第三章「テスト、そして神馬」/4


 

「―――まさかテスト前に喚び出し喰らうとはな。・・・・まあ、テストなんぞどうでもいいが」

 その夜、少年は神代神社に派遣されていた。
 付き従う大人たちはさながら鑑識課の者たちのように現場検証に励んでいる。

「いい、二礼二拝一礼だからね? 二拝が終わった時に願い事して、最後に礼を一回。分かった?」
「うんっ」

 場にそぐわない――いや、雰囲気を除外すれば至極当然とも言える――会話が聞こえ、元気な柏手が聞こえた。

「「せーの」」

 二礼、二拍、手を合わせたまま一礼とともに一言。

「まんまんちゃんっ」
「宗教変わったよ!?」
「あれ?」

 そして、オチは間抜けだった。

「・・・・・・・・・・・・さて」

 少年――熾条一哉は少女たちを連れてきたことを若干後悔したが、すぐに意識を切り替えた。

(大した戦闘があったとは思えないな・・・・)

 境内はきれいなものだ。
 破壊が繰り返されたものではないらしい。

「どうするのかしら? 私たちに探索は無理と思うけど?」

 逃げた妖魔が派手に事件を起こしてくれているならば見つけやすいが、昨日の夜は何も起こらなかった。
 急を聞いて駆けつけた結界師が音川町から逃げ出せないように陣を張っているため、逃亡したとも考えにくい。

「朝霞、今使える人員は?」
「・・・・んー、ざっと7、8人ね」

 朝霞は簡単にだが、現有戦力を口にした。
 強豪とは言い難い鹿頭家は退魔だけでは生計を立てることが出来ない。
 鹿頭家は十数名の実戦要員がいるが、仕事や怪我などで動員力が決まるのだ。

「・・・・人海戦術は無理だな」

 どれほどの戦力か分からない敵を相手にするのだ。
 捜索部隊は最低2人、できれば3人をチームにして展開し、その報告を受けて急行する本隊が5人ほど欲しいところだ。
 現状の本隊一、捜索部隊一では効率がいいとは思えない。

「ってか、【結城】が動けばいいんじゃないの?」

 音川町は結城宗家の縄張りである。
 彼らが出張れば隠れている妖魔を見つけることなど、造作もないだろう。

「あー、音川はな、鹿頭が進出する関係で、【結城】は管轄から外したんだよ」
「ぬなっ!?」

 今知る新事実に驚愕する朝霞を放置し、思考に沈んだ。

(神馬が暴走したとなれば、おそらくは突撃以外の戦闘力はないだろう)

 だがしかし、銃器が発達する前は貴重な突撃戦力として重宝された騎馬だ。
 その戦闘力は計り知れない。

(捕捉しても逃げられる可能性がある。遭遇戦は辛いな)

 どうにか見つけた後は逃げられない場所に誘導する方が利口そうだ。

(だとすれば・・・・どこが・・・・)

 一哉の脳が音川町の地図を映し出そうとした時、ポケットに入れた携帯が震えた。

「晴也?」

 取り出した携帯のディスプレイに表示された名前を見て、一哉は眉をひそめる。

「・・・・もしもし?」

 考えても仕方がないので、一哉は早々に出ることにした。
 もしかすれば、この件とは関係ないかもしれない。

『あ、一哉か? 頼みがある』
「あん?」
『単刀直入に言うぞ』

 電話の向こうの晴也は愉快犯としての晴也ではなく、"風神"・結城晴也としての晴也だった。

『――― 一哉、お前はこの件から手を引け』






穂村家scene

「―――さて、と・・・・」

 直政はこっそりと二階にある自室の窓を開いた。
 手にはしっかりと靴が握られている。
 時刻は午前1時。
 草木が眠る丑三つ時には早いが、たいていの家庭は寝静まっている時間だろう。

「っと」

 しっかりと着地し、直政は家の垣根を越えた。

『よろしいのですか?』
「あん?」
『おひとり、ですよ?』

 胸ポケットから肩に移動した刹がいう。

「・・・・いいんだよ」

 病院から帰った直政と心優はそのまま唯宮家で勉強会に突入した。そして、3時間ほどみっちりと心優の頭に叩き込む。
 心優は解散と同時にベッドに倒れ込んだので、今夜は回復できないだろう。

「亜璃斗は心ここにあらずだったからな」

 夕食の支度をして呼びに行くと机に向かったまま意識を遙か遠くに飛ばしていた。
 勉強しようと問題集とノートを開いたのだろう。だが、ノートにはひとつも問題が解かれていなかった。
 帰宅してからすぐ始めたというならば、5時間以上は放心状態だったと思われる。
 そんな精神状態の亜璃斗を戦場に連れ出すなどできるはずがない。

