中部ソロモン海戦 -2


 

 1943年7月20日、ソロモン諸島海域。
 この日、現場にいたアメリカ軍は一大海戦を覚悟し、日本軍を探していた。
 日本海軍の真珠湾攻撃で敗れ、ミッドウェー海戦で痛打を与えるも第三次ソロモン海戦で大敗を喫する。そして、ガダルカナル島撤退戦でも一敗地に塗れた。
 全体の戦局は守勢から攻勢に移ってはいるが、アメリカ海軍は日本海軍にやられっぱなしなのだ。
 数度の決戦を経て、双方の主力艦喪失数には大きな開きがある。

 日本海軍は以下の主力艦艇(戦艦・正規空母)を失っている。
 戦艦「比叡」、「霧島」。
 空母「赤城」、「加賀」、「蒼龍」、「龍驤」。
 計6隻。

 一方、アメリカ海軍は以下の通りだ。
 戦艦:
 ネバダ級(35.6cm級)「ネバダ」、「オクラホマ」。
 ペンシルベニア級(35.6cm級)「ペンシルベニア」、「アリゾナ」。
 ニューメキシコ級(35.6cm級)「アイダホ」。
 テネシー級(35.6cm級)「カリフォルニア」。
 コロラド級(40.6cm級)「コロラド」、「ウェストバージニア」。
 ノースカロライナ級(40.6cm級)「ノースカロライナ」、「ワシントン」。
 サウスダコダ級(40.6cm級)「サウスダコダ」。
 小計11隻。
 空母:
 レキシントン級「レキシントン」、「サラトガ」。
 ヨークタウン級「ヨークタウン」、「ホーネット」。
 「ワスプ」。
 インディペンデンス級「インディペンデンス」。
 小計6隻。
 合計17隻。

 つまり、主力艦級の損失は1:3なのだ。

 アメリカ合衆国は大日本帝国の国力差で戦争には負けていないが、"海軍"というくくりで見た場合、戦績は1勝3敗だ。
 小さな戦いでも負けていることが多い。
 だから、ソロモン諸島海域にいるアメリカ海軍軍人は雪辱に燃えていた。


 だから、該当海域の主力艦隊・第3艦隊は、昨夜に見つけた日本海軍空母部隊目がけて突進した。






中部ソロモン海戦 -2

「―――いない、だと!?」

 1943年7月20日午前11時、サンタイサベル島北西。
 ここをハルゼー海軍中将が率いる第3艦隊主力が航行していた。
 いや、戦艦群を欠いた空母部隊が航行している。
 彼らが進む南方には戦艦群が撃退されたマニング海峡があった。しかし、そこにいた戦艦群は合流を諦め、マニング海峡南方へ抜けている。
 手負いの戦艦「インディアナ」を連れ、サンタイサベル島南方を避退していたのだ。

(だから、ジャップの艦隊は意気揚々とこちら向けて航行しているはずだろ!)

 ハルゼーは司令机に拳を叩きつける。

「あの獰猛なジャップどもがいないとは考えられん! もっとよく探せ!」
「しかし、司令官。すでに3度の航空索敵を実施しています」

 参謀長の言う通り、アメリカ軍は早朝にツラギ島のカタリナ飛行挺が1回、さらに空母艦隊から2度の索敵機を出していた。
 この間に見つかったのは、昨日に潜水艦が発見報告をした海域での艦艇残骸と油膜である。

(たったこれだけしか見つからないのは、何故だ!?)

