第七章「鬼と踊る後夜祭」/ 9



「―――これで・・・・全員のようです」
 午前1時。
 音川町の外縁を形成する山中で鬼族たちは落ち合っていた。
 昨日の夜、鹿頭残党と結城戦力とぶつかり、無事に撤退してきた者の数は隼人本隊32名。
 援軍であった旧陰形鬼部隊は16人。
 合計、48名だ。
 隼人本隊が音川町に乗り込んだ時は70名を数えた戦闘員が今や半数以下にまで減っている。
 河原で1人。ホテルで9人。文化祭初日で6人。そして、最終決戦で14人。
 合計30人が戦死していた。

「大敗だな」

 隼人は集まる者たちの顔を見て言う。

「ええ。鹿頭の誰も討てなかったですし。・・・・奴ら戦いがうまくなっています」
「だな。・・・・・・・・そうしたのは・・・・熾条一哉と名乗るあの、ガキか」

 隼人は一哉を思い出し、思わず身震いした。

(奴は・・・・何だ?)

 何度も自問してきたものを再び問う。
 あの横槍を入れてきた女が死んだ時、一哉の雰囲気が一変した。
 まるでスイッチが入ったかのようにガラリと入れ替わった。
 今までは人の隙を狙う狡猾な狐のような雰囲気だったのが、真っ正面から狩りをする虎のそれへと変わったのだ。
 同時に吹き荒れ、向かってきた炎。
 それはさながら地獄の業火を思わせる一撃。
 咄嗟に躱わしたそれは林に直撃しても何も燃やすことはなかった。だが、もし自分がそれに触れていたとすれば・・・・

(あれが・・・・標的以外を燃やすことのないという恐ろしき一撃・・・・?)

「―――首領?」
「―――っ!? あ、何だ?」
「これからどうします?」

 見れば全員がこちらを見ている。
 特に主を失った陰形鬼系の者たちが必死さを以て。

「帰投する。急いで態勢を立て直すぞ」

 隼人が判断し、鬼族たちは音川を去るために撤収作業に入った。

「とりあえず、陰形鬼の部族の者は従ってもらうぞ」

 彼らに主将はいない。
 それを討った者たちへの恨みもあるだろうから、隼人に従うこと自体には否と言うまい。
 事実、彼らは頷いて隼人の部族と共に撤収作業を手伝っていた。

「・・・・確かに舐めてはならんかったな、功刀」

 この戦、鬼族側の敗北である。
 完全に熾条一哉に踊らされてしまった。
 作業する者たちの顔はやはり浮かない。
 格下と侮っていた相手に完敗。
 自尊心は粉々に砕かれ、散々に踏み躙られた。

(だが、次は負けんぞ、若造ッ)

 確かに容易ならざる相手だ。だがしかし、それで戦意が衰えるほど隼人は柔にできていない。
 隼人たち鬼族は報復を胸に夜が明ける前に音川を去っていった。






終戦 scene

「―――すごい状態だね」

 瀞は中庭の惨状を見遣って呟く。
 結城から戦闘が終了したという知らせを受け、身体を引き摺るようにする鹿頭の人たちと中庭までやってきた。
 そこには力尽きたように倒れ伏す鹿頭系の術者たちがいて、大いに慌てさせてもらったが、どうやら全員無事のようだ。

