普通科統合演劇
好スタートを切った一日目に続き、覇・烽旗祭は二日目も午前11時にはすでに熱狂に包まれていた。 昨日の舞台や特別会場は部活が占拠していたが、今日からは自由参加のグループやクラスの発表などがその席を占める。 そのプログラムの中に普通科1年統合演劇――「決戦」が入っていた。 1−Aの発表は第3体育館を改造して作られた舞台で行われる。 観客席に一階席はなく、全てが二階席。三階席にも一部だけ設けられていた。 「―――これより、普通科1年統合演劇――『決戦』を開始します。それに当たり、本作のシナリオ担当及び総監督から挨拶があります」 感情を排除した機械音を思わせる声が紹介する。 「ども〜っ。ただいまご紹介に与りましたシナリオ担当及び総監督ですっ。突然ですが売り込みさせていただきますッ! 我が文芸部にてこの『決戦』の原作が販売されていますッ! 今作に入れられなかったエピソードを詰め込まれた『決戦T』の他、大陸のその後を描く『決戦U〜第三勢力〜』も同時発売しておりま―――ンギョ〜ッ!?」 舞台の端でマイクを振りかざしていた少女が突然横へと弾け飛んだ。 「イッタ〜。委員長、何するの!?」 「氏名権侵害」 何故か観客に聞こえるようにマイクを持って杪が出てくる。 「な、何それ!?」 「自己の氏名の専用を他から害せられない権利」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フッ。今更そんなこと言われても知らないニャー」 倒れたまま視線を逸らす総監督。 「・・・・武器」 そんな態度を見た杪は後ろ手に武器を要請。 すぐにその武器が手渡された。 「ヒッ、そ、それは―――っ!?」 チラリと武器を見た総監督は顔面を蒼白にして這い蹲ったまま逃れようとする。 「そ、それだけはヤメテッ! 全国の物書きさんの恐怖アイテム&編集者さんの必殺アイテム―――『〆切り』だけはッッッ!!!!」 悲痛な声が客席にも響いた。 バタバタと逃げようとする総監督の両足を杪の後ろから出てきた生徒が引きずっていく。そして、舞台裏で響く断末魔。 「―――ヒ、ヒィィィィッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』 「―――それでは〜、始まり始まり〜」 再び出てきた杪は何故か頬に朱い液体――返り血!?――をつけたまま無表情で開幕を告げた。 演劇『決戦』scene 谷間を数百の軍勢が通過していく。 それを崖の上から見下ろす少年はこの地を鎮守家に任された熾条家当主――熾条一哉だ。 鎮守家は近隣の大名家を同盟にて支配し、連合国として大陸にその名を轟かせている。熾条家はその東方を任される重臣中の重臣だ。 前任だった彼の父は東方の大平原を支配する帝国軍の大軍と差し違える形で戦死ししている。 「―――申し上げます。物見の報告ではこの先の開けた地で小休憩すると告知されているらしいです」 「なるほど。確かに兵たちの気が抜けている」 一哉は部下を下がらせると弓を構えた。 その場にいる兵士の半数がそれに倣う。 「目標帝国軍。一射後、駆け下り白兵戦とするっ。―――者ども、放てェッ!」 矢が弓弦を弾き、谷底へと落下していった。 群雄割拠。 大陸の地にさまざまな国が犇めき、各々の戦闘力や経済力、諜報力を駆使し、何とか生き残りを図ろうとしていた。 数百年続く大陸間の戦いで数個の大きな国ができた。 