「海原に轟くカノン」/八



 中世の海戦。
 それは本来、その地に根付いた海運業を営む者たちの戦闘だった。
 その海運業者も陸に住む関係で土地の大名に使役されてきたが、その戦力は基本的に海運業者の経済力に左右される。
 だが、戦乱の世も数十年を超えてくると、大名の経済力が大きくなった。
 この関係で支配下に入る海賊衆も増え、一海戦に参加する船の数も増加する。
 その結果で生まれたのが、太鼓や旗信号による合図で動く、集団戦法だ。
 船団は前衛船団、左右船団、主力船団、後方船団といった陸戦と同じくそれぞれの備えに分かれる。
 それぞれの旗艦は安宅船や関船が用いられ、兵卒として小早が参加する。
 旗艦は防御力を兼ね揃えるだけでなく、遠くからも見えるように大型化した。
 それを護衛の小型船が取り囲み、そのまま相手にぶつかるのだ。
 これまでは旗艦能力を持つ大型船で編制された部隊同士の決戦など起きない。
 だが、大きな経済力を背景に編成された大型主力船を統一編制する大名が現れ始めた。
 それは絶大な攻撃能力を発揮する。
 近づく小型船は多数の火器で撃退。
 旗艦である大型船も複数の大型船に囲まれて撃破される。
 異なる戦術に右往左往する相手を席巻するのが常だった。



 では、そんな大名同士がぶつかった場合、それはどうなるのだろうか・・・・?



 その答えがまもなく出る。
 列島における海戦の在り方を変えた甑島沖海戦。
 後世の歴史家が海戦技術的ターニングポイントに上げたそれは、砲門数という絶対的な戦力単位を生み出した。






甑島沖海戦 -5

「―――あ、ヤベ」
「―――っ!?」

 作戦を開始してから数分後、勝流は顔を引きつらせた。
 その声を聞き、リリスがすくみ上がる。

(間に合うか!?)

 左腕にしがみつくリリスをそのままに、右腕を伸ばし、掌を敵船に向けた。
 正確に言えば敵船から飛んでくる砲弾に、だ。

「勝流様!?」

 勝流の行動。
 その意味に気が付いた東郷が悲鳴じみた声を上げた。
 船を沈めるための砲弾である。
 それが人に当たった場合どうなるか。
 その答えはこの数刻で嫌と言うほど見た。

「・・・・ッ」

 注ぎ込まれた霊力が、勝流が望む位置に霊術を発動させる。
 それは戦場の至る所に霊能士が発動させていた弾除けの障壁。
 術者の力量によってはそのまま銃弾を受け止めるほどの防御力を持つ。
 だが、基本的に銃弾の向きに正対しないよう斜めに発動。
 弾丸の球体表面と接触させ、滑らせるようにして逸らすのが目的だ。

(ダメか!?)

 焦って発動されたそれは、砲弾に対して正対して出現した。
 勝流は皇族として相応の霊力を持っている。しかし、霊能士になるための訓練を受けたことなどなく、この障壁だって自衛用に覚えたものだ。

「あ・・・・ッ」

 真正面から砲弾と激突した障壁は一瞬後に粉々に砕かれた。
 砲弾は放物線を描き、位置エネルギーを放出しながら降ってくる。
 その物理エネルギーを殺すほどの強度を持たすことができなかったのだ。

「く、そぉぉぉ!!!」

 勝流は防御を諦めた。
 一番馴染む、海軍将校として必須と言える霊術を発動した。
 海上において真水は貴重な戦略物資である。
 それを自前で用意できる水系の霊術は龍鷹海軍では霊術の才能がある水兵全員に覚えさせていた。