「2人とも、大丈夫?」

 仲良く2人で寝転んでいる朝霞と鈴音に言う。

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「な、何?」

 じーっと凝視され、居心地が悪くなった。

「えっと・・・・」
「大変言いにくいのですが・・・・」

 2人は言葉を濁す。

「うん」

 逆さまに見える2人の逡巡する顔を見ながら小首を傾げた。

「この角度からだとね―――」
「―――下着が丸見えですの」
「―――っ!?」

 ズザッと距離を取り、スカートを押さえる瀞。
 その顔は真っ赤に染まっている。

「・・・・・・・・大丈夫、みたいだね・・・・」
「なんとか、ですの。さすがは長年の宿敵。ただの妖魔と訳が違いますの」

 ボロボロになった着物を示し、ムクリと鈴音は起き上がった。

「さ、早く帰りましょうですの」

 鈴音は隣の朝霞に言う。

「う〜、体力馬鹿め。本当は人の皮を被った化け物じゃないかしら」
「何ですの、それは!?」

 納得いかないというように仰向けだった朝霞に馬乗りになってその襟首をギリギリと締め上げた。

「うぐぐ。だって・・・・私もう、動けない・・・・もの」
「はっ。貧弱ですの。そんなんじゃこれから生き残れませんのよ?」

 立ち上がって朝霞を睥睨する鈴音。
 だが、朝霞も寝転んだまま負けじと睨み返す。

「ふんっ。私に守ってもらってた奴がよく言うわ」
「守ってあげたのは私でしょう!?」
「今生きてるのは誰のおかげかしらっ」
「それはそっくりお返ししますのっ」

 わーぎゃー、と罵り合う2人を眺め、瀞は苦笑する。
 前までの険悪さは薄れ、まるで気心の知れた友人同士のじゃれ合いに見えたからだ。

(やっぱり一哉の行ってた通り、相性がいいのかな?)

 そう思って瀞は「迎えに行くっ」と言っていた緋の向かった方面に視線を向ける。

「―――あ」

 木々の間から頭上にふわふわと旋回する緋を従え、一哉が出てきた。―――ぐったりする人を抱えて。

「蔡さんっ!? ぐふぇ!?」

 ガバッと朝霞が身体を気にせず立ち上がり、体の痛みに悶絶する。
 その声にお互いの無事を喜び合っていた鹿頭家の者たちが一哉の方を見た。

「―――鹿頭朝霞」

 穏やかというか感情の起伏が感じられない声音。

「は、はいっ」

 異様な力を感じ、背筋を伸ばして返事する。

「今でも変わらないか?」
「・・・・ふぇ?」
「今でも鬼族を相手にすることは変わらないか?」
「と、当然じゃないかしら。何今更そんなこと訊くのかしら?」

 朝霞にとって、鹿頭にとって鬼族は仇敵であり、代を重ねても討たねばならない相手だ。

「本当か? もう奴らに慢心はない。今度ぶつかる時は万全の態勢で全軍を以てして臨んでくるだろう。・・・・正直、今回よりも勝率は低い」

 歩いてきた一哉はゆっくりと蔡を下ろし、顔を上げる。

「―――っ!?」

 瀞は絶句した。
 一哉の顔がかつて地下鉄音川駅で戦場に向かった時と同じだったからだ。
 いや、厳密に言えば違う。
 あの時は激情に炙られた抜き身の太刀だったが、今はただ静かに、しかし、内にドロリとしたものを含む収められし太刀だ。
 抜かれた時が想像もできぬほど―――"黒"い。

「あ、う・・・・」

 意味もなく言葉が漏れた。
 今の一哉の変化を感じ取っているのは瀞だけ。
 いつも一緒にいて、見てきた瀞だからこそ見破れる、一哉の完全なる"擬態"。

(これが・・・・一哉の本質・・・・?)

 底の見えぬ漆黒の谷。
 その底で薪が尽きることのない憎悪の炎。
 そんな見るに禍々しい漆黒の炎が一哉の内で渦巻いている。
 瀞はまるで火山の火道のような心の闇に戦慄する。しかし、逆に決意を露わにした。

(蔡さん。私、あなたに頼まれたこと、きちんとします。だから・・・・だから、安心して眠って下さい)

 心の中でそっと手を合わせる。
 そこで蔡が満足そうに笑ったような気がした。

「―――鬼族に部族があることが分かった。そして、今回、その部族長2人を討ち取った」

 緋から戦況を聞いていたのだろう一哉は正確なことを口にした。

「今までは隼人の部族との抗争だった。・・・・しかし、今度からは―――全鬼族との全面衝突だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 朝霞はその戦いの大きさ、鹿頭が生き残るの苦難さを思う。だが、それを呑み込んで言った。