「あとで文句言われるかもしれないけど、怪我するよりましだろ」

 未練がましく家を見ていた刹を放っておき、直政はてくてくと歩き出した。

『ところで、どこに向かってるんですか?』

 いつもの通学路を歩いていた直政に刹が問いかける。

「まあ、とりあえずは神代神社の近くに行こうかな、と」
『そこから索敵ですか?』
「そうそう。やっぱ、最後に目撃された場所から全方向が行動予想方向だと・・・・中心部からの索敵が一番、マシだろ?」

 話しつつも通常の索敵は行っている。
 ふたりが話す索敵とは術式を使ったもののことだ。
 直政は刹の指導の下、御門流地術第三位と言われるものならば、全て習得していた。
 尤も習得した術式が第三位だった事実は習得した後から聞いたのだが。

『しかし、意外でしたね』
「何が?」

 とりあえず歩くだけなので、刹からいきなり雑談をしてきた。

『御館様が人に物を教える事実が―――ぁあ!?』

 肩から刹を振り落とす。

「失礼だな、キミィ」
『あ、待って!? 足の裏に私いますっ』

 そのまま軽く踏みつけた。

「ん〜? 反省の見えない小動物はプチッといっちゃうかもな〜」
『アー!?』

 ひとしきり力を入れたり抜いたりしながらお仕置きする。

「ったく、見事な反面教師だよ」

 心優がいなければ、ここまで人に教えることはなかっただろう。

「心優には世界中を飛び回ってるお兄さんがいてな」
『あの方の兄というならば、本当に飛び回っていそうですね』

 言うまでもなく、唯宮財閥の跡取り息子である。

「はは、破天荒というなら一緒だよ。だからかな、言われたんだよ」
『何を?』
「『僕の眼に入れると監禁してしまうほど可愛い心優に紅一点でもつけたら、君の人生を紅一点張りにしてあげるからね♪』」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 何とも濃い一言に刹が絶句している。

『目に入れても痛くない、という表現をそこまで変革させ、紅一点を同じ文章の中で別の意味で使うとは・・・・やりますね』
「そこかよっ」

 思わぬ切り口にツッコミを入れた。

『何を言うのですか、日本人として生まれた以上、言葉遊びのおもしろさは理解できているはずです。確かにそのおもしろさ故に昨今は言葉が崩れてきていますが、これは賢い言葉遊びです』
「いきなり饒舌になって楽しんでるのは分かるけど」

 直政は語尾をゆっくり発音しながら腰を落とす。

「お出ましだぜ」

 通常索敵が捉えた、不自然なまでの妖気。

(妖気? これはただの禍々しさじゃないぞ?)

 そう、言うなれば、邪気だ。

『おやまあ、何とタイミングのいい』
「ってか、逆に馬みたいな奴が隠れるのってこの辺りしかないか」

 ここは川のすぐ近くだ。
 人目を避けるためにはそれなりに人気がなく、さらには隠れる場所の多い地域が選ばれやすいだろう。
 その条件で言えば、この辺りは打ってつけだった。

『神代神社に行く手間が省けましたね』

 相手はまだ直政に気がついていない。

『不意を打ちますか?』
「逃げられるのは嫌だから・・・・とりあえず結界だな」

(思い描くは箱庭。一辺が50メートルの箱庭・・・・)

 神馬と直政の中点を対角線が交わる点とし、その四隅に<土>を配置した。
 この術式は直政と亜璃斗が敵を見つけた折、逃げられないようにするものである。
 戦場に臨む前にその戦場を整える。
 これは索敵力に秀でた地術師ならではの戦略であった。

「さあて、ならば・・・・」
『征きますかっ』

 何故か戦う直政よりも戦意旺盛である刹が肩の上で逸る。しかし、駆け出そうとした直政は急遽足を止めた。

「ノォッ!?」

 慣性の法則に従い、刹の小さな身体が前方に吹っ飛ぶ。しかし、<土>が知らせた情報を精査するのに直政は必死だった。

「こいつは・・・・ッ」



「―――いっちゃった・・・・」

 亜璃斗は周囲に気を配りながら歩き出した兄を二階の自室から見下ろした。
 彼は結局のところ、亜璃斗に何も相談せず、またひとりで戦場へと歩んでいく。
 そう、亜璃斗は何も聞いていない。
 よって、亜璃斗は神代カンナが封印していた神馬によって負傷し、その退治を依頼されたとは知らない。
 いや、知らないとは語弊がある。
 正確に言えば、後者――依頼されたという事実を知らないのだ。

(敵は・・・・神馬・・・・)

 卓越した情報収集力を誇るといっても地術師のそれは戦場把握に近い。
 風術師のように空気を介して情報を盗み聞きするなどと言う芸当はできない。
 ならば、どうして亜璃斗がその情報を知っているのか。

