第四章「選挙、そして挙兵」/3


 

「――― 一哉が来たようですね」

 とある和室で、老婆が何もない空間に語りかけた。
 湯飲みを持って口に茶を含み、一息ついてからさらに言葉を続ける。

「それもふたつほど荷物を抱えて」

 端から見れば変な人だが、彼女の声に応える者は存在した。

『同時に渡辺瀞嬢、鹿頭朝霞殿も参られております。また、御門宗家代表は“銀嶺の女王”の下へと運ばれています』

 一陣の風と共に彼女の前にひとりの影が片膝をつく。そして、今度は肉声のはっきりした声で報告を続けた。

「陣代である亜璃斗殿は鹿頭殿が見られております」
「ふ、報告ではいろいろやりあったようですね」
「ええ、一応、識衆を待機させ、万が一戦いが起きれば止める手はずです」

 黒装束の影は真面目くさった対応策を口にする。しかし、亜璃斗も御門宗家の名門分家・穂村家の跡取りだ。
 並の能力者では敵わない。そして、鹿頭朝霞も熾条宗家の分家――本人たちは認めないだろうが――で、その当主だ。
 戦歴も赫々としたものがあり、これもまた、並の能力者では敵わない。

「・・・・・・・・・・・・・・・負けますかね?」
「はい。それもタッグを組んで邪魔者から排除することでしょう」
「・・・・・・・・・・・・・・・引き上げさせます」

 影は情けない口調でそう言い、パチリと指を鳴らした。

「それがいいでしょう。あのふたりは瀞さんに任せましょう」
「瀞嬢に?」
「ええ。あの娘は巷で言われているほど弱くはありません。むしろ、日常生活においては最強ではないでしょうか」
「そういうものですか・・・・」

 「なんか疲れた」と言った影は立ち上がり、再びその姿を消す。
 彼女の立場からすれば無礼だが、忍びの立場にある者にそれを言っても仕方がない。そして、彼女も気にしなかった。

「さて・・・・“東洋の慧眼”と呼ばれた作戦遂行能力を・・・・見せてもらいましょうか」

 彼女は茶を口に含み、眼下を見下ろす。
 そこには近代城郭に現代アレンジを加えた、まさに「城塞」が広がっていた。




「―――ん、んぅ・・・・」

 直政は全身を包んでいた冷気が急速に温もりに塗り潰されていることを自覚した。そして、眠りについていたと自覚すると同時に覚醒する。

「ここは・・・・」

 直政は掛けられていた掛け布団をどけ、体を起こした。
 部屋は和室で、い草のいい匂いがする。しかし、その匂いに混じってほのかに火薬の香りがした。

「まるで・・・・城だな」

 軽く頭を振り、残っていた眠気を吹き飛ばす。そして、隣の部屋に声を放った。

「ここ、どこだ?」
「―――ほう、さすが地術師。その索敵能力は屋内でも健在か」

 襖が開けられ、いつか見た銀髪の少女が車いすを押して入ってくる。
 その背後には似たような顔をしつつも外見が違う3人娘がついてきた。

「あんたは・・・・央葉の・・・・」
「うむ。のぶの姉だ。そして、ここにはのぶの弟や妹たち全てが暮らしている城だ」

 肩にかかるか否かというラインでスッパリと切り揃えられた銀髪を揺らし、障子を見るように促す。

「おお・・・・」

 直政が顔を向けると同時に障子が独りでに開き、その向こうに広がっている光景を遮る物がなくなった。

「これは・・・・なんというか・・・・」

 眼下に広がるのは白漆塗りの壁や石垣、水を流す堀や重厚な城門などなど、まさに巨城という光景だ。

「これってどこ?」
「その辺りの説明は省く。後々誰かが説明するからな」

 そう言って彼女――叢瀬椅央は車いすを操作して廊下へと出て行く。

「ほれ、行くぞ。央葉に会わせてやろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 叢瀬央葉。
 あのゴールデンウィークにあった戦いからずっと学園を休んでいる、直政の友人だ。
 すでに出席日数が危ない気がするが、まあ、何とかなるだろう、あの学園なら。