 状況から日本海軍の何らかの艦艇が沈没したと見られていた。
 現時点では艦隊発見報告から続報のない味方潜水艦が攻撃し、反撃されて撃沈されたと考えられている。
 詳しくは水偵が着水して調べなければ分からないが、第3艦隊司令部は破片に水上艦特有の木材が混じっているという報告から十中八九、日本海軍の残骸だと判断していた。

「もしかしたら、日本海軍は撤退したのではないでしょうか」
「何!? どういうことだ!」

 ハルゼーは噛みつくように参謀長を睨みつけたが、彼も慣れたものだ。

「艦隊が現れた方位、状況からして、日本海軍の空母艦隊は準正規空母で構成されたものと考えられます」

 準正規空母とは、「雷鷹」、「鳴鷹」、「隼鷹」、「飛鷹」の4隻だ。
 4隻合わせてアメリカ海軍の大型正規空母2.5隻分と見られている。

「戦力劣勢の中、奇襲攻撃が失敗したので撤退したのではないかと」
「艦隊所属の1隻にダメージが出ただけで逃げるような奴らか!?」

 ハルゼーの叫びに参謀長は表情を変えずに答えた。

「いえ、私もそう思いますが、工業力が隔絶している中、これ以上の損害を日本政府が良しとしなかった可能性もあります」
「・・・・・・・・・・・・」

 先程も述べたが、日本海軍よりもアメリカ海軍の失った主力艦の方が多い。
 だが、この1年の間に数隻の主力艦を就役させたアメリカ軍の隻数と日本軍の隻数も隔絶していると考えられた。
 日本海軍は開戦以来の主力艦喪失数をカバーできていないと考えられている。
 さらに言えば、ミッドウェー海戦以来の主要海戦でほぼ必ず空母を失っている日本海軍が、改造空母とは言え、"準"正規空母を失うのは避けたいに違いなかった。
 奇襲効果がない、真正面からの戦闘で損害を出すことを嫌った可能性はある。

(筋は通っているか・・・・)

 ハルゼーは参謀長の考えも的外れではないと判断した。だが、そうなれば疑問も生まれる。

「では、日本海軍はどうやってニュージョージア島を救うつもりでいるのだ?」

 あの艦隊はニュージョージア島周辺のアメリカ海軍艦隊を撃破し、陸戦に対する海上支援を止めさせたいはずだ。
 日本陸軍は巧みな陣地戦を仕掛け、上陸したアメリカ陸軍はこれに対する効果的な砲撃ができていない。
 だから、アメリカ海軍が艦砲射撃でこれを援護していた。
 駆逐艦の主砲でも、陸戦からすれば立派な野戦砲なのだ。

(オレたちが援護を始めてから、陸戦はうまく進捗している)

 一向に前進できなかった前線が毎日進んでいると報告を受けている。
 とはいえ、かなりの損害を出しているのだが。

(逆に言えば、膠着状態にしていた戦線が動いていることで、日本軍は相当焦っていたのではないか)

 だから、劣勢でも空母艦隊を繰り出してきた。

「日本軍はこちらの戦艦部隊の撃退には成功しました。だから、ニュージョージア島北方を封鎖されることは阻止できた、と言えます」

 島北方に展開していたアメリカ艦隊は輸送船団と共に後方に下がっている。
 その穴を埋めて余りある戦艦部隊が展開するはずだったが、潜水艦攻撃を受けて、こちらも撤退していた。
 結果、ニュージョージア島北方海域は空いている。

「その海域を使い、小規模な輸送作戦を継続する可能性があります」
「日本軍お得意のチマチマした輸送ってことか」

 ガダルカナル島の戦力を維持した、潜水艦や小型艦艇、航空機による輸送作戦。
 アメリカ軍からしたら不効率極まりない戦術だが、確かに寿命延長程度の効果はある。

「そうやって戦力を維持し、こちらの艦隊の行動限界を見極め、満を持して主力艦隊を繰り出してくるのか」
「かもしれません。だから、主力艦隊はトラックからまだ動いていないのかと」
「むぅ・・・・」

 ハルゼーは顎をさすりながら唸る。

(この場合、どうするのが正解だ?)

