に押しつけた。 |