「やっぱり、央葉が休んでるのって、あの耳と尻尾のせいか?」
「ああ、そうだな。あのような格好で表の世界に出られるわけないだろう」

 直政は椅央の後を歩きながら話しかける。
 視界の端には姫路城張りに立派な天守閣が見える。

「狐耳に尻尾だからな~。・・・・いや、案外、央葉の評判ならコスプレで誤魔化せるかもしれない」
「・・・・・・・・・・・・一瞬、『その手があったか』と思った余に嫌気が差す」

 どうやら、あの無表情奇行少年の評価は家族でも一緒らしい。

「ってことは央葉は元気なわけだ」
「元気だぞ。姿形の関係で学園に通っていないだけだからな」
「・・・・そっか。それを聞いて安心した―――っとと」

 車いすが止まり、直政は危うく衝突しかけた。

「やはり、貴様が央葉の友人で良かった」

 にこっと年相応の笑みを浮かべて見せた椅央は自動ドアのように障子を開け、部屋の中へと入る。

『久しぶり』

 そこには天井から逆さまにぶら下がった央葉がスケッチブックを両手で持って待ち構えていた。

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 ピシャリと障子が閉まり、何とも言えない沈黙が5人の中に満ちる。
 4人の少女の視線が痛い。
 何故か睨まれている気がするのは気のせいではないだろう。

「お、お~、確かに久しぶり~」

 勇気を振り絞って自分で開けた障子の向こうにはやはり央葉が逆さまでいた。

「ど、どうしてぶら下がってるんだ?」

 耳や尻尾はそのままで全く違和感がないのが恐ろしい。

『再会にはインパクト』
「そ、そっか・・・・・・・・・・・・はぁ」

 思った通り、あまり意味のない行動だったらしい。

「御姉様、やっぱりのぶの奇行は統世学園に通ったせいじゃないですか?」
「っていうか、悪影響を受けたんですよ、あの人に」
「ああ、確かにバカみたいに階段落ちとか吹っ飛んだりするんですよね」
「「「・・・・はぁ」」」

 言いたい放題言ってため息をついて見せた三人娘。
 告げ口とも言える進言を受けた椅央はピコピコと耳を動かしている央葉を見遣った。

「かわいいからいいではないか」
「「「絶対あなたもどこかから勝手に変な電波を拾っているでしょ!?」」」

 三人娘にしてはかなり珍しいツッコミを椅央は涼しげに受け、壁に背を預けて央葉の奇行を見守っていた翅娘に話しかける。

「スス、のぶの体調はどうだ?」
「健康体そのものヨ。ただ・・・・やっぱり鎖は破壊されているようネ」
「・・・・そうか」

 椅央は視線で三人娘を下がらせると、直政を促した。そして、央芒はぶら下がっていた央葉を下ろす。

「さて、どういう状況か分かるか?」
「いや、さっぱり」
「はは、だろうな」

 椅央はまたまた何も操作することなく、純和室の部屋である天井から大スクリーンを出現させた。そして、それだけのテクノロージを使って見せながら、映し出されたのは統世学園の出席表である。

「見ての通り、出席がマズイ。このままでは留年してしまうのは・・・・分かるな?」
「ああ、それは・・・・分かる。もうすぐ2ヶ月だろ? 確か・・・・もう週一の授業はアウトに近いんじゃ・・・・」
「留年することはマズイ。のぶには統世学園にいてもらわなければ困るのだ」
「・・・・だから?」

 話が見えない直政はさらに具体的な方法を問う。

「簡単だ。表の学園には『保健室登校』というものがあるのだろう? 授業には出席していないが、然るべき補習を受ければそれに準じた効果が得られる、という」
「それに央葉が出席していることにしたいノヨ」