 消えた敵艦隊を追撃するのか、それとも中断しているニュージョージア島の上空支援をするのか。


―――だが、その悩みは永遠に放り投げられた。


「―――ヘンダーソン基地より入電!」

 無電室から通信兵が駆け込んできた。

「・・・・ハァッ!?」

 暗号解読文を受け取った通信参謀が一目見て声を上げる。そして、慌てた様子でハルゼーたちの方に走り寄った。

「ヘンダーソン基地より援軍要請です!」
「「は?」」

 ヘンダーソン基地とはガダルカナル島にある一大航空基地である。
 1942年後半に日本軍と激しい攻防戦を繰り広げたが、日本軍撤退後は夜間空襲を受けるくらいだった。
 もちろん、夜間空襲で被害も出ているが、ハルゼーたちに援軍を要請するほどの事態にはならない。
 さらに言えば、今は夜ではなく、昼間だ。

「いったい、何が起きたというのだ?」

 参謀長が通信参謀に訊く。
 艦橋の皆の視線が集まる中、通信参謀は暗号解読文に視線を落として言った。


「―――日本海軍空母艦載機による、大空襲です」



―――時間が遡ること約30分。



「―――は? ハァァ!?」

 アメリカ海軍ツラギ島基地レーダー観測所。
 ここで監視員の大きな声が上がった。

「どうした!?」

 すぐに飛んできた上司に監視員が見たままを報告する。

「レーダーに感あり! 方位330°、距離100km、数・・・・100以上」
「方位330°?」

 そこは海上だ。
 ラバウルからやってくる日本海軍の攻撃隊とは違う。
 何より「100以上」という数字が非現実的だった。

「見せてみろ」

 上司もレーダー監視員だったことがあり、レーダーの見方は分かる。
 数秒、機械が示すデータを見ていた上司が、ポツリと言葉を漏らした。

「・・・・・・・・・・・・大変だ」

 監視員と同じ観測結果となった上司は慌てて内線の受話器を取る。だが、その受話器が音を発することはなかった。

 突然降ってきた六〇番陸上爆弾が、レーダー監視所を吹き飛ばしたからである。



「―――奇襲成功だ」

 1943年7月20日午前10時30分、ツラギ島上空。
 ここで日本海軍第三艦隊 空母「龍鳳」から飛び立った溝口忠政中尉が呟いた。
 それとほぼ時を同じくして、先行した戦闘機隊に随伴した二式艦上索敵機が奇襲成功を意味する「トラトラトラ」を発信している。
 これを受信した後方の攻撃隊本隊は奇襲効果を逃さないように速度を上げているだろう。

「さあ、俺たちも仕事をするか」

 溝口が見る上空に対空砲弾が弾ける煙は見えない。
 ニュージョージア島の戦い勃発後、ツラギ島-ガダルカナル島は後方航空基地となっている。
 日本海軍の昼間攻撃は鳴りを潜め、もっぱら夜間攻撃となっていた。
 このため、昼間はニュージョージア島への攻撃に集中し、上空警戒も電探に頼っている"現地情報"があった。

「俺たちの任務は・・・・」

 出撃前の打ち合わせを思い出す。
 目的:ツラギ島-ガダルカナル島上空の制空権確保
 そのための手段として、敵戦闘機の撃破、敵飛行場上空の制圧(戦闘機離陸阻止)、敵対空砲の制圧(対空陣地への機銃掃射)が挙げられている。

「よしよし、行っているな」

 溝口が見下ろした先には、基地への機銃掃射を請け負っている部隊が高度を下げていくのが見えた。
 溝口率いる制空隊は48機。
 溝口直轄の中隊12機が上空に残り、36機が先の飛行場・対空陣地制圧に出る。
 希望者には翼下に60kg爆弾を吊り下げさせ、破壊任務も負っていた。

(みんな太平洋戦線が初めてでも、中国戦線を経験している連中だからな)