「行けや!」

 ここは海上。
 元となる水は溢れており、その分発動は早い。
 数個の水弾が狙い余さず砲弾に命中した。
 命中の際に水弾が砕け散り、霧のように広がる。

「ちゃくだぁん!!!!!」

 勝流の窮地を知らず、敵弾の襲来を告げる見張員からの言葉。
 それを受け、水兵たちは手近なものに捕まって衝撃に備えた。

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 風切り音と共に複数の砲弾が「霧島」周辺に降り注ぐ。
 前後左右に水柱を上げる中、一本が半ばでへし折れた。

「は?」
「?」

 崩れ落ちる水柱のただ中から飛び出す砲弾。
 それはまっすぐに勝流とリリスを目指している。

「そんな!?」
「―――っ!?」

 勝流が弾き飛ばしたはずの砲弾。
 それは障壁や水弾を物ともせずに直進し、ふたりの幼い命を散らすために飛んできた。

「あ――――――」

 迫る砲弾を前に、今度こそ勝流は硬直する。
 左腕にリリスをまとわりつかせたまま、勝流は無意識に右腕を下げた。

(こんなもんか・・・・)

 勝流は同年代と言って良いふたりの一門のことを思い出す。
 今では西海道を揺るがす武将であるが、数年前には勝流と同じく初陣を迎えた。
 忠流の初陣は、北薩の戦いにおける人吉城攻防戦だ。
 そこから肥後で補給路を圧迫する行動の後、水俣で海軍に助けられるまでの逃避行を経験した。
 総合的に見れば勝ち戦であり、その戦略を立てたのも忠流だ。
 一方、現在の評価では忠流より戦に強い従流の初陣は、内乱後の都濃合戦。
 従流本陣も激戦となるほどの苦戦を強いられたが、従流の神装によって急を脱した。
 ふたりとも初陣から活躍するという、規格外なデビュー戦を飾っているのだ。

(だから、俺も! と思ったんだけどな・・・・)

 虎熊水軍を相手にした海戦は、間違いなく父が活躍した対中華海軍戦闘に匹敵するものだ。
 そこで活躍できれば、父に並ぶだけでなく、幼いながらも異才を発揮する叔父たちに追いつけると思っていた。
 だが、現実はそう甘くなかったようだ。

(父上・・・・)

 そう音にならぬ声を漏らした時、勝流は衝撃を受けて吹き飛ばされた。



 戦列艦「霧島」は艦中央の他に二発被弾した。
 それぞれ艦内構造を破壊し、不運な水兵を血霧に変えながら貫通。
 海面にやや赤色の水柱を屹立させる。
 だが、距離が詰まっていたこともあり、砲弾は喫水下にダメージを与えることはなかった。
 さらに帆も無事だったこともあり、「霧島」は報復の砲撃を行いつつも距離を詰める。
 彼我の距離、約七町。
 デミ・カノン砲の弾道安定距離まで残り二町。
 そんな時に、「霧島」は首脳部を喪いつつあった。




「―――ぅ、く・・・・」

 全身を苛む激痛に勝流は目を開けた。
 どうやら気を失っていたようだ。

「リ、リリスは・・・・?」

 痛いほど腕を掴まれていた感触がない。
 あるのはヌルリとした血の感触だ。

「くぅ・・・・」

 所々に木っ端が突き刺さっており、体を動かすだけで激痛が走る。
 それでも五体満足なようで、勝流は体を起こすことができた。そして、その視界に同じく擦り傷を負っているが、存命なリリスを発見する。
 ただ気を失っているのか、ぴくりともしない。

「うげ・・・・」

 次に見たのは、敵に向いているのとは別方向の艦舷の有様だ。
 そこは砲弾通過による痛々しい破壊の跡がついている。そして、その砲弾の道には多量の血が付着していた。

「・・・・ん?」

 その光景に疑問を抱く。

(砲弾は俺たちに命中しなかった)

 当たっていれば、ふたりの姿はなくなっているはずなのだ。

(じゃあ、あれは―――"誰の血"だ)