大陸の中央と北方を支配する国。 通称――帝国。 大陸の南西部に聳え立つ山脈を越えれば鎮守家を中心にした連合国が以西を支配している。 帝国は強大な軍事力を土地柄から得、連合国は地の利を生かしていくつもの名勝負を繰り広げてきた。 帝国の辺境平定軍と連合軍先鋒――熾条家の軍隊は1年に数度、必ずぶつかり合い、小競り合いを続けている。 「―――また熾条の小倅が帝国軍を撃退したそうじゃ」 「むぅ。ならば何故ここにいない?」 ここは連合国本拠――鎮守領。 鎮守家当主――鎮守杪が治める領地である。 因みに今は戦略会議中で連合軍の高官――領主たちが集まっていた。 「渡辺」 「はい」 末席に座っていた渡辺領主――渡辺瀞は主君の言葉に返答する。 彼女の父は熾条家と共闘し、熾条当主と運命を共にした鎮守家の旗本である。 その功績を元に兄が現在の渡辺領を拝領したが、まもなく病没。 今は彼女と筆頭家老である山神綾香が切り盛りしている。 「軍は回復したか?」 常に無表情でどんな返事にも動揺しない杪は先日、壊滅した渡辺軍の再編状況を問う。 「はっ。後、2週間ほどで回復します」 「ん。―――帝国領内間者から報告」 『『『―――っ!?』』』 「軍勢を西方に集中。数、十万余」 淡々と紡がれた言葉の意味を理解した重臣たちは呻くように呟いた。 「十万・・・・」 「帝国め、本気か?」 「そんな大軍では天嶮の要塞もひとたまりもない」 周囲はざわめき、とても会議どころではない。 「静まれぇッ! 会議の最中だぞッ」 杪の側近中の側近である結城晴也が声を張り上げた。 戦場では射手隊を率い、本陣に近付く者を片っ端から貫いている闘将だ。 「総兵力にて敵を迎撃。諸将、領地に戻り戦支度せよ」 『『『オウッッ!!』』』 「―――殿、たった今、渡辺家の軍勢が到着いたしました。これで敵と戦えますぜっ」 本丸で瞑想していた一哉の邪魔をしたのは熾条を支える猪突猛進の武将――来栖川クリスだ。 「渡辺が? 確か奴らは再編―――」 「―――急遽終わらせたの」 案内もされず、勝手知ったる他人の城、とばかりに側近を連れた瀞が一哉の前に現れた。 「武勇を熾条だけが占めるなんて許せないからね」 その後ろには側近――綾香が続いている。 「久しぶり、一哉」 一哉と瀞は幼馴染みだ。 昔、鎮守領にある屋敷に住んでいた。 今でもその屋敷は隣合わせで建っているが、一哉はここ2、3年、上京していなかった。 「・・・・・・・・・・・・お前、軍を率いるのか?」 一哉の中では弓を必死に射ていた姿しか浮かばない。 馬上で長物を扱い、全軍に目を行き届かせる戦場指揮官にはとても向いていないように見えたのだ。 「あ、馬鹿にしてるね。私はこれでも戦歴があるんだけどね」 「熾条様。あたしが付いていますから、大丈夫です」 「おおそうだったな。山神の武勇はここまで轟いてるよ」 渡辺家侍大将山神綾香。 女性ながらも荒々しい戦い方と卓越した戦術が戦場で煌めく。しかし、総大将がどっしりと腰を据える大軍同士では我慢できるかどうかが問題だ。 「―――大物見隊から伝令っ。敵軍、国境向けて進軍。先鋒八〇〇〇は3日後、国境に達するようですッ」 一哉が前線に三〇〇ほど放っておいた物見からの報告は再開ムードを吹き飛ばすほどの威力を持ってしてもたらされた。 「来栖川。全軍に戦闘準備を。周辺の城からもかき集めろ」 「はっ。目標兵数は?」 「総兵力だ」 「分かりましたっ。