「また・・・・鹿頭と?」

 真相はともかく、亜璃斗はある程度の情報を有していたが、そこから下された直政が動く理由は事実とは異なっていた。
 彼女はこの音川町に存在する退魔組織――鹿頭家を疑っている。
 鹿頭家――炎術師は地術師とは正反対の属性を有する能力者だ。
 能力系統はエネルギー。
 物理攻撃しかできない地術師とは違い、莫大なエネルギーで敵を駆逐する戦士。
 だが、戦場支配とも言える圧倒的なエネルギーは広範囲の索敵には向かず、敵と会敵するには苦労する。
 直政を使うことでそれを回避しようというのだろう。
 直政が探し出した敵に向け、鹿頭の術者が動く。
 鹿頭家にとって、直政の存在はレーダーなのだろう。

(馬鹿にして・・・・)

 直政は名門御門宗家の宗主だ。
 鹿頭家は所詮分家。
 格が違う。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 窓から離れ、ベッドに腰掛ける。

『俺に何か言いたいなら御門直政と話し、御門宗家の総意として来い』

 熾条一哉に言われたこと。
 直政と話すこと。
 それは未だ果たされていない。
 直政に話したのはほんの一部だけだ。そして、それは今後の御門宗家についての話し合いではなかった。

「兄さん・・・・」


【―――行かないのか、娘よ】


「―――っ!?」

 脳裏に響いた声に亜璃斗は思わずびくりと背筋を震わせる。

「だ―――」
【―――れ? とは言うでないぞ、我が氏子よ】

 「氏子」という言葉で分かった。
 「我が氏子」という言葉を発せられるものは「氏神」以外に存在しない。
 ならば、穂村家にとって氏神とは御門宗家の守護神以外にいなかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 亜璃斗は呼ばれていると判断し、一階へと降りる。そして、気配で直隆が眠っているのを確認し、仏間のふすまを開けた。

【うむ、よく来た】

 越中頭形金箔押天衝脇立兜に朱漆塗桶側胴具足という代物が声を発する。
 このものこそ、御門宗家の守護神であった。

「・・・・何か?」

 亜璃斗は鎧の前に正座する。
 この神はよく祖父とお茶を飲んでいるが、亜璃斗は持ち帰って以来、ほとんど話した記憶がなかった。

【宗主は出陣したぞ】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 やはり、神宝の化身である刹は守護神の端末なのだろう。

【また、あやつは蚊帳の外なのか?】
「・・・・ッ、蚊帳の外は―――」
【お前ではなく、直政だ】

 かぶせるように言われた言葉に反論を飲み込んだ。

【お前が統括している分家たちは本来、直政がなすもの。そして、お前は直政から任された陣代ではなかろう?】

 陣代とは総大将の代わりに軍勢を率いる部将のことだ。
 当主が幼少だったり、病気だったりする場合に任じられる役職であり、朝廷で言う摂政に近い権限を持っている。
 穂村家が御門家の陣代であったのは御門家先代――御門直虎から穂村家当主――穂村直隆に、である。
 直隆が負傷して戦場に立てなくなったことで、亜璃斗にその任が移されていたが、それは新宗主――直政が生まれるまでのことだ。
 御門宗家が継承された以上、その指揮権は直政に戻る。しかし、現状、亜璃斗はその権力を手放していない。
 時が時ならば、専横という罪で討伐されてもおかしくはなかった。

【お前の考えていることは分かるぞ、娘】
「?」
【直政は頼られると断れない性格をしている。いや、困ってる奴を見て、放っておけないお節介を持っている、か】

 ふっと笑みの気配を滲ませた守護神。
 そう、穂村直政とは基本的に困っている人を放っておけない人だ。
 拉致同然に戦場に駆り出されたのにかかわらず、戦後も変わらずその人間と付き合っている。

【だが、この乱れた裏に、御門家の戦力を必要とする者がいる】
「そうです。兄さんが戦力を手に入れれば・・・・」
【その者たちに頼まれ、戦場へ一族を連れて行く】
「・・・・はい」

 現在、御門宗家の戦力は分家もしくは諸家レベルと言える。
 それは数もそうだが、要である直系戦力や有力分家術者が"鬼神"を始め、異名持ちからすれば心許なかった。
 また、御門宗家は集団戦を得意とする組織であり、その訓練をほとんどしていない現状では烏合の衆として蹴散らされる可能性がある。
 直政に指揮権を戻せば、苛烈な新旧戦争にて磨り潰される可能性が高かった。

「今の御門家は新旧戦争を生き抜くだけの力はありません」

 亜璃斗の任務は御門宗家を絶やさぬことである。

【貴様、何を聞いた?】
「何を・・・・?」
【直政が我を・・・・御門宗家を継いだあの日、貴様は直政から何を聞いた?】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 守護神の言葉に亜璃斗は沈黙した。

