1.5. 経済力2
1.5.1. 商業(港町・門前町・温泉町・特産品)
1.5.2. 人口(総人口・年齢別)
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太字を読めば要約可能
考察根拠は本文を参照
文末に引用・参考文献名も記載
戦国時代は国内交易や対外貿易が活発化し、その拠点となったのが港町である。また、寺社仏閣や温泉も観光客を集め、門前町(鳥居前町)や温泉町を形成して経済を回した。各大名は、これら町々からの税収の他に特産品の生産を行って現金収入を得ていた。 1.5.1. 商業 港町 戦国時代の主な貿易港は堺や博多であり、特に堺は独自の自治権を持つ強大な勢力を誇っていた(自治都市)。堺における遣明船1隻当たりの純利益は1万8,000貫~2万5,000貫になる(真栄平, 2002)。単純平均の2万1,500貫は25億3,440万円、石高換算で4万2,240石となる。因みに遣明船は1404~1547年までの他の南蛮貿易、国内交易も同程度の収入があるとすると堺は12万6,720石の能力を持っていたこととなる。織田信長が1569年に要求した2万貫の矢銭は年間収入の3分の1に当たり、抵抗するのは当然と言えよう。 堺を基準とし、主要港湾の三津七湊に追加して南蛮貿易の拠点である長崎、平戸し、それぞれ経済能力を考察した。 博多津:国内貿易と大陸貿易の一大拠点。 安濃津:国内貿易の一大拠点。 坊津:琉球・アジア貿易、南蛮貿易の一大拠点。 七湊:国内貿易の中継拠点。 長崎・平戸:南蛮貿易の一大拠点。 大陸・南蛮・国内貿易の一大拠点は堺の遣明船と同じだけの収入があるとし、琉球・アジアはその50 %、国内中継貿易は30 %の収入とする。これらを表-1にまとめる。
※2 中国明代の歴史書「武備志」では堺津なく、坊津。 この他の地方拠点港湾は国内中継拠点港のさらに30 %の収入とし、3億8,020万円、石高換算で6,340石となる。ただし、自由都市である桑名湊および大湊は50 %とする。また、河川・湖沼交通の拠点はさらに50 %とし、1億9,010万円、3,170石とする。地方都市は主にHP「戦国日本の津々浦々」を参考とし、実石換算に使用した。 門前町(鳥居前町) 門前町(鳥居前町)は大規模な寺社の前に、参拝客を相手にする商工業者が集まって形成されている。これは交易の拠点として富を生み出し、税を徴収して大名の財源となる。 織田信長は堺だけでなく、石山本願寺にも5,000貫の矢銭を請求している。この請求額が年間収入に対する割合が堺と同じと仮定すると、石山本願寺門前町から得られる収入は19億80万円、石高換算で3万1,680石となる。 これを基準とし、畿内にある各信仰・仏教の本拠地を石山本願寺門前町並とし、地方総本山は75 %、各信仰大社・宗派はその30 %、そのほかの門前町を5 %として考える(表2)。門前町は「Wikipedia 門前町」およびこれに含まれない国一宮を考慮し、実石換算に使用した。
温泉町 古くから湯治などで温泉周辺にも町ができていた。これらの町は門前町と同じく観光客を相手にした商業の町であり、ここからの税収は大名の懐を潤した。 ここでは日本書紀や風土紀、延喜式神名帳に記された日本三古湯や三大温泉、三名泉、三御湯、さらに室町時代に五山僧が天下三名湯と紹介した下呂温泉を考慮する。経済規模は河川・湖沼交通と同じく1億9,010万円、石高換算で3,170石とする。 特産品 特産品を販売することで利益を得ている地域は多い。このような地域を大名が保護し、その利益の一部を税として取り立てている場合が多かった。ここでは銅金銀を除く物品について触れる。 特産品の種類によりその収入は大きく異なるが、所在郡石高の10 %の収入があるとする(つまり1万石の郡ならば米収入1万石にプラスして、1,000石の特産品収入がある)。主な特産品を表3に示す(伊藤, 2014を参考)。
1.4.2. 人口 総人口 戦国時代から江戸時代の総人口については様々な研究がなされ、1600年の総人口も検討されている(速水, 1973、鬼頭,1996・2000、藤野, 2008等)。 鬼頭(1996)では国別人口も求め、後に速水(1973)の総人口が過少として修正している(鬼頭, 2000)。最近では藤野(2008)が総人口をさらに修正した。ここでは総人口を藤野案の1,940万人を採用し、鬼頭(1996)の国別人口比率を用いて海道別人口を割り戻して求めた(表-4)。
年齢別 柳谷(2011)は、室町時代は60歳まで生きる人が10%に過ぎなかったと述べている(乳児死亡数を含まず、1歳児の60歳到達割合と予想)。ここでは1歳児、2~14歳の子ども、15~40歳の成人、41~60歳の初老、61歳以上と年齢別人口比率を推定する(表-5)。以下の場合、成人男性比率は34.38%となり、これが兵の母数となる。
引用文献: 速水融(1973):近世農村の歴史的人口学研究., 東洋経済新報社. 伊藤信博(2014):室町時代の食文化考:飲食の嗜好と旬の成立. 多元文化. 14. 131-158. 鬼頭宏(1996):明治以前日本地域人口, 上智経済論集, 41, 65-79 鬼頭宏(2000):人口から読む日本の歴史, 講談社. 真栄平房昭(2002):新体系 日本史1流通史、中世・近世の貿易, 山川出版社, 331-378. 柳谷(2011):江戸時代の老いと看取り, 日本史リブレット. 参考ホームページ: 戦国日本の津々浦々. Wikipedia-門前町・港町 |