腕が鳴るぜェッ!」 「―――布陣、完了しましたっ」 熾条・渡辺連合軍約九〇〇〇は谷の入り口に布陣していた。 この入り口――敵には出口――から出てくる敵を扇状に広がって殲滅しようという作戦だ。 この方法であれば敵が如何に大軍であろうとも互角以上で戦える。 ―――そう、2倍以下ならば。 「物見隊より通達。『敵先鋒二万五〇〇〇。次鋒三万。その後方に続々と敵兵団進攻中』」 「分かった。来栖川隊に通達。大射手隊と投石車を前に出すように、と」 「はっ」 ガシャガシャと具足を鳴らして陣幕から出る兵士。 中には両隊の重臣とその護衛だけが残った。 「熾条殿。今の指示から推察すると敵には遠距離攻撃で当たるようだな」 「ああ。先は長い。敵先鋒の半数をこの攻撃で凌げれば重畳」 「敵も重装歩兵を前に出すだろうな」 「ああ。だからこその投石車だ。これは敵陣に穴を空け、敵の盾に隙間を作る」 「そこを3人の兵士で射た大矢が空から襲うってか」 軍議は進む。 誰もこの先の戦いに恐怖を抱いてはいない。 連合国が誇る精鋭たちの立ち振る舞いは前線兵士たちにも伝播し、士気は有頂天を衝いていた。 「我々はこの陣形で敵を迎え討つ」 一哉が床机から立ち上がり、力強く宣告する。 『『『オウッ!』』』 全員がその場で席を立った。 「―――敵先鋒、見えましたッ!」 「うん。確認できてるよ」 瀞は報告に来た兵士を労い、持ち場に返す。 「いよいよですね」 隣に立つ綾香はその手に大鎖鎌を持って今か今かと開戦を待っていた。 「うん。・・・・でも、本当にこれでいいのかな?」 全軍は鶴翼の陣形に展開している。 鶴翼とは自軍が大軍の時に少数の敵を包囲できるように広く展開する。つまりは一枚の壁は薄く、突破しようとする魚鱗の陣形とは互角の戦いとなる。 そして、敵軍が採るのは当然、魚鱗。 それも先鋒に防御力の高い重装歩兵――西洋甲冑――を並べている。 並の火器や矢では傷ひとつ負わせられない。 「―――敵軍が動き出したぞっ」 「・・・・・・・・・・・・」 谷から出てきた敵は八〇〇ほど。しかし、その数は急激に増していく。 まるで狭い口から水が流れ出すように扇状に進み出る。当初は魚鱗の陣形を保っていた敵軍も陣形自体を保てなくなりつつあった。 「これが狙いっ!?」 そう叫んだ時、熾条軍先鋒――来栖川隊から十数個の岩と数十の大矢が空を駆け、敵陣に着弾する。 ―――ギャアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!! 戦闘開始である。 〜この先は都合上によりストーリー紹介で終了〜 戦闘は当初、連合軍優勢で進んだ。 投石車の攻撃で乱れた敵陣を縫い止めるように突き立つ大矢。 確実に敵軍に被害を与え、恐怖を与え、味方に優位感を与えていた。しかし、岩や大矢の消耗から無敵の弾幕が崩れ出す。 敵先鋒隊の先陣――重装歩兵はほぼ壊滅していたが、その背後に立つ五万以上の軍隊が進み出したのだ。 敵は被害を被りつつも前進を続けていたために谷から出た軍勢は一万強と連合軍の互角となる。 一哉は前線から大射手隊、投石車を後退させ、代わりに鉄砲隊を配備。 釣瓶打ちにて新たな弾幕を作り出す。しかし、これは敵も同じで両軍が硝煙で白く霞んだ時、先鋒――来栖川の独断で槍入れが行われた。 来栖川隊は熾条が誇る最強槍兵を揃えている。 瞬く間に敵第一陣を突き崩す。 