 回りくどく説明しようとする椅央の台詞を奪い、央芒は単刀直入に言った。

「でも、実際に登校できる訳じゃナイ。学園側の教職員は【叢瀬】の能力でどうにかなル。でも、学園側で全てを知って協力してくれる人が欲シイ」
「自他共に認める、のぶの友人であるお前にな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 直政はのろのろとした動きで央葉を見る。

『宜敷』

 何故全部漢字で書くのだと問い質したいが、馬鹿らしいので止めた。

「受ける前にひとつだけ訊いていいか?」
「何だ?」
「どうして、央葉が学園にいなくちゃ困るんだ?」

 もしかしたら、ものすごい陰謀が隠されているかもしれない。
 知らない内にその片棒を担がされていると亜璃斗に知られると、家族会議が開催されるのは確実だ。

「ああ、それは先程の質問よりも簡単だ。余やススを見てみろ」

 言われたとおり、うねうね動く銀髪で左右の瞳の色が違う車いす少女と、隻腕で背中から二対の翅が生えた少女を見遣る。

「私たちは学園には通えないワ」
「・・・・あ・・・・・・・・」
「余ら【叢瀬】の中で、学園生活という表世界を経験できるのは・・・・央葉くらいだからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 【叢瀬】については朝霞から断片的に聞いている。
 確かに目の前の少女ふたりに普通の学園生活は難しいだろう。しかし、央葉の復学を望むのはそれだけではないはずだ。

「央葉は毎日、学園であったことを紙芝居風にして下の子たちに・・・・見聞かせ? している」

 声帯を使えないため、読み聞かせできない。

「統世学園の出来事はいつもおもしろく、下の子たちの楽しみになっていた」

 何せ、平均年齢が一桁の集団である。
 椅央はこの年で小学校の先生をしているようなものなのだ。

「ま、年の問題で本当なら高等部ではなく中等部なのだが、組織の主要メンバーは高等部にいるから―――」
「って、ちょっと待てぇぃっ!?」
「どうした?」

 小首を傾げるが、椅央の髪は重力に逆らい、何やらキーボードを叩くような仕草を見せた。
 彼女は直政と会話しながら、何か仕事中なのだろうか。

(って、それどころじゃない!)

「い、今、聞き捨てならないことを言わなかったか?」
「「?」」
「いや、ふたりには訊かない。本人に直接問いかける」

 逆立ちしている央葉の顔を覗き込む。
 微動だにしていないが、血が上って――下がって?――きているのか、赤い顔をした央葉は上目遣い(?)で視線を返してきた。

「お前、いくつ?」
「逆立ちして両手ふさがっている文字書きっ子に訊くとは鬼畜だな」

 外野は無視して視線を送り続けている。すると、そろそろ限界だったのか央葉は音もなく体勢を整えると脇に置いていたスケッチブックに、何故か筆ペンで文字を書いた。

『壱拾参・・・・・・・・壱拾四?』
「やっぱ漢字な上に無駄に達筆だな、おい! しかも、疑問系だが、とりあえず年下なことは分かったぞ!」

 水を得た魚のようにツッコミを入れ、直政は額を手で押さえながら呟く。

「ふぅ・・・・出会いからずっと感じていた央葉の幼さはこれが原因か・・・・」
『因みにそこの銀髪は十五で同い年』
「それは納得いかねえ!」
「・・・・それは余が老けていると言うことか?」