『ただ、俺は隠れてるんじゃなく、胸を張ってこの世界を生きていきたいと思う。そのために立ちはだかる敵がいるなら踏み潰す。それだけだ』

 直政が示した覚悟。
 兄は今、まさにそれを体現しようとしている。

「・・・・でも、危険すぎる」

 兄の勇気は本物だと思う。だがしかし、それは蛮勇と称されるものではないだろうか。

【ならば守るがいい】
「―――っ!?」
【直政が己が信念に基づき戦を起こすなら、その戦から生存できる術を作り上げればいい。直政だけでなく、一族全員】
「簡単に・・・・ッ」
【だがしかし、引き続けていても逃げられないのであらば、攻め込むのも一興ぞ。退き戦というものは必ず相手との戦を終わらせる攻勢が必要じゃ】

 状況が分からぬまま巻き込まれるよりも、状況を分かった上で踏み込む方が、同じ戦うというならば有利になる。だがしかし、後者は一度踏み込めば容易に変えることのできない修羅の道だ。

【うだうだ悩んでいても始まらぬぞ、娘。現に直政は自分こそが御門宗家の戦力であるというように戦場に臨んでおる】

 直政は今日も御門宗家のためでなく、自分が納得したいがために出陣した。
 それは人のためとも言えるが、行動原理は自分のため。
 「人のために【力】を振るいたい」という自分の願いを叶えるため。

「そこに戦略的考えなんて存在しない・・・・」
【ああ、ないだろうな。奴にそういうことを考える思考回路はなく・・・・・・・・同時に情報もない】
「―――っ!?」

 直政が現在の退魔界と繋がっているのは鹿頭朝霞と穂村亜璃斗とだけだ。そして、鹿頭朝霞の上位存在である熾条一哉が言うに、御門家が統一されるまで話すことはないという。
 それはつまり、戦略的観点からものが見られない状況に追い込むことで戦術レベルにて活躍してもらう、ということだと亜璃斗は考えていた。
 前例としてはやはりゴールデンウィークの一戦。
 そして、亜璃斗は直政に退魔界のことなど何も教えていない。
 だからこそ、直政は情報を求めるために戦場に行くのだろうか。

【刹が言うに、この事件、ただの封印が解けたものではないようだぞ? もしかすれば、あの、聖域前の戦いと同じやもしれん】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 聖域前の戦い。
 ピュセルと名乗ったシスターが繰り出す漆黒の騎馬隊は確か、初戦闘はこの町。

(【結城】から何の情報もないから終わったと思ってた。まさか解決してない?)

 全身から血の気が引く。
 あのデュノワ一騎でさえ手強いのに、彼らはまるで軍団のような数で存在する。
 また、それ以上に手強いであろうピュセルが兄を狙っている―――

「・・・・ッ」

 亜璃斗は立ち上がる。

【行くのか?】
「はい」

 ゆっくりと甲冑を振り向く亜璃斗。

「やっぱり、どれだけ考えようと伝わりません。だから、話してきます」
【ふ、青春よのぉ。まあ、しかし、事が起きてからでは遅いからの】

 走り去る亜璃斗の背中に優しい視線を送りつつ、守護神は氏子たちの無事を願った。






ピュセルside

「―――ふむ、やはりあの"皇帝"が大人しくしているわけがなかったな」

 ピュセルは閉じていた目を開け、ステンドグラスを見上げた。
 月の光を受けたステンドグラスは色取り取りに輝き、月光りを染め上げて教会の床に映し出す。
 その光を受けながら立ち上がったピュセルは直立不動のまま動かない麟へと振り返った。

「"皇帝"自身は発見できていないが、確実に"皇帝"の仕業と思える奴に出会ったぞ」
「・・・・それで?」
「ふむ・・・・」

 ピュセルは腕を組み、小さく息を吐き出す。

「取り囲んだのは五騎。戦闘開始と共に一騎が殺られ、激戦の末に脱出された」
「・・・・え?」
「一連の戦闘で三騎が戦闘不能。残り二騎では攻勢に出られず、追撃しつつも増援を待つ状況だ」

 デュノワは決して弱くない。
 その包囲網を突破するとは、なかなかの戦闘能力を持っている証拠だ。

「この馬、手強いぞ」
「じゃあ、私も・・・・」
「お前が行っても迷うだけだ」

 駆け出そうとした麟の両肩を持ち、座席に押し込む。そして、ピュセルは追撃する騎士に視界を移した。

「赤い眼・・・・そして、角、か・・・・」

 そっと自らの手を目に触れさせ、ピュセルは嗤う。

「なるほど、神馬の【力】に邪気を混ぜたか。・・・・まるで、どこかの神に施した呪いのようだな」

 ちょうどその時、デュノワが追っていた神馬が別の敵と会敵した。









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