一哉は予想以上に早い白兵戦に歯噛みしつつ、援護するように来栖川隊の左右に五〇〇ほどの旗本隊を投入、挟み込もうとする帝国軍に備えた。 渡辺軍は中央の熾条軍が善戦を続ける中、早々に一騎打ちで前線敵将を討ち取る。そして、その隊をしこたま打ち据え、第二陣相手にも優勢に戦っていた。 戦場は次第にばらけ、白兵戦へと転じていく。 こうなれば一兵一兵が強い連合軍側が圧倒的優位に立つ。 そこに一哉の的確な指示の下に遠距離射撃が行われ、効果的に敵将を討ち取っていった。だが、確実に迫る破滅。 疲労による連合軍戦闘力低下に帝国軍は息を吹き返す。 まずは敵中深く入り込んだ来栖川隊が集中攻撃にあった。 熾条軍切っての猛将――来栖川クリスは槍が折れ、幾数もの矢が体に突き刺さろうとも太刀で、血で自分の太刀が使えなくなれば扱い慣れていない敵の剣を手にして暴れ回り、ひとりで数百人に傷を負わせて、敵第四陣で息絶えた。 渡辺軍は敵右翼を壊滅させるが、強大な中央軍の侵攻に次第に押され始め、どんどん後方に退いていく。 熾条本隊は開戦時のまま踏み留まり、必死に敵の魔の手を払い除けていた。しかし、敵軍は次々と谷から出てくる。 このままでは全滅してしまうと判断した一哉は全軍総撤退を決断。 全火器・弓矢による一斉射撃で敵を振り切り、一路本城を目指した。 開戦前は五〇〇〇を数えた熾条軍だが、戦える兵士はその半数を割り込み二〇〇〇弱。共に戦った渡辺軍も損害大で戦える兵士は同じく二〇〇〇弱だった。 敵軍は本隊と合流。 総兵力は九万近い大軍勢となった。だが、それでも敵軍の被害は甚大で一万五〇〇〇以上の兵力が死傷し、いくつかの備えも破壊され、すぐに動ける状況ではなかった。 この再編途中に連合軍の援軍二万五〇〇〇が熾条・渡辺軍と合流。 二万五〇〇〇人の兵団の総大将は鎮守杪ではなく、結城晴也。 連合軍総司令官鎮守杪以下連合軍本隊一万五〇〇〇は行方不明だった。 そして、合流から2日後、熾条・渡辺軍もその城から姿を消し、本隊と精鋭部隊を欠いた軍団はそのまま敵軍に攻囲され、籠城と相成る。 要塞攻防戦の開戦は速やかだった。 包囲した次の日に総攻撃を開始した帝国軍は様々な攻城兵器を用いて攻め立てる。それでも熾条一族がその知力を結集して築いた城は様々な防御設備で敵軍を苦しめる。 一進一退の城門攻防戦が行われ、連日多くの死傷者が双方に生まれ、開戦から10日が過ぎると戦線は膠着状態に陥りつつあった。 そうなると兵士間での会話で登るのは連合軍本隊約二万。―――その、行方だった。 第二次会戦が始まってから2週間。 未だ連合軍側は頑強な抵抗を続けており、帝国軍も圧倒的兵力を前面に押し出して兵力の大半を攻城に注いでいた。 熾条の本拠の攻め口は3つ。 故に帝国軍は三隊に分かれ、容易に合流できないでいた。オマケに戦力は前線に投入している。 全体的に見れば圧倒的兵数でも局地的に見れば敵本隊は三万を下回る。―――その背後から一万九〇〇〇の奇襲。 負ける謂われは何処にもなかった。 それは夜のこと。 光の少ない山をまるで昼のような明かりを煌々と灯す軍勢が包囲している。 松明が旗印を紅く染め、多くの軍兵を照らし出していた。 「―――先鋒、熾条軍、大射手隊、投石車攻撃準備完了」 「―――次鋒、渡辺軍、弾込め完了」 次々と本陣に伝令が駆け込んでくる。 この双方最後の軍勢――連合軍総司令官である鎮守杪が率いる連合軍本隊は帝国軍本隊の後輩の山に布陣していた。 