 ぶわぁっと銀髪が広がり、目が開かれた。
 同時に天井の板が一枚外れ、一目で重機関銃と分かる銃口が直政に向く。

「い、いや・・・・大人っぽいとか、しっかりしてるとかいうプラスの意見でせう・・・・」

 正直、拳銃とかなら耐える自信があるが、人に向けて撃つことが陸戦法規に引っかかりそうな代物まで耐える自信がない。

「・・・・・・・・まあ、いい。とにかく、やってくれるのか?」

 ため息をついて銃を収納した椅央は一度、虚空に顔を向けてから答えを催促した。

「・・・・分かったよ。何ができるかわからないけど、協力する」
「感謝する。子細は追って、ススが狙撃する」
「狙撃!? 結局、撃たれるの!?」

 とんでもないことを宣った椅央はもちろん、狙撃する本人も何でもないように頷いている。

「なあ、ここにいると俺がものすごく変な人に見えてくるんだが、常識人は俺の方だよな?」
『「さあ、それはどうかな」と答えると見せかけて「いやいやキミも変な人だよ」にする』
「・・・・・・・・・・・・新しい手法を編み出しやがったな」
『ネタのマンネリ化は避ける必要がある』
「「「はぁ・・・・」」」

 「やっぱり一番の変人は叢瀬央葉」という結論に達し、三人は深いため息をついた。




「―――ここで、皆さんがお待ちです」
「ありがと、案内してくれて」
「いえいえ、のぶ兄の友達と言うことですので」

 にこりと叢瀬央梛と名乗った少年は笑った。

「央梛、下がってよいぞ」
「はい」

 椅央にそう言われ、少年は一礼して廊下を歩いて去っていく。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 直政の目の前には天守閣の最上階――大広間に続く障子があった。
 地術師である直政には中にいる人数を把握しており、その内数人は知っている。しかし、上座に近い位置に座る数人は分からなかった。

「兄さん」

 深呼吸して障子に手をかけた直政の袖を亜璃斗が引く。
 亜璃斗は朝霞と一緒にいたようで、央葉の部屋にいた直政を迎えに来たのだ。
 はじめ、直政は椅央の招きでここに来たと思っていたが、どうやら違ったらしい。
 ふたりを昏倒させたのは瀞で、瀞も運んでこいと言われただけらしい。
 全てはこの部屋の向こうにいる、上座に座っている人物が知っているだろう。

「いい、兄さんはあそこの上座にいる人とは対等だから」

 熾条一哉が何と言おうと、御門宗家はどこの傘下にも下っていない独立勢力である。
 例え、名族の矜持しかない、実戦力に乏しい戦力であっても、誇りだけは捨ててはならない。
 名族が誇りを捨てれば、それは名族ではなくなる。
 名族にはふたつある。
 名族故に、その名に恥じぬ行いをしようと心懸ける者。
 名族故に、その名の上に胡座をかいて怠惰を貪る者。
 後者ほど、名族であることを喧伝する。しかし、忘れてはならない。
 先にあげた名族は「名実共に名族である状態で」の話である。
 地に落ちたという歴史を経て尚、名族を名乗る者は前者以外にあり得ない。

「分かってる。今の俺は穂村直政じゃない。御門直政だ」

 そう返し、胸を張って直政は障子を開けた。

『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』

 上座には見知らぬ、老年の女性。
 そのすぐ左にもまた、見知らぬ老年の女性が座っている。
 ふたりめの老婆とは反対側は空白で、二人分空けた場所に二十代と思しき女性が座っていた。
 さらに数メートル開けた左側に熾条一哉が座っており、その隣に鹿頭朝霞がいる。

「央楯(テスリ)」
「はい」

 椅央は車いすを押していた少女の名前を呼ぶ。
 すると少女は椅央の前まで来るとその脇に手を差し入れ、車いすから持ち上げた。そして、朝霞の隣に用意されていた折りたたみ式のいすに座らせる。
 どうやら、椅央は案内してくれたのではなく、この場の出席者だったようだ。

(と、言うことは、各部隊の指揮官・・・・?)