「―――変わらないわ。というか、あの"契約"はあなたが嫌って言っても鬼族を滅ぼすまで続行。破棄なんかさせないわ」

『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』

 鹿頭の術者からも反論はない。
 それは意地からではなかった。
 すでに死地に踏み込み、生還した者たちはとある念を抱いてるのだ。

『―――この人と一緒なら勝てる』

 鹿頭当主としての肩書きからしていうと自分が頼りないみたいで悔しいが、自分の感情など二の次。
 今の自分では敵わないのだから。

「そうか。じゃあ―――ここに住め」
「は?」

 朝霞は間抜けに口をポカンと開けた。






Epilogue;動き出す日常と暗躍する者たち

「―――37,5度・・・・。微妙なところかしら」

 朝霞は瀞から受け取った体温計を見て言った。
 見たところ、風邪というより疲れからの発熱といったところか。

「ごめんね。朝霞ちゃんも転入の手続きや家のこととかしないといけないのに・・・・」

 瀞は額に布を当てられた状態だ。

「いいえ。そういう大人が必要なことは香西たちに任せています。屋敷の移送関連も香西に一任してますので、私がいなくても大丈夫じゃないかしら」

 朝霞は体温計を仕舞い、持ってきたイスに腰掛けた。

「・・・・蔡さんも香西が供養しました。これで・・・・よかったのかしら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一哉が、いいって言ったから」

 時任蔡はこちら側で唯一の戦死者だ。
 一哉の師匠であり、鹿頭の面々を鍛え上げた武人。
 8月には瀞も危ないところを救ってもらっている。

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 沈黙が部屋を支配した。

「・・・・さ、病人はこのような陰鬱な空気はいけないのじゃないかしら。・・・・話題を変えましょう。蔡さんもそう思っているはずです」

 一哉を子どものようにあしらう彼女だ。
 確かにそう思っているかもしれない。

「そうだね。じゃあ・・・・その、キッチン・・・・どうだった?」

 ふっと微笑んで見せてから、瀞は恐る恐る訊いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何故か、鍋が真っ二つになってました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうして一哉はどんな料理にも鍋を使うのかな・・・・?」

 がっくりと体を起こした状態で瀞は項垂れる。
 そんな瀞に朝霞は声がかけられなかった。

(熾条一哉、様々なところで一般人に計れぬものを持っているのかしら・・・・)

 統世学園は今日も平和にドタバタが繰り広げられていることだろう。
 朝霞は呻く瀞を余所に窓の外から見える烽旗山を眺めていた。



「―――へえ、鹿頭当主はこの学園に編入するのか」
「ああ。鈴音通して親父に頼んだら何とかなった」

 一哉はイスの背もたれにもたれ、頭の後ろで手を組んだ。
 この場には一哉の他に晴也と綾香がいる。

「"戦場の灯"に? アンタ、あの人のこと嫌ってなかった?」
「利用できる者はする主義だ」
「うっわ言い切ったわね、こいつ」

 綾香は呆れたように首を振った。そして、思い出したように鞄から自分の弁当を取り出し―――

「ふっふ〜ん」
「くっ」

 ニヤニヤする晴也に歯噛みしつつもうひとつの弁当箱を取り出し、晴也の前に置く。

「ちゃんと覚えてたか。偉い偉い」
「く、屈辱・・・・っ」

 昨日、賭をして晴也が勝ち、綾香が弁当を作ってくることになっていたのだ。

(まあ、賭自体が晴也の仕組んだものだったから、山神に勝ち目なんてなかったんだがな)

 晴也曰く「たまに弁当も食いたい」ということらしい。
 一哉にしてみれば栄養補給なのだからどうでもいいのではないかと思うのだが、違うらしい。

「それにしても・・・・お前金持ちだったんだなぁ」

 ほくほくと結び目を解きながら晴也が言う。
 殺意さえ孕んでいそうな視線を全く気にしない。

「鎮守建設の割引っていっても元が元なら辛いもんがあるだろ」

 鎮守建設とは退魔関係の建築では国内トップだ。
 建築物の対妖魔構造や術式を紛れ込ませるという本格建築を売りにし、その社長が結界師総本山――鎮守家の当主なのだから、それは誰だって飛びつく。
 だからか、やや高めの建設費でも利用が絶えない大企業である。