「―――全騎、一斉射撃後突撃。敵大将を討て」 小さな、しかしよく通る声の指令にその近くにいた武将たちが声を張り上げ指示する。 「旗幟を上げよッ!」 「松明を灯せッ!」 「騎乗、一斉に駆け下りよッ!」 「目指すは敵本陣ッ! 続けェッ!」 「大射手隊、放てェッ」 「撃てぇぇぇっっっ!!!」 「皆の仇を討てェッ!」 ―――ダダダダダァ―――――ンンンンッッッッ!!!!!!!!! 突然、まるで火山が噴火したかのような轟音と火災が起きたかのように山を染め上げる松明の光が決戦場に現れた。 「―――後方に敵出現。一斉射撃後、騎馬隊が突入していますっ」 「騎馬隊、備陣を貫通っ。現在、本隊旗本隊と交戦中ッ」 「敵軍判明ッ! 行方不明中の連合軍本隊ッ! 先鋒、次鋒は先の戦いで撃破した熾条・渡辺軍のようですッ!」 『『『―――っっ!?!?』』』 次々と寄せられる報せに帝国軍本営は蒼白になった。 「すぐに諸隊を呼び戻せっ。包囲殲滅だっ」 「ダメですっ。呼応するように城から結城軍が溢れ出しましたっ。前線はその処理に追われていますっ」 「何ッ!?」 ―――ダダァンッ! 『『『―――っっっ!?!?!?』』』 本陣の陣幕を一発の銃弾が貫通した。 「ここは危険ですっ。司令、お下がり下さいッ」 「ええいっ。どこも同じだろう。少し耐えれば各方面から援軍がやってくるッ!」 「―――それは無理だな」 「―――なにっ!?」 バサリと陣幕が切り裂かれ、その向こうに黒い甲冑に身を包んだ武者がいた。 「熾条軍総大将――熾条一哉。部下千数百名の仇を取りに来た」 「同じく渡辺軍総大将――渡辺瀞」 ずいっと騎乗したまま前に出る大将に続き、ワラワラと武者たちが本陣に侵入してくる。 「衛兵はどうしたんだ!?」 「綾香が相手してる。百数十人くらいなら彼女で充分よ」 「・・・・化け物め」 そこら中で悲鳴と怒号が交差していた。 さすがに本陣近くは抵抗が激しいが、連合軍本隊の狙撃隊が的確に闇の中から指揮官を撃ち抜き、指揮系統を壊して混乱状態に陥らせている。 白兵戦で強いのは変わらないので戦況は優勢。 因みにこちらに向かっているであろう敵援軍は要所要所に伏せた伏兵に道を阻まれ、思うように進めていないはずだ。 「全騎―――」 一哉が槍を握り締め、手綱を引く。 「―――突撃ッ」 瀞が刀を振り下ろした。 戦は帝国軍首脳部が全滅するという劇的な逆転劇で連合軍が制した。 連合軍は敵軍の数万を討ち取る大勝利を収め、攻守の逆転まで持ち込んだ。 この戦いの傷が癒えた時、それは連合軍が帝都向けて遠征を開始する時である。 「―――な、何て言うか・・・・個性的なシナリオですのね・・・・」 鈴音は大歓声の中、ぽつりと呟いた。 「こればかりは同感よ。ホント、この学園は何なのかしら・・・・」 朝霞も鈴音の隣でため息をつく。 体育館でここまで臨場感溢れる劇ができるとは思えなかった。 「というか、本当に馬に乗っていたですの」 「鎧も・・・・本物なんじゃないかしら」 「さすが1年生最強クラスが主導する劇だったな」 「ああ、演技はともかく殺陣がすげえ」 「スカッとしたよ、久しぶりに」 「衣装も気合入ってたねー」 「ホントだね、綺麗だったよ」 統世学園生徒には大人気のようだ。 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」 2人は思わず顔を見合わせ、改めてため息をついた。 |