短編「8周年記念と次への布石」


 

「―――また、ここ・・・・」

 渡辺瀞(蒼炎の灯)が目を開けるなりげんなりした。

「どこよ、ここ」

 その姿を見て、同じく周囲の真っ白な光景を見渡していた山神綾香(蒼炎の灯)が質問する。
 警戒してか、さっそくその手には大鎌が握られていた。

「臨戦態勢ばっちりすぎじゃないかしら?」

 右耳のイヤリングをいじりながら鹿頭朝霞(赤鬼、そして鎮魂歌)が呟く。

「あはは。ここはどこなんですかね!?」

 興味津々に周りを見回す唯宮心優(赤鬼、そして鎮魂歌)。
 ご丁寧に額に手を当ててひさしを作っていた。

「・・・・何なんですか、あなたたち。過去に見た人が混じってますけど」

 警戒心からか、紗姫(龍鷹戦記)が発光する。




「―――なるほど! 分かりました!」
「ついに電波を受信した!?」

 虚空に向かって返事した心優に、朝霞がツッコミを入れた。

「とりあえず~、ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・って、そもそもテールが4本しかありません」

 朝霞を無視し、心優が周りを見回す。そして、朝霞と紗姫を確認した。

「テール?」
「尻尾って意味よ」
「そうなんですか!?」
「あんたは知ってなさいよ! ツインテールにしてんでしょ!?」

 小首を傾げた紗姫に朝霞が教え、それに驚いた心優に朝霞がツッコミを入れる。

「あはは、朝霞ちゃん楽しそうだね」
「下級生の中でも気苦労屋なのね」
「その認識は否定していいかしら!?」

 瀞と綾香にもご丁寧にツッコミを入れ、自らの行動でその主張を否定してしまった朝霞は肩を落とした。

「で、どういうことなのかな?」

 瀞はうんうんと悩んでいる心優をわずかに見上げながら訊く。
 152cmの瀞と159cmの心優と、意外と身長差があった。

「いえいえ、どうやら、このScarecrowというサイト、8周年らしくて」
「お~、そうですか。そこまで行きましたか~。・・・・・・・・・・・・チッ」

 さらに紗姫がふたりを見上げる。

「いま舌打ちしたよね!? ・・・・って、前会った時より大きくなってないかな?」
「私の世界では2年近く経っていますから。さすがに成長します」
「それでもちっちゃくてかわいいです!」
「むぎゅ!? ちょ、何なんですか、この人!?」

 心優に抱きつかれる紗姫。
 逃げ出そうとジタバタしているが、巧みに押さえつけられていた。
 ピカピカと発光しているのが面白い。

「おーい、そこの書記。さっさと仕事しろ」
「あ、はい」

 紗姫を抱えたまま心優が正気に戻った。

「とりあえず、この世界の人からの指令で、8本のテールを作りなさい、と」
「この1年坊で3本。あの巫女で・・・・まあ、いっか、どうにかするでしょ。―――とりあえず、瀞、あたしたちで3本作らないと駄目ね」
「あ、意外とノリいいんですね」
「こういうのはさっさとして、さっさと帰りたいの」

 綾香がどこからか取り出したヘアゴムで自身の髪を結って、さっそく1本作り出す。

「あとは、あんたね」
「? うん」

 瀞が素直に地面に座り、綾香に頭を預けた。

「では、わたしは記念撮影用に、この場違い装束娘を剥いて着替えさせます」
「剥くってなに―――ぎゃあああああああああ!?!?!?」
「前はもっと厭世的だったんだけど、楽しそうだね」
「・・・・あれを見ても楽しそうに思えるなんて、やっぱ瀞さん大物じゃないかしら」

 何も準備することのない朝霞が平坦な声を出す。

「くっそ~、何この素直な髪質、ムカつく。カツラなんじゃないの」
「綾香怖いよ!? あと、これ自慢の地毛だからね!?」
「さりげなく自慢か!」
「こっちの髪もいいですよ!? 高級な香油を使ってますね!」
「引っ張らない―――って、いつのまにか着替えている!? 何なんですか、この人」
「わたしはこういう人です」
「ええ、そうね」

 わいわいと準備をする女性陣。
 それを虚空から眺めながら管理人から一言。

『―――あれ? 7本しかねえぜ?』

「誰だ!?」
『どぅわ!? 前は光線だったが、今度は雷か!?』
『残念だな。浄化能力がない限り、くろは消えん』
『その通り! さあ、愛の電撃を――アバババババ!!!!!』
『く、この体を張ったお約束の骸骨を映像で見せられないのは、悔しいっ』

 何も見えない空間に、勘で的確に攻撃する綾香の肩を瀞が叩く。

「何? 今忙しいんだけど?」
「そうじゃなく、確かに一本足りないよ?」
「え?」

 綾香は雷撃を止め、周囲を見渡した。

「ぅう、汚されました・・・・」

 泣き崩れる巫女(1)

「堪能しました」

 満足げに頷くポンコツお嬢様(2)

「それくらいにしとかないと、痛いしっぺ返し食らうんじゃないかしら?」

 呆れてため息をつく働くお嬢様(1)

「ね?」

 小首を傾げる天然幼妻(2)

「足りないわ、ねっ」

 『俺への愛が』と言ってきた謎物体に攻撃を再開する雷撃少女(1)。

『そこの成績不振娘が数え間違えると思って招待しましたー』

「「「「「え?」」」」」

「・・・・あなたたちは誰? ってか、ここはどこ?」

 この世界に突然放り込まれてうろたえる少女(1)。

 計8本。

『はい、クリアー』
『貴様、何故クリアさせた! 俺の楽しみが!?』
『いや、これ以上拘束するとあいつら怖いし。ほら、すごいいい笑顔してるし!?』
『ん? ヒ、ヒィ!? 特に巫女と幼妻が発光している!?』

「「さようなら」」

『『アアーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』

「だからここどこやったん!?」

 管理人二名の悲鳴と、正体不明の少女の言葉が響く中、この空間は終わりを告げた。


 少女の正体は誰なのか、こうご期待を






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