 中国戦線は陸上飛行ではあるが、地上攻撃も主要任務のひとつである。
 そこで初陣から鍛えられた搭乗員が、配置転換で空母「龍鳳」、「瑞鳳」に乗っているのだ。

「よし」

 しばらくして、事前の情報にあった対空陣地に爆煙が上がった。
 六〇番より大きな煙だ。
 きっと積み上げてあった弾薬に誘爆したのだろう。

「徹底的に潰せ!」

 溝口が叫ぶと共に、地上で多数のオレンジ色の花が咲いた。



「―――どうなってんだ!?」

 アメリカ軍海兵隊に所属するチャールズ・クレノン上等兵が対空陣地の中で叫んだ。

「知らねえよ! レーダー監視員がサボっていたんだろ!?」

 同僚が叫び返す中、クレノンは対空機関砲にカートリッジを差し込む。

「よし、装填完了!」
「OK! これでも喰らえ!」

 40mm機関砲が我が物顔で上空を飛ぶ零戦に唸りを上げた。だが、高速で飛ぶそれはヒラリと躱して曳光弾の煌めきだけが上空に立ち上る。

「ヤベッ。あっちからゼロの奴が突っ込んでくる!」

 味方が撃たれたのを見たのか、飛行場周辺の重機や飛行機を撃っていた零戦が反転してこちらに向かってきた。

「どわっ!?」

 零戦が装備する12.7mm機銃が陣地周辺の土嚢をズタボロにし、40mm機関砲を吹き飛ばす。
 さらにすぐ横で同じく対空任務に就いていた機関砲座では20mm機関砲弾が爆発したのか、内側から土嚢が崩れた。

(あれじゃあ、中にいた奴は助からないだろう)

 一歩間違えばこちらがそうなっていた事実に総毛立つ。

「おい、こっちは砲を失ったんだ! 出るぞ!」

 このままここにいたら、いい的だ。

「わ、分かった」

 同僚を促し、土嚢の切れ間から外に出る。
 そこかしこで着弾の音と爆発の音が聞こえた。

「まるで真珠湾じゃねえか・・・・」
「知っているのか?」

 匍匐前進するクレノンは同僚に尋ねる。

「ああ、あの時は非番だったから基地にはいなかったが、な」

 1941年12月8日、ハワイ・真珠湾。
 これを知らないアメリカ人はいない。だが、その場にいた恐怖を知る者は少ない。

「化け物だよ、日本人は。どうやってレーダー網を掻い潜ったってんだ」
「知るかよ。・・・・ハァ、味方艦隊は何をしているんだか」

 日本海軍の空母部隊と戦うために有力な艦隊が出撃していたはずだ。

(まさかやられたってわけじゃあねえだろうな)

 そうなると悪夢だ。
 クレノンたち海兵隊が必死に陸戦で優位に立とうとする中、一大海戦で戦況が入れ替わったというならば・・・・。

(またガダルカナル島の戦いのように封鎖されるのか・・・・?)

 ガダルカナル島の戦況がアメリカ軍優位に傾くまで、アメリカ軍は多大な犠牲を払っている。

「た、辿り着いた・・・・」

 避難用の塹壕に転がり落ち、一息ついたクレノンは空を見上げた。

「・・・・・・・・戦闘機だけってことはこれから攻撃隊本隊が来るのか?」
「そうじゃねえか?」

 同じく転がり込んだ同僚が絶望しているような声で答える。

「・・・・生きていられるかな・・・・」
「さあ? 爆弾がここに落ちないことを願うしかねえさ」

 そう言って、同僚は鉄帽を深く被り直し、体を丸めた。




 日本海軍第三艦隊によるツラギ島-ガダルカナル島の空襲は三波に分かれていた。
 第一波は超低空を飛行した戦闘機だけによる奇襲。
 防空態勢を取らせない効果を発揮し、続く第二波・第三波に対する米軍の無抵抗を演出した。

 結果、邪魔されることなく爆撃した第二波は、800kg陸上爆弾を抱えた天山、250kg爆弾を抱えた彗星が飛行場滑走路、格納庫、修理工場、港湾施設を叩き壊した。
 第三波によりさらにそれは徹底される。
 米軍は一切の抵抗を許されず、地上・空中破壊によって航空機100機を喪失。
 艦船も24隻が撃沈破された。
 その中にはニュージョージア島に派遣されるはずの兵が乗った船もあった。
 結果、陸兵457名が戦死、約1,200名が負傷し、増援計画は中止される。
 最後まで米海軍艦隊に向けて援軍要請をしていた通信所も第三波で破壊され、ツラギ島-ガダルカナル島は完全に沈黙した。