「でも、せっかくだからなぁ。手入れも委員長がたまにしてくれるらしいからな。後夜祭での戦力を見れば本拠が要塞である方がいい」

 鬼族と激突した後夜祭から1週間が経った。
 鹿頭家は一哉の意向通り、紀伊山地の土地を売り払って音川への移住を決めていた。
 元より、朝霞は本拠を移すつもりだったようでその辺りの未練はなかったようだが。
 今、朝霞以下鹿頭家は遺品の整理や正式な葬儀、その他の庶務に追われている。
 新天地での暮らしの基盤を作るため、日夜働いている彼らを一哉が資金以外で支えることはしない。
 その辺りの組織運営は一哉の管轄外であり、それに介入すれば鹿頭家を取り込むということと同じだからだ。
 一哉は鹿頭家を鹿頭家のまま、自分との共闘関係での付き合いでいたいのだ。だが、そのための資金援助などには惜しみなく参加した。
 そんな両者の関係は株式会社と大株主の関係に近いかもしれない。

「まあ、中東で荒稼ぎした分、な。おかげで手榴弾とかの補給ができないなぁ」

 ふー、っと息と共に頬杖をついた。そして、一哉は思い出したように自分の鞄を漁る。

「アンタの頭ん中はそれだけかっ。ったく、で、瀞は? 購買に走ってないんじゃ、アンタも瀞の手作り弁当なんでしょ?」

 ザワッと綾香の声を聞き、クラス中がざわめき、一哉の返答に集中した。

「わ、渡辺さんの手作り弁当!?」
「くそ、一緒に住んでいるだけでも万死に値する大罪というのに・・・・」
「熾条くんはどれだけ罪を重ねれば気が済むの!?」
「ってか、斉藤、お前も渡辺さんの弁当狙ってるのか?」
「ふん、当然。あの娘の料理ってすっごくおいしいのよ?」
『『『な、何ィ!? 確かに料理はうまそうだったが、いざ肯定されるとさらに殺意が湧き起こるというもんだっ』』』
「今度頼もうかな。ね、佐倉」
「だね」「女子ども卑怯っ」

 湧き起こる波乱を意に介さず、一哉は綾香の問いに答える。
 それがさらなる波乱を巻き起こすとは考えもしなかった。

「んあ? ああ、あいつは風邪でダウン。なんか寒いのダメらしい。そんで金欠だから家にある食材で適当に"作ってきた"」

『『『『『―――なっ!?』』』』』

「いやぁ。爆発せずに作れたから問題なしだ。何故か瀞の熱が上がったけどな」

『『『『『そりゃ上がるだろうよッ!』』』』』

 思わず全クラスメートがツッコミを入れてしまう。
 それほどツッコミどころ満載だった。
 そんな間に一哉の手が弁当の蓋を開け―――

「―――させるかっ」
「「「「オオッ!」」」」

 クラスを代表した決死隊が一哉に飛び掛かる。しかし、それは愚行。
 晴也や綾香のように弁当抱え、窓から飛び降りるのが、真の利口者というものだ(※注 ここは3階です)。

(鹿頭家という戦力を持った。当面は鬼族だが、本題はその裏だな・・・・)

 一哉は隼人との戦闘中に蔡の動きが止まったのを見ていた。
 おそらく、薬でも盛られていたのだろう。
 その盛った者こそ蔡の言う真の仇。
 直接手を下した隼人は朝霞に任せるとし、一哉はその裏にいる者を焙り出すことが重要だ。

(そして、そいつらが鬼族を援助しているに違いない)

 蔡はいろいろ情報を抱えたまま逝ってしまった。だが、わずかに漏らした情報は大海原で進退窮まっていた"東洋の慧眼"――熾条一哉という戦略家を動かすに足る。

(鬼族という難敵を先鋒に使う大組織。・・・・旧組織に相対する者、か)