 あの時、勝流たちの傍には誰もいなかった。
 度重なる戦闘で数を減らした水兵に、勝流たちの側付きをしている暇はない。

「―――ぐ、ぅぅ・・・・。勝流様、ご無事で?」
「ああ、東郷か。被害状況は掴んで―――」

 背中からかけられた声に応じ、振り返った勝流が見たのは―――両足を失った東郷だった。

「な!? その傷、何が―――っ!?」
「はは、不覚を取りました」

 東郷が背中を預けるのは、砲弾が命中した艦舷だ。
 狭間に左手をかけて体を固定し、膝下を失った体の背中を預けている。

「司令!」

 東郷の有様を見た水兵たちが駆け寄ってこようとする。

「大事ない! 持ち場を離れるな!」

 それをけが人とは思えない大声で押しとどめた。

「・・・・ッ」

 一瞬、悲哀に顔をゆがめた彼は見張員の「敵、発砲!」の声を受けて持ち場へと戻っていく。

「小刻みに艦の針路を変えろ! ここまで来たら距離が詰まるまでそう時間はかからん!」

 そう叫び、艦の針路がわずかに変わると、砲弾は「霧島」を逸れて後方に次々と着弾した。

「とう、ごう・・・・」

 そんな喧噪も耳に入らぬ様子で、勝流は這うようにして東郷の側に寄る。
 途中で東郷が流す血の川に体が入るが、気にもしない。
 だって、これは―――




(―――俺たちを庇って負った傷の血だ)




 東郷は指揮を執るために離れていた。
 しかし、彼は勝流の危機を見て駆けつけたのだろう。そして、飛び込むようにして勝流の体を押しやったに違いない。
 その折、脚に砲弾を受けたのだ。

「なんて顔をしているんですか」

 側に寄った勝流の顔を無骨な右手が撫でる。

「いつも自信満々にいた勝流様らしくありませんよ」
「馬鹿野郎、今はそんな時じゃ・・・・ッ」

 東郷の軽口に我を取り戻した勝流は己の衣服を破り取り、東郷の傷口に当てて止血しようとした。

「ちくしょう、止まれ、止まれよ!」

 衣服はすぐに赤く染まり、たっぷりと血を蓄えたそれはすぐに止血の意味をなさなくなる。

「勝流様、もはや手遅れ・・・・いや、このような時間を得られたことは奇跡と言えましょう」

 砲弾の直撃を受けながら、話すことができるのだから。

「馬鹿! そんな幸運あるんだ、鹿児島までその幸運を持って行け!」
「それは難しゅうございましょう」

 勝流の瞳から零れる涙を右手で拭いながら言う。

「私の運は、あの夜、鹿児島にいなかったということでほとんど使い果たしてしまったのですから」
「何を・・・・ッ」

 東郷が言う「あの夜」とは、龍鷹海軍の首脳部がほぼ全滅した、内乱開始の夜。
 霜草久兵衛率いる黒嵐衆による襲撃で、"海将"・鷹郷実流を初めとした諸将が暗殺された。
 本来、東郷もあそこにいたはずなのだ。

「あの時、一緒に逝けなかった私に残されたのは、勝流様のような次代に海軍を受け継がせることのみだと思い、今まで奉公させていただきました」

 東郷は痛みを感じていないかのような口調で話すのは、本当に痛みを感じていないのだろう。
 それはすでに体が正常な機能を失っていると言うこと。
 血の気が引き、勝流の頬を撫でる右手も緩慢になっていく。