 そもそも何故、ツラギ島-ガダルカナル島は日本軍の空襲に際して脆弱だったのか。


 ガダルカナル島の戦い後、米軍はこの周辺の基地を強化し、一時期は最大400機の航空機が展開していた。しかし、日本軍による第二次ダーウィン空襲によって多くの搭乗員を失ったニューギニア方面に転出。
 約250機でニュージョージア島の戦いを開始する。そして、戦闘で消耗し、この空襲直前には稼働機が180機まで減少。
 特に戦闘機を多く消耗したことで、空母部隊に増援を求めていた。
 しかし、この日は空母部隊が日本海軍との決戦ということで、朝からニュージョージア島制空や爆撃、周辺偵察に約60機が出撃。
 残った120機中ラッセル諸島に前進していた単発機部隊以外が襲われたのである。
 また、米軍は日本航空隊に昼間攻撃はないと踏み、防御態勢は夜間偏重としていた。
 この隙をつき、日本海軍は約500機の攻撃隊で、無抵抗の敵基地を叩き壊したのだ。
 これがニュージョージア島で耐え続けた陸軍に報いる完全勝利の要因である。
 結果、日本海軍は開戦以降問題となっていた敵陸上航空基地を無効化し、米海軍艦隊に集中することができるようになったのだった。




「―――草鹿がやりたかったことだろうな」

 敵基地を一刀両断する。
 一刀正伝無刀流第4代宗家である真珠湾攻撃を指揮した草鹿龍之介。
 彼に真珠湾攻撃で"敵基地第一次攻撃"を決断させた高松嘉斗の逸話を、日本海軍第三艦隊司令官・小沢治三郎海軍中将は知っていた。
 だが、元々一刀両断するほどの戦力を持っていればいいだけのことだったのだ。

(艦隊防空を考えずとも良い、とは素晴らしい運用だった)

 第三艦隊は大型空母4隻、中型空母2隻、小型空母2隻の計8隻。
 大型空母4隻、中型空母2隻だった真珠湾攻撃の頃より、小型空母分増えている。だが、この小型空母はミッドウェー海戦の戦訓から艦隊防空に特化していた。
 今回はこの部隊を制空隊として送り込んだ。
 彼らが破壊した地上施設を、さらに攻撃隊の護衛戦闘機隊が破壊する。
 戦闘機の地上攻撃の効果性を発揮した戦いだった。

(これをなすために必要なのは、最前線の奮戦と情報戦の優位、か)

「さあ、次は空母だ」
「はい。敵の位置はおおよそ予想できています。もうまもなく、索敵機がその海域に到達します」

 小沢の言葉を拾った参謀長・山田定義海軍少将が言う。

「敵は新型空母。2、3発の魚雷や爆弾では沈まないです。徹底的に痛めつける必要があるでしょう」
「そのための敵航空基地の完全破壊だ」

 小沢は力強く言った後、海図に目を落とした。

「まあ、まだラッセル諸島の単発機飛行場も残っているが・・・・」
「そこは問題ないでしょう。今頃、避難機の不時着対応で必死ですよ」

 そして、今夜のラバウルからの夜間爆撃で多大な損害が出るだろう。
 ソロモン戦線における制空権が日本軍の方へ転がり込みつつある。

「陸軍が耐えに耐え忍んだのです。盛大に蹴散らしてやりましょう」
「そのためには敵の詳しい位置と艦隊攻撃兵装の準備だな」

 小沢は航空参謀に視線を向けた。

「はっ、索敵機が敵予想位置に到達するまで後15分程度です」

 航空参謀は懐中時計に目を落としながら言う。そして、そこから顔を上げて小沢の顔を見た。

「第一次攻撃隊の準備は後30分ほどかかる見込みです」
「ふむ、急いで、だが確実に頼むぞ」

 敵発見と共に発艦はできない。
 それでも小沢は怒ることなく、各自に的確な作業を求めた。









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