 敵は強大。
 だがしかし、相手にとって不足なし。
 持てる力を存分に発揮し、必ずやその大木を倒して見せよう。

(何するにしても腹が減ってはいけないな。先人も良い言葉を残すではないか)

―――パカ

『『『『『―――――っっっっっっ!?!?!?!?!?!?』』』』』

―――閃光と轟音が教室を蹂躙した。



 時刻は午後9時32分。
 場所は東京のとある漆黒のビル群。
 極東を代表する大都市は闇に負けじと人工の光を撒き散らし、まるでこれからが今日の本番だと言わんばかりに街を照らし出していた。
 無数の自動車が道を走り、それに負けないくらいのネオンが輝く。
 人々のざわめきや機械の駆動音。
 様々な音が街に溢れる中、この建物群の周りは常にひっそりとしていた。
 50階を超える高層ビルが建ち並び、面積も都内にしては馬鹿みたいに広い。
 その中は軍事施設と言っても差し障りない設備があるが、誰も異常を感じ取ることのない空間だった。

「―――局長」
「・・・・ん?」

 そんなビルの一室で"監査局長"・功刀宗源は眼下に広がる夜景をその眸に映していた。
 側近であり、特赦課課長として畏れられている神忌が部屋の隅のデスクから言う。

「東名高速の件で・・・・スカーフェイスが来ています。当然ながら面会を求めてるが?」
「・・・・サーラはどうした?」

 秘書を務める外国人だ。
 本来、来客を告げるのは彼の仕事ではない。

「もう帰宅しました」
「・・・・そうだったか」

 思ったより長い間外を見ていたようだ。

「入れろ。報告を聞く」
「了解」

 功刀は自分の席に座り、扉が開くのを待った。

「―――フ、フフフ。ご無沙汰しておりました、局長」

 扉が開き、その向こうから不気味な笑みを浮かべた少年が姿を現す。

「早速ですが、ご報告させていただきます、フフ」

 監査局。
 組織に所属する者の動向を調べ、機密漏洩がなされていないかを調べる捜査機関である。
 言わば組織内の犯罪を調べる機関だ。
 当然のことながら組織員たちには嫌われており、所属する監査局の者はほとんど公にされていない。
 公にされているのは功刀や神忌といった監査局の上層部の者たちであり、現場で働く者たちはコードネームを与えられ、必要に応じて任務が与えられるという扱いだ。

「東名高速を西下中の特務第三部隊急襲の件ですが、我々が手を下すまでもなかったようです」

「・・・・何?」

 功刀は巌のような顔をわずかに訝しげに変え、そのまま黙り込んだ。

「どういうことだ?」

 神忌が功刀の代わりに訊く。

「はい。僕の部隊が現場に着いた時、すでに第三部隊は全滅していました」
「・・・・では、報告通りだってか?」

 東名高速にて鬼族討伐に出たSMO本部特務第三部隊は愛知県に入った辺りで正体不明の賊に襲われ、隊員47名全員が死亡するという大惨事の本部に報告されていた。
 幹部などの上層部たちには追記して「旧組織側からの攻撃可能性高し」とある。

「ええ、僕たちも久しぶりに暴れられると意気込んでいたのですが・・・・拍子抜けも良いところです」

 本来は彼の部隊が強襲し、旧組織の仕業にして壊滅させる手筈だった。だが、これは本当に旧組織が手を下した可能性がある。

「どこの者だ? 特務第三部隊は本部の精鋭のひとつ。それを全滅させるとは、その辺りの葉武者一族ではないぞ」
「ええ、それを見極めるのが肝心。・・・・フフ、局長。事態は思わぬ好転を見せているようですね」
「・・・・うむ」

 功刀は立ち上がり、再び窓の外へと視線を向けた。
 眼下に広がる大都会。
 そこに住む者は裏など存在せぬとばかりに表を楽しんでいる。

「もう少しで・・・・変革の時だ。・・・・この、この堕落した社会に活を入れてくれる」

 宣言する功刀の背後でスカーフェイスが欲望剥き出しの表情を作り、神忌が巻き起こるだろう惨事に嗤った。










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