 渡辺瀞と緋という炎術師がいないので、彼女たちの代表が熾条一哉だろう。そして、鹿頭家と【叢瀬】の代表は鹿頭朝霞と叢瀬椅央だ。
 となれば、直政が知らない者たちも、この組織が持つ部隊の指揮官である可能性が高い。

(んでもって、幹部はあのふたり。中でも上座の婆さんがリーダーだな)

「穂村直政殿並びに亜璃斗殿ですね。どうぞ、お座りください」

 上座の女性は、一段上ではなく、直政たちと同じ段に座っていた。
 彼女の御門宗家に対する評価は一哉とは違うらしい。
 上座に座しているのは、この城の城主としての立場からだろう。

「突然、お呼び立てして申し訳ありません。この城は少々特殊な立地に建てられておりますから地術師に秘密を曝かれては少々厄介なことが起きます故に」

 柔和に微笑みながら、勝手な物言いをする女性。

「まずは、自己紹介させて頂きますね」

 ピッと人差し指を立てた。

「私、熾条宗家前宗主、熾条緝音(ツグネ)と申します」

 ボッとその指先に炎が灯る。

「「―――っ!? ゆ、“悠久の灯”!?」」

 その穏やかな炎はしかし、言葉の爆弾となって、直政と亜璃斗の心で起爆した。




「―――集結したか」

 東京都SMO本部地下、三桁を超える隊員が集まっていた。

「こうしてみると・・・・壮観だな」

 築山陸翔は自分の部隊を見下ろす。
 SMOが第二次鴫島事変以来の変革で再生させた即応集団であった。
 第一即応集団は敵性戦力が関東方面へと攻撃をかけてきた場合に迎撃に出る部隊であり、より軍の傾向が強い。しかし、築山陸翔率いる第二即応集団は築山を始め、能力者が多い。
 その攻撃能力は奇襲された側からすれば脅威でしかない。
 つまり、第一即応集団は迎撃専門部隊、第二即応集団は強襲専門部隊、というわけだ。
 SMOは中国地方の高雄研究所で研究されていた装甲技術を取り込んだ新兵器を一般隊員向けに制式配備する。
 結果、それらの完熟訓練を終えた部隊の戦力は向上し、即応集団結成を後押しした。

「まるで、軍隊だな。・・・・というか、そのままか」

 SMOの即応集団は自衛隊の即応集団を参考に作られており、より軍隊に近い編成となっていた。
 つまり、戦車や装甲車だけでなく、中隊や小隊といった概念も盛り込んだのである。

「第二即応集団の戦力は約五〇〇・・・・」

 三個装甲普通中隊と三個独立装甲小隊が一般隊員で構成される。
 他に三個装甲車小隊、三個戦車小隊、一個ヘリ小隊、一個ミサイル小隊など、細々とした編成があった。
 第二次鴫島事変に臨んだ藤原秀胤勢とは比べものにならない戦力である。
 旧組織は数十という動員数を誇っているが、それは烏合の衆であり、集団戦に慣れていない。そして、集団戦が可能である藤原たちはこの即応集団を撃破するほどの戦力がない。
 即応集団が万全の体制で動けば、たいていの組織を正面から撃破する自信があった。

「フ、フフフ、確かに壮観ですね」

 出撃準備に余念ない隊員たちを見下ろしていた築山に声がかかる。
 その声色はくぐもっており、声紋判断を狂わせることができるだろう。

「スカーフェイス」

 彼は前後不覚に陥ったSMO長官の代わりに全指揮を執ることになった功刀宗源監査局長の肝いりで参戦することになった部隊の隊長だ。
 通称、スカーフェイス部隊と呼ばれる、監査局第三実働部隊である。

「ご安心ください、築山さん。フフ、僕たちが露払いいたす」
「・・・・相手が相手だ。一番槍の誉れは譲ってやろう」
「ああ、そうそう。これを渡しておきます」
「? これは?」

 スカーフェイスは篠山に無骨な機械を渡した。

「無線機・・・・にしてはでかいな?」
「いえ、無線機です。多少大きいのは対電波攻撃を意識したためです」
「で、これが?」
「これで前線の情報を報告します。お持ちください、フフ」

 スカーフェイスは不気味や笑いを見せると、別の一角へと歩き出す。
 そこにはSMOの一般装甲とは明らかに違うそれをまとう部隊が整列していた。









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