設問2
「筐体から出てくるモグラを全て叩け。」



設問2
『筐体から出てくるモグラを全て叩け。因みにモグラではないのも出てくるので注意』



「なんか、私たちにとってすごく先進的な箱なのに・・・・」
「漂う、この懐かしい感じは何なのだろう・・・・」

 看板の横にデンッと置かれた筐体の端にはモグラを叩くであろう棒が立てかけられている。

「ってか、これを振り上げ・・・・?」
「どうしたんです?」

 棒に触れるなり、首を傾げた藤丸を訝しげに見遣る紗姫。

「いや、これ、動かない」
「は?」
「僕もやってみま―――あ、ほんとだ」
「どれどれ」

 盛武が腕まくりしながら幸希に変わって棒に触れた。しかし、自信に満ちていた表情がすぐに曇る。

「な、何故だ。ビクともしない」
「何故でしょう。僕には盛武殿が力を入れていたようには全く思えないのですが・・・・」

 確かに持ち上げようという気力は全く感じられなかった。

「加納〜」

 さらっと幸希の発言を無視し、盛武はちょいちょいと手招きして大斧槍を片手に周囲を警戒していた郁を呼ぶ。

「・・・・なんですか?」
「お前にぴったりな課題だ」
「?」

―――郁は何のこともなく、棒を持ち上げて見せた。

「「えー・・・・」」
「?」

 藤丸と幸希に向けて首を傾げながら郁は素振りをしてみせる。

「単純な霊力操作でしょう」
「?」
「あ、なるほど」
「・・・・今の反応だけでふたりの霊術に対する理解が分かります」
「悪かったな」

 紗姫の呆れた視線に藤丸は憮然とした。

「簡単に言えば、腕力で持ち上げず、霊力を物体に浸透させることで持ち上げている、ということです」
「その通り」

 幸希の説明に紗姫が頷く。

「郁殿は腕力を使う時に無意識にでも霊力を使用しますから」

 おかげで郁の力は体型に比例せず、大の男顔負けのものになっていた。

「これで・・・・あの穴から出てくる奴らを叩けばいい訳ね」
「おい、モグラを―――」
「でりゃりゃりゃりゃッ!!!」

―――ズドドドドドドドドドドドド!!!!!!!

 ものすごい勢い飛び出してくる正体不明の物体たちを、同じくものすごい勢いで叩き潰していく郁。
 その表情は真剣そのものだが、何故か衝突の瞬間に火花が散っており、その光に照らされていると凄惨な印象を受ける。

「おい、ちょっと待て。あの動体視力、ただ者じゃねえ」
「僕、ちょっと震えてきました」
「俺、前から思ってたんだ」

 武闘派過ぎる、壮絶な棒捌きを見せつけられた男三人は口の端を引きつらせながら言う。

「「「加納郁、恐ろしい娘」」」

―――ドォッン!!!!

「「「―――っ!?」」」

 爆発音に男三人はビクリと体を震わせた。

「ん? これっていいの?」

 筐体からは煙が噴き、液晶に「完璧」と書かれている。

「というか、郁。まさかお前、モグラだけでなく、他の奴も殴り潰したんじゃ・・・・」

 見れば、筐体の穴にモグラではないものたちもぐったりしていた。

「はい? モグラ? 穴から出てくる奴らをみんな叩くのでは・・・・ない?」
「ちょっと待て。じゃあ、あの速度で繰り出される奴らを間引きして叩いていたのではなく、その全てを反射神経で叩いていたのか?」

 高速な処理速度を必要とする敵とそうではないものの区別を全く行わず、やってくるものが全て敵と判断することで合理化し、それを成し遂げるために必要な反射神経を駆使して全てを叩き潰したというのだ。

「こいつなら、突然、玄関を開けた急使を問答無用で殴り飛ばした経験とかありそうだな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「え、ホントにあるんですか!?」

 無言で顔を背けた郁に幸希がツッコミを入れた。

「う、うるさい。人が気を張ってる時に空気も読まずにいきなり玄関を開けた奴が悪い!」
「いやいや、お前が悪いだろ、どう考えても!」

 藤丸の気付かないうちに内乱に影響する急使を殴り倒したことがあるのではないか。

「どうでもいいですけど、先に進みませんか?」

 呆れ果てた紗姫が腰に手を当てながら四人を注意した。
 なにげに五人の中で一番背が低い紗姫に窘められる図、というのは情けない。



設問1 蒼炎 設問2設問3
設問1 龍鷹 設問3