「そんな・・・・。お前には娘もいるだろ!」
「ですから、次代、と・・・・」

 また至近弾で「霧島」の周囲に水柱が屹立した。

「こうして身を挺して勝流様を守れましたし。・・・・残る心残りは娘の花嫁姿を見られないくらいか」
「・・・・ッ」

 聞いた話では、東郷の奥方はすでに亡くなっている。
 だから、娘とふたりで暮らしてきた。

「どうも気が弱い娘で、ひとりで婿捜しは苦戦しそうですなぁ」

 東郷の右腕から力が抜け、勝流の頬から滑り落ちる。

「だったら・・・・ッ」

 その手を取り、勝流は真正面から東郷の目を見た。

「俺が貰って、お前に花嫁姿を見せてやる」
「しかし、勝流様には・・・・ッ」

 東郷の視線がリリスへ流れる。
 死にゆく海軍卿の娘より、リリスと婚姻する方が政略結婚として意義は高い。

「大丈夫、何とかする」

 一夫多妻など、この国では常識だ。
 リリスの本国ではどうかは知らないが、郷に入っては郷に従う、である。

「だから・・・・ッ!?」

 衝撃と共に勝流は弾き飛ばされた。

「前部被弾! ヒデェ・・・・ッ。大砲があった場所だぞ!」

(くそっ。二門中一門やられたか・・・・ッ)

「勝流様・・・・指揮、を・・・・」
「指揮? 指揮だと!?」
「はい。この艦には・・・・勝流様を除き、適任者が、いません」

 副長はすでに負傷しており、東郷も斃れた以上、「霧島」に指示を出せる人間がない。
 それでも「霧島」乗組員は最後の命令である「距離を詰めろ」を忠実に守っていた。

「勝利を・・・・ッ」

 東郷が血を吐きながら言う。
 冷たくなりつつあるというのに、今なお力を失わない眸。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」

 その眸に気圧され、だが、逸らすことのできなかった勝流は、己の内から湧き起こる激情に任せて言い放った。

「任せておけ! 俺は"海将"・鷹郷実流の嫡男で・・・・ッ」

 東郷の手を振り払うように立ち上がり、宣言する。

「初代海軍卿・東郷秀家の義息なんだからな!」

 高らかに言った勝流は、東郷と一瞬だけ視線を交わすと走り出した。
 途中、気絶しているリリスを背負い、帆柱の下まで行く。

「平左! 距離は!?」
「距離・・・・六町!」

(残り、一町か・・・・)

 見張員に確認した勝流は帆柱の影にリリスを下ろし、敵船を見遣った。

「―――っ!?」

 瞬間、嫌な予感がした。

「針路変更! 一時!」
「そ、それじゃあ撃ち返せねえ!」

 撃ち続けていた右舷の残り一門を担当していた砲手が思わず叫ぶ。
 だが、勝流以外に指揮官がいない「霧島」はゆっくりと首を振るようにして針路を変え始めた。

「敵船、発砲!」

 腹に響く轟音を以て大安宅が数門を発射する。
 先から続けて命中弾を得ていた砲撃。
 徐々に大きくなる黒点は、立て続けに水柱を上げた。

「ぜ、全弾回避!」

 見張員が震えた声で報告する。
 それらは先の針路で進んでいたら「霧島」がいたであろう場所に命中していたのだ。
 勝流の指示がなければ滅多打ちになっていた可能性がある。

(馬鹿正直に進んでいたから照準が合っていたんだな)

 おまけに勝流が選んだ針路は大安宅の射角からも外れるものだった。
 結果、大安宅は再び射程に「霧島」を捉えるために左方向へ舳先を向けようとする。

「しめた!」

 攻撃圏内に敵を捉えようとするのは正しい。だが、ここで速度を落として転回するのは愚策だった。

「喜介! 準備は良いな!」
「御曹司!?」

 左舷に温存していたデミ・カノン砲の砲手に駆け寄った勝流は、その肩を抱くようにして話しかける。
 その行為に仰天した砲手が声をひっくり返すが、勝流は気にしなかった。

「いいか、まもなく敵が射角に入る。反航戦だから機会は一回だけだ」
「・・・・・・・・・・・・お任せください」

 喜介と呼ばれた砲手の目の色が変わる。そして、そのまま麾下の者たちに檄を飛ばし、大砲に張りついた。

「射撃は任す、存分にやれ」
「うぃっす」

 「霧島」は転回する大安宅の船尾を通過するように高速で駆け抜けようとする。

「撃て!」

 その瞬間、喜介が叫んだ。
 そのまま砲手である自ら点火する。
 轟音と共に飛び出した砲弾は仰角を取らず、ほぼ水平射撃で発射された。そして、それはこれまでと違い、風の影響をほとんど受けることなく飛翔していく。

「「「・・・・ッ!?」」」

 球体の砲弾はまず、大安宅の柔らかな船尾上部に命中した。
 そのまま木っ端を散らしながら船内へ消え、船内構造を貫きながら船首下部まで到達。
 内側から突き破って海に到達する。
 水柱を背景に震えた大安宅は、その体を真っ二つにしながら沈み始めた。

「すげぇ・・・・」

 轟沈である。

「やった!」

 呆然とする勝流と歓喜する喜介。
 水兵たちも歓喜を爆発させ、拳を突き上げる。
 それに「霧島」以外の船からも歓声が上がった。
 旗艦の勝利を見届けたのであろう。
 それはいつしか勝ち鬨となった。
 だがしかし、本来ならばその勝ちどきの指揮を執らなければならない者が欠けていた。






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 歓喜の渦に艦隊が包まれる中、勝流は東郷の下へと歩いて行った。

「逝ったか」
「・・・・はい」

 東郷の側にいたのは、副長である。
 頭に包帯を巻き、折れた右腕を釣った姿で涙を流していた。

「今際には間に合ったか?」
「・・・・はい。司令は敵が沈むまではっきりとしておられました」
「・・・・そうか」

 ならば安心して逝けたであろう。

「副長、すまないが、指揮を頼む。俺には分からん」
「・・・・不勉強、ですな」

 左腕で涙を拭い、まるで東郷のように言った。

「・・・・ああ、これから頼むな」
「かしこまりました」

 そう言って一礼した副長が駆け出す。
 目的は信号旗だ。
 あれで艦隊の指揮を執るのだ。

「東郷」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ガクリと首を俯けたまま動かない。
 辺りに広がる血の海も、もはや広がることなく、乾き始めていた。

「とりあえず、勝ったぜ」

 その血を嫌がることなく、勝流は彼の隣に座る。そして、冷たくなった、それでもたくましい腕に顔を埋めた。

「・・・・・・・・・・・・ッ」

 それから聞こえ出した小さな呻きは、艦隊の誰にも聞こえない。
 ただ、いつの間にかいたリリスだけがそれを聞き、勝流の頭を撫でていた。






 甑島沖海戦。
 鵬雲五年四月二二日未明に勃発した、龍鷹海軍第一艦隊と虎熊水軍主力艦隊による艦隊決戦は同日に終結する。
 参加戦力は以下の通りだ。
 龍鷹海軍:戦列艦二(「霧島」、「桜島」)、安宅船四、関船九、小早三三、計四八隻。
 虎熊水軍:大安宅船一二、安宅八、関船二〇、小早五〇、計九〇隻。
 このうち、龍鷹海軍は戦列艦二が大破、安宅船一、関船三、小早一三を喪失した。
 損傷艦も多く、継戦能力を維持していたのは安宅船一、関船三、小早一五のみ。
 艦艇損耗率六割弱、死傷者九〇〇(約三割)という大損害を受ける。
 一方、虎熊水軍は文字通り全滅した。
 合計九〇隻、兵員にしたら約六〇〇〇にもなる。
 これだけの人員が戦死・捕虜となったのだ。
 虎熊水軍は一連の戦闘における経緯等を含む全てを喪失したのだった。
 これは東郷秀家の思惑通りだったが、彼自身の唯一の誤算は、彼自身の安否だったろう。
 龍鷹海軍は虎熊水軍を全滅させる代わりに、総司令官である海軍卿・東郷秀家を喪ったのである。










第二戦第七陣へ 龍鷹目次へ 
Homeへ